見出し画像

流刑囚の映画千夜一夜物語~第14回『バーフバリ 伝説誕生』(’15印)

画像1

私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。第14回は『バーフバリ 伝説誕生』(’15印)。

本作の5点満点評価は…

コンセプト…2.5点
カメラワーク…2点
ビジュアル…2点
脚本…2.5点

総合評価…2.3点


 所謂「貴種流離譚」と呼ばれる物語である。何らかの理由で王家を追放された王子が村人として成長しやがて英雄として復活する。

 本作の物語上におけるキーは「シヴァ神の導き」だろう。一般的に近代における「物語」は登場人物が自らの選択によって情強を突破し成長していく様子を描くものである。しかし本作はそうした近代的物語の構造を採らずあくまでも「シヴァ神の導き」によってあるべき方向へと進んでいく。

 こうした一貫した法則によって貫かれる本作であるが、それを象徴するのがヒロインの変化である。元々「戦士」として登場したヒロインは「導き」によって主人公と出会い、それによって運命を受け入れ「女の顔」になる。筆者がこのシーンを見て思ったのは「これを日本で公開してよくフェミニストたちが怒らなかったな」ということだ。これはフェミニストにとっては屈辱そのものと言って良いような描写であるにも関わらず、日本ではほとんどそこへの批判が生じなかった。これはある種特筆すべきことであろうと思う。

 そして肝心の映画としての出来であるが、正直そこまで面白いとも思わなかった。またなぜこの映画が日本のみならず世界で大ヒットしたのかも正直良くわからない。所謂「インド映画」の形式を取りつつそれを予算など大規模に展開したというのが新しかったのだろうか。

 筆者があまり面白いとも思わなかった理由はひとえにカメラワークである。2時間以上に渡る上映時間の中で「これ」といったショットがほとんどなく退屈ですらあった。なんというか如何にも「ソフト使って組みました」というアングルの連続でありアニメっぽくもあり、そこに興味を持つことが出来なかった。無論CGを使うこと自体は悪いわけでもなく一部の映画人にありがちな「CG=悪」という思考は理解できないのであるが、本作の場合「画」がほとんど「どこかで見たことあるような感じ」であり新鮮さや驚き、驚異の念を持つことが出来ないのだ。

 またアクションシーンに関してもこれみよがしがストップモーション演出と極端なアップショットの連発で正直白けてしまったというのは否めない。

 ストーリー的にも前述の通りよくある「貴種流離譚」でしかなく、正直な話ここで1000文字の感想を書くこと自体にもやや困難を感じる、筆者にとってはそういう作品だ。

 そんな本作であるがあえて見所を言うならば目を見開いて「殺せ!生け捕りにしろ!ハゲタカに食わせろ!」と叫ぶオバサンの顔だろうか。これは迫力があって怖かった。

 本作は続編を前提とした作品であり、興味を持った人は続編も見てみるとよいだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?