見出し画像

売ったらんビジネス

鉄業界ならではなのか、この業界にいるとたまに売り手の方が強かった昔話を聞くことがある。「信用ないもんには簡単には売ったらん」とか「品物を分けてやらん」といったような話であり、先代も昔そんな態度でお客に売らなかったという伝説話のような昔話を時々耳にする。

一つには掛け売りがB to B ビジネスの主流であるから、与信の問題上そういった態度にでることがある。その与信の問題については、最近はクレジットカード取引など、自社外部にリスクを負わせることができるようになったから解決可能で、今、売ったらんビジネスが存在したとするとどんな理由があるのだろうか不思議に思った。
しかし、よく考えてみれば、与信の問題以外にも、売ったらんビジネスが存在する理由は数多く存在することを思い出した。

まずは、物が不足して貴重な物を売る時は、物には限りがあるので、いつも買ってくれるお客を優先するのは当然のことである。

また人気のある敷居の高いラーメン店など人気店おいては特に失礼なお客はお断りされることがあるだろう。

さらに、わざと限定のお客に販売することによって、より高級なイメージをもたせるイメージ販売戦略もあるだろう。ブランド品なんかはそういった特徴があったりする。

もう一つはいくらお金を払ってくれても単純に嫌いな客には売りたくないという好き嫌いによる理由もあったりするのかもしれない。

デフレが長く続いた近年においては、お金の価値が高い時代が続き、横柄な売り手は昔ほどあまりみかけなくなったように見えるが、ブランド店など失礼のないように丁重にお断りする「売ったらんビジネス」のような類はずっといつの時代でもあり続けている。

商工会議所のあるOBの方の話で、たまたま自分の地元の町をよく知っており、そこが保守的で、売ったらんビジネスが多く、そこで商売が成功すれば世界のどこでも商売が成功すると半分冗談のようなことを言っておられ、自分の町だけにおもしろおかしく聞き驚いた。自分は名古屋の端っこのその町の生まれで、大地主の人が支配している町であり特徴をよく知っているのでまんざら冗談ばかりでもないとも思った。

それらの与信の問題以外の理由に共通するのは、お金が第一ではないということであり、インフレになりつつある現代の世の中において、また「売ったらんビジネス」が増えてくるのかもしれないと思った。

「売ったらんビジネス」の一番確信的な理由においては、売るからには責任をもって販売アフタフォローするというプライドがそこにはあり、簡単にお客にはへりくだらず値下げしないといったことであるのかもしれないと思った。そういったプライドを持つには日頃の鍛錬や努力から競争力が必要であり、近年のインフレ禍で値下げをしていては生きてはいけない時代では、ある意味求められる姿勢の一つでもあるのかもしれないと思った。

昔の時代においては、それが競争力から来るというより、物の少ない時代故に、商品の仕入れにも苦労し商売を始めることが難しく、そういった姿勢やプライドを生み、今の物があふれた時代においてはそういったプライドが生まれにくくなったのではないかとも推測する。悪く言えば、今の時代はプライドが小さくなり商売が軽くなったと言えるのかもしれないと自分を戒める。

いいことか悪いことなのか、経済が成長するにはインフレは必要で、昔も悪徳な商売人はいたであろうが、何か今よりは拝金主義ではなかったと想像する昔の商売のほうが人情、味、醍醐味があってよかったのではないかと自分もそんな時代の商売の楽しさを知ってみたいと思ったのであった。

#売ったらんビジネス #与信#クレジットカード#インフレ#拝金主義#大地主#人情


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?