建築家は「詐欺バース」から自衛せよ
こんにちは、建築とバーチャル世界の健全な発展を願う番匠カンナです。
最近、メタバースバブルによりバーチャル世界と建築界が非常に良くない出会いをしてしまう危険を察知したので、その話をします。
いまから書く内容は、
リテラシーのない建築界を利用しようとする怪しいメタバースプロジェクトから、特に狙われがちな建築家はしっかり自衛してほしい(して!)
という警鐘です。
怪しい話
最近たまたま目にしたのが、ボドゲのカタンみたいな土地を売るメタバースプロジェクトが、著名建築家にメタバース土地()に建てる建築物の設計依頼をして回っているというもの。要求を見ると立派に延床面積数万平米の建物で、各室の要求面積まで出している。
技術的なあれやこれやはわからなくても大丈夫、こっちのスタッフに任せて!あ、ただちょっと急ぎなんだ!
ほう…興味深し。
ところで、以前から私は、建築家はこういったメタバース系の仕事の設計料をどう考えているのか気になっていた。一般的な工事費からの算出ができないから。
聞いてみたら、設計料は現実に建てないとはいえ、驚くほど安かった。ただ、と依頼者が言うのは、今後収益が入ってくる仕組みになっているという話だった。
興味深すぎるでしょ…。
高確率で詐欺ですね、サギバースです。
詐欺バースの回避方法
まずは怪しい話の回避方法について。
いまメタバースというバズワードでひと括りにされている、VR機器なりブラウザなりで体験できるリアルタイム・ソーシャル・MMO・3次元空間(括られ過ぎててなんと言えばいいかわからない)には、雑に言うと、VR技術由来のプロジェクトとブロックチェーン/Web3由来のプロジェクトの2つがある。
事実なので言ってしまうと、危険なプロジェクトは後者の中に潜んでいることが多い。
ただ、デジタル世界の潮流に強い関心を持っていない限り、建築家がそのプロジェクトが何由来か見分けることは難しい。というより、それ以前にVRもWeb3もメタバースもなんもわからんが大半だと思う。
そこで、判断基準としてこのあたりが有効かな?というのが以下です。
プロジェクトのホワイトペーパーはあるがプロダクトがない、あるいは簡単な技術デモレベルのものしかない
アクティブユーザーがいない、あるいは極端に少ない
にもかかわらずプロダクト内の土地を売っている
公式が買い煽りをしている
近辺に技術者やクリエイターの姿が見えず、トレーダーが目立つ
まずは単純に、この辺りを調査して、該当しそうなら見送るという判断をしてほしい。今の時代、それっぽい動画やそれっぽいWebサイトの体裁はいとも簡単につくれてしまうので、ちゃんと内容を見ること。
仕事を受けると何が問題になるか
詐欺バースの仕事を受けてしまうといくつかの傷を負う可能性があります。
ブランドイメージの低下
建築家の名前と作品イメージが、怪しいビジネスのプロモーション、土地価格吊り上げに使われます。また、詐欺に加担してしまったという汚名だけでなく、XRやゲームやWeb周りの知識がないと、建築物自体が意図したものにならない可能性が高いです。リアルのアナロジーで言えば、施工会社がどこかも知らず監理もできないが、できあがった建築物が建築家の名前で世に出回る、と言えばわかると思います。設計担当者が落胆する
竣工した建物が、その世界に人がいないため誰にも使われずに終わるという、メタバースならではの事態が起こる可能性があります。現実でも建築プロジェクトの頓挫は珍しくないけど、どうあがいても人のいる現実では、建ったものが使われないことは極めて珍しい。バーチャルな建築という未来感にワクワクして設計担当した人は、何のためにつくったのかときっと落胆する。悲しみが生産される。設計料が仮想通貨で支払われた場合、会計処理が複雑化する
後で上がってくる収益というのは、(想像だけど)土地NFTのOpenSea等での二次取引の際にスマートコントラクトによって一部収益が原作者に入ってくることを言っているのかもしれない(しらんけど)。ウォレットを持っている設計事務所なんてあるのかな? 下手をすると不必要に税金がかかるかもしれないし、経理担当が頭を抱える。
そして何より私が一番イヤなのは、
建築業界全体にバーチャル懐疑論が一気に広まる
建築とバーチャル世界の関係はまだ始まっていもいないので、のっけから遺恨の残るような事故が起きると、本来あり得たかも知れない健全な界隈の発展まで阻害されてしまう。
というわけで、詐欺師以外誰の得にもならないので、そういう話が来たら注意してほしい。
もっと深い話はまた今度
詐欺バース回避自体は、注意していればそんなに難しいことじゃない。(注意していれば)
なので、今回書いた話は、全然深い話ではない。
一方で、ほんとうに怖いのは、
詐欺かどうかは関係なく、リテラシーのない建築界とバーチャル世界が、本質的ではない結びつき方をして、そのことを互いに認知できず、たいした発展をしないで終わること、です。
今回の話からは逸脱してしまうので、また日を改めて書きますね。
ではでは!
xRと出会った建築をもっともっと面白くしたい! いっぱい活動したいので、どんどんサポートお願いします〜