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ベトナム考察 [犬食文化]

ベトナムに来て驚いたことの一つに、犬食文化がある。

韓国や中国の一部地域でこの風習が残っていることは知っていたけど、ベトナムでもそうなのか、と。でも、考えてみれば中国とは陸続きだし、文化的にも多大な影響を受けているので、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。

それでも、近年は「近代国家化」のために、政府主導で犬食文化を無くそうという動きがあるらしく、以前より犬を食べさせる店は減っているらしい。それでも完全にこの文化が無くならないのは、この地に生きる人々がそれを求めていることに他ならない。

例えば、「納豆は異臭極まりなく見た目も醜悪だか"先進国"である日本にはそぐわないので、食べることを禁止する」と言われて、それに従う人が何人いるだろうか。

食文化というものは、結局は、民衆の欲求が具現化されたものなのだから、その欲求を後付けの、いかにも「文明的然な」理由で完全に押さえ込もうなんて無理な話なのだ。

僕自身の話をすると、ベトナムに来てから一度だけ犬肉を食べたことがある。犬肉を食べさせる店は、ほとんどの場合専門店で、店先に解体された犬の頭や胴体が飾ってあるの。非常に生々しいので、今でも慣れない。

職場の同僚に連れて行ってもらった店も、そんな専門店だった。メニューはほぼほぼ犬肉だけ。犬肉を焼いたものや、揚げたもの、蒸したものもあったかもしれない。各料理に共通しているのは、大量の香辛料を使っているという点だ。いわずもがな臭みを消すためだろう。

そして、肝心の味はというと、そこまで食べにくいということはなかった。もし、犬肉だと言われずに出されて食べたら、おそらくそれとわからないだろう。香辛料の効果もあり臭みはあまりない。

食感も柔らかくはないものの、固すぎることもない。程よい歯ごたえだ。牛肉とも豚肉とも違う。鶏肉でもない。「犬肉」の味がする。初めての味だった。食べたあと、体の芯がほんのり温かくなるのを感じた。

犬肉は、運気を上げる効果があるとされ、特にギャンブル好きなベトナム男性には嗜好する人が多いらしい。僕を誘ってくれたベトナム人同僚の一人も、無類のギャンブル好きで、いつも仲間内でトランプを使った博打に精を出す愛すべき馬鹿野郎だ。

ギャンブルの勝率が芳しくないと、運を引き寄せるために犬肉店に通っているらしい。こういった庶民の生活に深く根ざした理由がある限り、政府が近代化などと綺麗事を言ったところで、この文化は無くならならいのだろうな、と思う。


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