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私が銀行を辞めた理由


銀行口座決済を簡単にするPay by BANKを開発中のBANKEYの阪本です。8月は少し決済体験や制度から離れてBANKEYという会社や私自身について書きたいと思います。今回は私の経歴について。

序章:赤か青か、青か赤か

2007年4月。世界金融危機(リーマンショックともいう)の足音に耳を澄ませることもなく大学4年生の私は就職活動をしていました。
当時の就活は4月1日解禁で、大学受験予備校で数学の講師のアルバイトをしていた私は、春期講習(高校の長期休みは書き入れ時)のシフトを夜コマだけにしてもらい、また講義中は年齢の近い大学生チューターに携帯電話を託して(だって、毎日面接のアポイントが電話で調整されるので)面接、バイトのサイクルを回しておりました。
いくつかの業界を見ながらも、どれも面白そうで決めきれない私。その中で銀行は①就活の結論が出るのが早い②金融が関係しない業界はないという2つの理由で魅力的だなと思っていました。
振り返ると、緑はエントリーもしていないのにリクルーターから有無を言わさず呼び出され、アルバイトのスケジュールを優先しご縁がなかったことに。
何となく赤と青(と他の業界)での選考が進んでいきました。 正直、銀行としての違いって良く分からない、財閥系(赤)か非財閥系(青)か、業態別採用(銀行、信託、証券で別々に採用|赤)か一括採用(青)かくらいの違いしかないよねという解像度でした。しかし、ある面接官と次のような会話をしたことを今でも鮮明に覚えています。

面接官「君は何で銀行業界で働きたいの?」
阪本「正直分からないのですが、分からないので明日急に会社が潰れる心配が少ないところが良いと思っています。」
面接官「なるほどね、そういう軸も大事だけど、僕たちは潰れないんじゃなくて潰れちゃいけない、大事な預金を預かっていて、産業を支える貸出をしていて僕たちを要らないという人もいるけど、僕たちが潰れてしまうと社会に大きな迷惑をかけてしまう。だから絶対に銀行が潰れるようなことをしてはいけないし、そうならないように強烈な緊張感を持ってるということだけは知っておいた方が良いよ!」

文字に起こすと当たり前のことではあるのですが、少なくとも自分はこの言葉にハッとして銀行で働きたいと強く思うきっかけになりました。

その後、ありがたいことに2つの銀行から内々定を頂戴しまして(一応、私はどちらの銀行にも第一志望ですと言い切ってはいません!念の為)、どちらかをお断りするという意思決定をせねばならなくなりました。決め手に欠く私、仕方がないので当時片想いしていた女性にメールすることにしました。

「唐突に申し訳ないんやけど、赤色か青色どっちが好き?」

就活の話なども一切しておらず、時折雑談メールをするくらいの関係性で冷静に振り返ると変な汗が出てきそうなメールを送ってしまった訳ですが、彼女からは、

「意味不明ですが、一応回答すると赤」

と絵文字も何もないご返信。すぐに青にお断りのお電話を申し上げ(当日の夜に旧大手町の本社ビルにお伺いし人事担当者の名刺をお返しし)、赤い銀行に就職することになったのでした。
質問する相手が違ったら、質問が「赤色か青色」ではなく「青色か赤色」という順番だったら等々考えるところではありますが…なお、上記の面接官との会話は赤色でした。というわけで序章終わり。

銀行員時代

お客さま、上司を含めた仲間に恵まれた銀行員人生でした。2008年4月に入行(入社)し都内の営業店で預金事務からみっちり叩き込まれ、金融危機の中で金融円滑化に対応し、初めての異動先の営業本部では、
「仕事は一期一会であり打席数は限られている、全力でバットを振れるように準備せよ」
「世界を支える産業を担うお会社を担当できるというのはMBAに行くよりも価値がある」
という当時の上司のお言葉を胸に造船、原発、発電所について無茶苦茶勉強しました(多分人生で一番真面目に勉強した時期)。
そして、公募で慶應義塾大学ビジネススクールに派遣して頂き、これまた一生もののつながりを沢山頂戴し、修了後は銀行に戻って経営企画(この時の上司も何故か営業本部時代と同じ…)で走り回っておりました。

銀行を辞めた理由

そんな恵まれた仕事の環境を捨てて何でスタートアップやってるの?と良く聞かれます。理由は割とシンプルで銀行が解決したい社会課題と、自分が1回しかない人生を賭して解決したいと思う課題とのズレが大きくなってきたことに尽きます。
2050年にカーボンニュートラルを実現する。この社会課題について異を唱えるつもりはありません。でも銀行が出来ることは実現に向けた産業を育成する(育成すると言うのも言い過ぎで産業を応援する)というものであるべきだと個人として思ってしまったのと、2050年の課題解決は自分でなくても良い、まだまだカラダもアタマも動く今のうちに解決できる課題を解決したいという思いで銀行を飛び出ることにしました。

解決したい社会課題

じゃあ一体何の課題を解決するの?という点に触れて本稿を閉じようと思います。銀行を辞めてまで解決を目指したい社会課題は金融包摂(フィナンシャルインクルージョン)です。金融包摂というと銀行口座すら持てない人たちを想定しがちですが、阪本が解決したいと考えているのはもう少し広く、「Goodな金融サービスへのアクセスを自由にする」です。

Goodなサービスとはサービスを受ける側の期待値を上回るサービスだと思っています。その定義に照らした時にGoodな金融サービスを受けたことってありますか?
特に銀行関連の金融サービスって何となく、仕方なくが多くないですか?

前職では日本に働きに来た外国人労働者の方々に向けたバンキングサービスの提供に取り組みました。現在、BANKEYでは銀行口座に預けている自分のお金の出し入れをもっとスムーズにすることで、いろいろな金融サービスの開発を(Fintechと呼ばれる)みんなで進めて行けばGoodな金融サービスの数が増えて、アクセスが自由になるはず!という仮説の証明に取り組んでいます。

道のりは平坦ではありませんが、銀行、Fintech企業を巻き込みながら金融包摂の実現に向けて一緒に進んでいく仲間を随時募集中です!ではまた。



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