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落語の話

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露の新治「たちぎれ」/言葉と仕草と嗅覚

露の新治「たちぎれ」/言葉と仕草と嗅覚

これは、別ブログに書いたエントリを転載したものである。

2016年10月30日日曜日。丹波橋の呉竹文化センターへ「ももやま亭 復活祭! 秋の陣」を聞きに出かけた。

お目当ては露の新治さん、というか、いただいた案内メールに、今年は秋の独演会を休み、この会を独演会と位置付けて取り組むとの意気込みが書いてあった。これは期待しないわけにはいかない。
演目は以下のとおり。

新幸……鉄砲勇助
新治……千

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やりきれない寂しさを承知した上で笑う現象

亡くなられた柳家小三治師匠、マクラのみの会を収録した音源も出されているのだが、その中で「駐車場物語」というものがある。自宅のガレージにホームレスが住み着いてしまってさあ大変、という話で、まあ、楽しい。楽しいのだが、終わり方には、少しやりきれない寂しさが漂う。

終わり方としてはハッピーエンドなのである。でも、もちろんこれは勝手な推測なのだが、その終わりの前の小三治師匠の口調に寂しさが滲んでいるよう

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元旦から落語を聞きに出かけたり、地震が起きたり

元旦から落語を聞きに出かけたり、地震が起きたり

元旦。行こうか寝ていようか毛布にくるまりぐだぐだ迷ったのちに、えいやと起き出して動楽亭昼席へ



動楽亭昼席

弥壱…犬の目

ざこば…ざっこばらん

米紫…大安売り

出丸…不動坊

中入

一輝…大神楽

千朝…蔵丁稚



最近すっかり腰が重くなってしまっており、なんと8月以来の生の落語だ。今年は流石にもっと出かけたい。

ざこばさんはフリートーク。それもかなりゆるい。記憶の中にあるざ

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笑福亭たまさんがホームゲームで危険球を投げる

足の怪我もよくなったので、8月31日に久しぶりに落語を聞きに出かけた。高津宮は高津の富亭でこの8月に14日間開催された高津落語研究会特別講演の最終日、千秋楽という奴だ。

野球やサッカーなどでホームとかアウェイとか言うが、完全なるホームだった。とはいえこのホームと言うのはこの高津の富亭で毎月「高津落語研究会」として勉強会を開催している4人(敬称略で桂南天、笑福亭たま、桂ひろば、桂雀五郎)が作り上げ

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米團治さんの飛び道具と米二さんのビート(落語の話)

今日は動楽亭の昼席に行ってきた。番組は、敬称略で

鯛蔵…阿弥陀池

しん吉…若旦那とわいらとエクスプレス

雀喜…うなぎや

出丸…皿屋敷

中入

米團治…片棒

米二…青菜

米團治さんの「片棒」がとんでもない飛び道具で。なんと、登場する親旦那が米朝師匠なんだよ!(噺の中では「中川屋清兵衛」って、やっぱり米朝師匠じゃないすか!)

で、その米朝師匠が三人の息子を呼びつけてもし自分が死んだらど

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「松喬十六夜」の「寄合酒」(落語の話)

DVDBOX「松喬十六夜」を少し前に購入した。癌であることを公表され闘病生活に入ってからの高座が収録されている。期間的には2012年の10月から2013年の4月まで。闘病生活に入られたのが2011年の12月、亡くなられたのが2013年の7月30日。

楽しみにはしていたのだが、少々追悼めいた気持ちがあったことは否定しない。見ていてしみじみしちゃおうというか。

さっそく見始めたのだが、感傷に浸る余

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真夏の「福禄寿」と「緊張の緩和」(落語の話)

今日は道頓堀ZAZAに行ってきた。柳家さん喬ひとり会。会の開演まで時間を潰そうとあたりを歩いたら、キャッチに声をかけられてウザったいことこの上なかった。行く度にそんな感じだから、道頓堀ってあまり好きじゃないんよ。

会の方は開口一番で小鯛さんが「平林」。おそらく客席にはすれっからしの落語ファンも多いであろう中、話が進むにしたがってきっちり盛り上げてバトンタッチ。

さん喬さん、最初の一席目は「千両

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客席の雰囲気(落語の話)

今日は久しぶりに繁昌亭の昼席へ行ってきた。今週は二乗さんの繁昌亭輝き賞受賞記念ウィーク。二乗さんが出演するのはもちろんだが、毎日口上がある上に、米二さんが毎日トリをとられる。私が一番好きな落語家さんが米二さんであるので、前々からすごく楽しみにしていた。

本当は明日も行きたかったのだけれど、チケットが売り切れていたのよね。

私が落語に関心を持つようになってから米二さんが一週間トリをとられるのは初

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歌う落語家さんたち(落語の話)

今日は笑福亭仁智さんの勉強会「笑いのタニマチ」へ行ってきた。仁智さんみたいなベテランが、勉強会でジャンジャンネタおろししてるんだから、すごい。

常連さんが多いんだろう、時に観客から声が上がり、仁智さんもそれに応えるという、完全なホームの雰囲気。仁智さんが高座で長々と歌っているだけで(なに歌っとんねん!)(ていうかいつまで歌っとんねん!)という笑いの波が広がっていく。

そういえば、上方の創作落語

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帯屋久七について思う事(落語の話)

今日はiPhoneで落語を聞きながら残業していた。松喬さんの「帯久」が印象深い。DVDBOXを音だけ録音してitunesに放り込んであるんだけど、この「帯久」、生で見てるんだよなぁ、私。

帯屋久七と言えば、和泉屋与兵衛に何度も金を借り、返すために持参した百両を与兵衛の隙を見て持ち帰り、更に火事で焼け出されて病に倒れ、10年かかってようやく床離れして金を借りに来た和泉屋与兵衛に金を貸すどころか罵っ

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桂雀太さん(落語の話)

桂雀太さんの落語を聞いてきた。雀三郎師匠の三番弟子。

この人の独特の間というか、キャラ設定と言うか、空気感と言うか、そういったものが好み。

まだ「若手」に分類される落語家さんなのだけれど、間をしっかりとって、自分のテンポで話してらっしゃる感じがして。逆に自分のテンポでやっていない感じがしてしまう人はどうも苦手である。師匠から教えてもらった通りにやっているのだろうなと言う人でも面白く感じる人と言

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ディスレクシア

とある方が学習障害(ディスレクシアかな?)なのではないかと思える様な文章を読む機会があり、その方の現在の姿を思い浮かべ、少し心動かされるなどしている。

下手にもったいつけるよりもちゃんと書いた方がいいか。えーとね、今日行った上方落語勉強会のプログラムに桂二葉さんの文章が載っていたの。

で、そこに「義務教育が始まった6歳の頃から文字が苦手でさけまくり、授業で先生に本読みを当てられても無言でにやに

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落語会の雰囲気(落語の話)

今日は大美落語会に行ってきた。第二十回記念公演と銘打たれているが、スペシャルゲストを招くというよりも信頼のおける腕っこきを集めたような番組。ネームバリューだったら次回出演予定と告知されている南光さんの方が上だもんね。今日の出演者は敬称略で二葉、文三、米二、竹林、文太という面々。キャリアの浅い二葉さんはともかくとして、自分の会を積極的にやっている実力派がズラリ。

大美落語会って好きな会なのだけれど

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