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「犬、走る -Dog Race-」(映画)

あまりメジャーな映画ではないけれど、名作だと思っているんです。

監督は、崔洋一
主人公が、岸谷五朗
その使いっ走り兼情報屋に、大杉連
主人公の部下が、香川照之
ヤクザの組長に、遠藤憲一

1998年の作品ですが、このメンツはぐっと来ないですか?

舞台は新宿歌舞伎町。
90年代末ったら、今と違う意味できわめて柄が悪かった歌舞伎町。
おれが中学生の頃は、ガキが訪れたら必ず「カツアゲ」(恐喝ね)に遭うと噂されてたなあ。

そこで、主人公の岸谷五朗はヤクザにガサ入れ情報をリークして『情報料』をせしめて。
さらに、警邏中に風俗店のお嬢様用待機室で賭け花札をして。
挙句に、密売人から押収した覚醒剤を自分で使ってしまうほどの悪徳刑事。
その部下の香川照之は堅物で、風俗店のボーイさんから出されたコーヒーを飲むことを拒否するくらい、堅物。

まー、当時の歌舞伎町ガラが悪さったら!
チーマー(当時の若者ストリートギャング)、
違法テレカを売る外国人(当時はまだ公衆電話用に『偽造テレフォンカード』が流通していたのです)、
中東系の密売人(当時、アレげなモノを路上で販売してたらしい)、
外国人の立ちんぼ(東欧、ロシア系から南米系や東南アジア系までそんな女性はたくさんいました...)、
ぼったくりのスナック(これは、まだあるか)、
密航中国人や違法カジノ。

そんな中、主人公たちは街を走り回るわけですが、BGMがまたすごい!
マイナーリーグ、山嵐、小島っても知らん方にはわけわからんでしょうが、これらはすべてバンド名。
ハードコア系のバンドなのですが、彼らがいなければホルモンもMAN Withも関連バンドもオーバーグラウンドに現れていなかったんじゃないかしら。
そのサウンドと、当時の荒々しい歌舞伎町の風景がとてもマッチしていて。
それが、また素晴らしいんですよ。

ここからは、どこかで見聴きした情報なのでソースはアレですが。
この映画の始まりは、松田優作や駆け出しの頃の崔監督や、当時の映画人たちが新宿ゴールデン街で飲みながら
「こんな映画、作りたいよね」
ってところから始まって、脚本も作成して。

「ブラック・レイン」の撮影が終わったらクランクインする予定だったとか。
ちなみに、その際は主人公の悪徳刑事に松田優作、使いっ走り兼情報屋にはビートたけしという配役まで決まっていた、らしいです。
でも「ブラック・レイン」撮影後の松田優作についてはご存じの通りで、撮影することはできなかったと。

崔監督がこの企画をリブートして、主人公を演じた岸谷五朗は元・三鷹のヤンキーだったらしく。
それでいて松田優作に憧れていて、松田優作が亡くなられた時には入院していた病院(三鷹にある病院だったのです)を外から眺めて『優作さんみたいな役者になる』と決意したとかなんとか。

つまりは、因縁の作品なんですが、そんな暗さは微塵も感じない。
カラっと明るいピカレスクロマンになってます。

なのに、サブスクではU-NEXTぐらいでしか配信されてないんだなあ。
アマプラかネトフリ、無料配信してくれー。


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