ボーはおそれている

アリ・アスター作品は苦手、だけどつい観てしまう、けど、嫌なので二度と見返す気にならない。そういうもの。が、この『ボーはおそれている』は、全体をコメディ側に寄せたために、嫌でありながらも笑える内容になっており、はじめて、何度も見返せる作品になった気がする。え?ある意味ではひどい3時間ではあるけど、嫌の種類が違うというべきか。これをコメディーととれるか
アイドルのポスターだらけの部屋に寝かされているなど、ユダヤ教あるあるのような笑いはよく分からない訳であるが、構造だけでも私は十分笑えた。まず、映画全体の長さが長いことも意図的であって。ボーの地獄めぐりがなかなか終わらないことで「まだまだ続くの?」という観ている側のツッコミをうんでいる。同様に、ポーが観劇中に自身の妄想と渾然一体になってくるところ(ここは演出としてもすごく好きなところ)でも、ハッピーエンドで終わらせるのかと思いきや、そこで終わらせない!といいうハズしなど、じわじわくる感じがよい。同じ地獄めぐりでも、『ハウス・ジャック・ビルト』とは楽しさが違うというべきか。
また、主人公がしょっちゅう 失神する展開では、なぜか井上ひさしの小説『吉里吉里人』を連想。『吉里吉里人』でも主人公がやたら失神するのを「まるで失神小説」とメタに評していたが、まさに本作も意図的に「失神小説」にしていて、「またかよ!」とツッコみながら観るこの繰り返しがくせになりそう。

その他、細かい点としては、『ヘレディタリー/継承』のはしごつき屋根裏がまたでてきた!など、ガジェットとしても楽しめる。もちろん、今回最大の爆笑ポイントは、お風呂シーンである。

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