見出し画像

継続稟議の書き方|1年目のあなたへ

法人の担当になってまず時間を奪われるのは、手貸・商手や当座貸越枠の継続稟議なのではないかと思います。

少しでも省力化できるように、流れとポイントを整理しておきます。

動画解説もあった方がいいなと思いましたので、近いうちにアップデートします。ご期待くださいね。

なお、同時にやることが多い債務者評価(格付)についてはこちらに整理していますので、併せてご覧ください。

<準備中>

全体の流れ

0.同条件の継続でいいか折衝する
1.業績をチェックする
2.論旨を固める
3.数値を固める
4.別表資料を作る
5.所見欄を作る

0.同条件の継続でいいか折衝する

意外と多いのが、稟議決裁になってから取引先に連絡するケース。相手にはそのまま飲んでもらうしかありませんが、思わぬ不満のタネとなることも。

特に注意した方がいい場合
・金利に不満を感じているかもしれない
・毎年、減額または増額してきている
・前期に他の与信残高が増えた
・前期に著しく業績が悪化した
・前期に資金使途違反が見つかった(検査などで)

時間がない中なので、こうしたことで手戻りが発生するのは避けたいです。あらかじめチェックしておきましょう。

逆に、自行としては同条件継続ではなく、継続時に金利引き上げの折衝などが必要な場合もあります。附帯取引状況や過去の折衝経緯は把握しておきましょう。

1.業績をチェックする

業績悪化先については、2点チェックする必要があります。

①所要運転資金が減少していないか
②要収益返済借入の償還期間が長期化していないか

所要運転資金が減少している場合は、同額で継続するロジックが難しくなります。所要~が減っているのだから要資が減っているはず。

要収益返済借入の償還期間は、以下の式で求められる年数のことです(各定義は銀行による)。

(有利子負債 ― 所要運転資金)/CF

つまり、所要運転資金を飛び出た借入部分を、CFで回収するには何年かかるか、という指標です。これが長期化していると、債務返済能力が疑われます。

2.論旨を固める

業績が問題ない場合も、問題ある場合も、それを踏まえてどう稟議を作成するかという論旨を固めましょう。

例)
手形貸付の同額同条件継続。当社の有利子負債残高は所要運転資金から100M超過。しかしCF40Mあるので要収益返済期間は2.5年。前回継続時は4.5年だったので改善している。業績も横ばいで推移していて大きな懸念材料はないので、今期も業績維持できるだろう。また、入出金の8割は自行で扱っているので最悪の場合、債券保全上は可能だし、振込手数料込みだと採算も十分。メイン行でもあるので継続して問題なし。

こういった形でざっくり文字に落としてみて、不足している部分や、検証が必要な部分に肉付けしていきます。

チェックポイント
✓ 与信条件などが変わる点はないか?
✓ 有利子負債が所要運転資金の範囲内に収まっているか?
✓ 所要運転資金から飛び出た有利子負債に対して保全はどうか?
✓ 〃CF弁済で何年かかるか?
✓ 前回の継続時より自行が有利(残高減または保全増)になっているか?
✓ 附帯取引などにより採算が優良か?
✓ 他行競合上など支援の妥当性があるか?

3.数値を固める

論旨が固まったら、具体的な数値を入れていきます。

必要な資料と注意すべき数値
✓ 運転資金算定表:不良在庫などは減算しましょう
✓ 業績計画:事業セグメント別の計画か、業種に応じたKPIなど
✓ 保全状況:担保価格の増減に注意
✓ 金融機関借入一覧:他行が引いていないかチェック
✓ 試算表(必要に応じて):12/nを掛け算して横這い業績になるか
✓ 資金繰り表(必要に応じて):昨年実績と比較して違和感ないか

システム入力でほとんど自動に入ると思いますが、今後の業績計画については、顧客に対するヒアリングなどが必要ですのであらかじめ準備しておきましょう。

尚、取引先からのヒアリングだと、バラ色の計画だったり、曖昧であることがほとんどなので、ここにはそのまま反映させてはいけません。

また、受注残などは数年分の同時期のものと売上が比例しているかなどを並べて初めて意味がありますので注意しましょう。

4.別表資料を作る

ほとんどの場合、Excelなどで別表を作成する必要があるでしょう。

前任が使っていた使いにくいファイルだとしても、基本的には同じものを使います(決裁者が見にくいため)。

この別表資料がなかなか曲者で、稟議の効率を著しく下げていると言っても過言ではないでしょう。

これをいかに効率的に作るかですが、まず、前回の別表を印刷して、修正点を朱入れし、入力は後輩にやってもらう、といった形が一番速かったように感じます。

考えながらExcelのセルに入力していくと、作業スピードは半分以下になります。

5.所見欄を作る

所見欄は2.の論旨に肉付けをして作ります。特に問題がなければそのままでも構いません。

肉付けのポイント
✓ 業歴や業種などの属性情報
✓ 自行との関係性
✓ 今期業績を判断した要因
✓ 昨年度と比較した数値の増減と要因
✓ 体言止めにする(←風習?)

あくまで一例ですが、こんな形でしょうか。

例)
業歴34年、産業用機械卸。売上の7割を占める〇〇織機向けが堅調で業績に特段の懸念なし。本件は運転資金として支援している手形貸付200Mに付き同額同条件での継続申し出があったもの。前期は新規に受託した△△紡織向けにより回収サイト2.01ヶ月と長期化(前期比+0.12)しているものの正常な範囲内。要収益返済借入100M(△75)に対しCF40M(+3)と償還期間2.5年(△1.5)であり、約返進捗により収束。アンカバー250Mながら当行メイン先であり入出金の8割は当行内。基準金利対比▲0.50%ではあるが内為勘案すれば採算優良先。引き続き同条件にて支援致したい。

細かいですが、数値が減ってうれしいときは△、悲しい時は▲を使います。

▼こちらが収録されているマガジンはこちら▼

https://note.com/bankaz/m/me18f9f580400

いつも最後までお読みいただきありがとうございます。よかったらスキしていってください!

いただいたサポートで、悩める若手銀行員が救われます!