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流刑囚の映画千夜一夜物語~第26回『交渉人』(’98米)

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 私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。第26回は『交渉人』(’98米)。


本作の5点満点評価は…

コンセプト…2点
カメラワーク…2.5点
ビジュアル…2.5点
脚本…2点

総合評価…2.3点

 人質事件などで犯人との交渉に当たるネゴシエーターが自分自身に着せられた濡れ衣を晴らすためにビルに立てこもり人質事件を引き起こす、というお話。

 本作が公開されたのは98年だがその前年にも『ネゴシエーター』という邦題のアメリカ映画が公開されているようだ。こちらは主演エディ・マーフィでコメディ調らしい。

 90年代の映画というと個人的に気になるのはSEの使い方だ。例えば本作の場合、銃声など派手なSEが挿入されるとそれを起点としてBGMが鳴り始める、という演出が多用されるのであるがこれがなんとも「90年代っぽい」。2020年代から見るとややベタであるが同時にやや懐かしさも感じられる。

 また本作のもう一つの懐かしポイントは昼間のシーンでビルの窓から見える「書き割り」の風景だ。現代であればこうしたシーンはCGを用いるかもしくはそのまま実景を映してしまうのであろうが、この映画が作られた90年代後半は「書き割り」が普通に使われた最末期の時代なのではないかと思われる。ちなみにこの「書き割り」はCG嫌いで知られるクリストファー・ノーランが『ダンケルク』にて用いることで最近になって再び広く認知されるようになったらしい。

 肝心の本筋に関してであるが、なんとなく見ていて退屈しない出来ではあると思うのだが、いかんせん人物名の固有名詞がたくさん出てくるので誰が誰なのか非常に分かりづらい。特に事件の真犯人の仲間に関しては終盤までその顔と名前が全く一致しなかったのだが、自分以外にこの映画を見た人はその辺を理解できていたのだろうか?また演出として本当にこれで良かったのかもやや疑問である。

 また真犯人を暴くトリックに関してもほぼすべて人物の証言と音声記録に頼っているが、やはりこれも首を傾げざるを得ない部分だ。そもそも映画において何よりも重要なのは視覚情報であり、本作はその点においてかなり弱いのではないだろうか。

 これは脚本というよりもそもそも題材選定に問題があったということだろう。前編を通して画や映像、そしてアクションの描写が弱すぎてラジオドラマでも成立してしまいそうである。映画向きではないお話だった、ということだろうか。


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