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インフィニティ・プール

ブランドン・クローネンバーグ監督作。ブランドン監督といえば、ここでも触れた『ポゼッサー』がある。『ポゼッサー』は一度鑑賞後、しばらく内容を忘れていて、もう一度見直してたら好きになったということがあった。なので、かなり期待を持ってみたが、期待以上であった。 物語の構造としては、都会から隔離された場所に行った主人公がとんでもないことに巻きこまれるという、構造としては、アリ・アスター監督の『ミッドサマー』と同じなのだが(テーマは違う訳だが)、私との相性としては、本作の方が断然合う。

    • オッペンハイマー

      待たされたねー。これだけ公開延期されると、観れない可能性も感じて不安になってしまうが、最終的には観ることができ、まずはよかった。 さて、私は日本人でかつノーラン推しなので、その観点から語りたいと思う。まず、本作は登場人物が多すぎたり、複数の時間軸が前後しているため難解と言われていた。カラーとモノクロで異なる時間軸というお作法は、『メメント』でやっているから、そんなに苦ではない。登場人物も、時間の前後関係も2度観ることで、自分の中で整理できた。整理できれば、あとは分子や核分裂を

      • 2024 J1#5 川崎フロンターレ3-0FC東京

        久々にフロンターレのことでも。 長年サポーターをやっている身、これまでどん底につき落とされたこと数しれずの身からすると、リーグ3連敗なんて、なんてことない。とはいえ、わざわざnoteに書くなんて気にまではならない訳で。こういう機会でもないとね。 今までフロンターレ、色々問題を抱えてきたが、前回鹿島戦の敗戦から2週間空いたのはよかったのだろう。鬼木監督も「リセット」といっていたが、まさに新規蒔き直しとなる1戦だった。 今回、戦前からプラスの要素になってうたのがエリソンの復帰

        • 三体(Netflix版)

          以前、原作と中国(テンセント)版についてはここに書いたが、今回Netflix版が配信されたので一気に鑑賞。なお、この記事のおおまかな部分は、BLACKHOLEの『三体』特集でとりあげていただいたので、そちらもぜひ参照ください:-) ネトフリ版はテンセント版みたく長くない。8話と短かくする代わりに、キャラクターを大胆に再構築。最初は、多様性のためのキャストかと思いちょっと心配していた。が、それぞれが原作(3部まで)の役割をちゃんと担っておりしっかり意味のある存在だった。かつ、『

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          デューン/砂の惑星 PART2(追記あり)

          前作は、「えーここで終わり?」感の強い作品だったが、今回は「どうせPART3あるよね」という思いで鑑賞にのぞんだ結果、結構楽しめた。ポールの成長譚として物語の筋が通ってる。ただポールが主人公ではあるんだが、この作品は女性達のキャラクターが際立っている。フローレンス・ビュー様はじめ、今回もバリバリ活躍のレベッカ・ファーガソンお母様や、謎のレネ・ゲゼリット、レア・セドゥなど、キャラクターも強い。IMAXの映像も美しい。アクションもバリバリ。フェイド・ラウサとの決闘でクライマックス

          デューン/砂の惑星 PART2(追記あり)

          ARGYLLE/アーガイル

          マシュー・ヴォーン作品を鑑賞するのはややためらわれた。というのも、前作『キングスマン:ファースト・エージェント』があまりはまらなかったので。が、本作はいい!もちろん、ケナそうと思えばいくらでもツッコミどころのある作品ではある。『キングズマン』もそうだが、『オースティン・パワーズ』ほどギャグにふりきってる訳でもない。が、観ていて楽しいならいいじゃないか。ラスト主人公ピンチの場面、若干デウスエクスマキナ入ってる気もするが、気にしない(一応伏線あったよね!)アクションも007オマー

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          映画ドラえもん のび太の地球交響楽

          子供と鑑賞。最近のドラえもん映画の中では、個人的には高評価。よかった点は、いつものいかにもな悪役がいないこと。今回の敵は、知性があるかも不明な地球外生物?なので、そこに絞ったのはよかったと思う。のび太の新恐竜だっけ?では、「カタキ」を恐竜絶滅だけにしとけばいいのに、また別に悪役を立てるのはtoo muchだと思った。しかも今回、戦う武器が音楽というのもいい。まあマクロスとかでやってることではあるけど、5人それぞれに楽器を与えて、最初は下手なのを訓練で経験値を上げてレベルアップ

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          マダム・ウェブ

          聞こえてくるのがネガティブな評価ばかりの中、火中の栗を拾いに『マダム・ウェブ』行ってきた。 これ、そもそもヒーロー映画の題材としては無理があると思う。なぜなら、未来を予知でき、タイムリープによるやり直しも可能って、どうみてもヴィランの能力だし、やり直し可能というチート=万能性が、ヒーローアクションの緊張感を削ぐ結果になってしまうため。それに対し、映画はマダム・ウェブの能力発動に制約を加えることで、なんとか成立させていた。その努力は認めてあげなきゃと思う。事実、地下鉄のシーンま

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          落下の解剖学

          予告編を観ても今ひとつ乗り気ではなかったのだが、TBSラジオ『こねくと』で町山智浩さんが推している内容を聞いて、観てみようと思った。 本作は、ある男性がロッジの地面で倒れているのを散歩帰りの息子に発見されたところからはじまる。状況からみて、男性は作業をしていた家の三階から落下したと見られる。窓枠の高さや、頭に打撃の跡があることから、事故の可能性は低く、自殺または殺人のいずれかの線で捜査が行われた。息子は犬を連れて散歩に出ていたため、当時その家にいたのは被害者と、被害者の妻のみ

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          ボーはおそれている

          アリ・アスター作品は苦手、だけどつい観てしまう、けど、嫌なので二度と見返す気にならない。そういうもの。が、この『ボーはおそれている』は、全体をコメディ側に寄せたために、嫌でありながらも笑える内容になっており、はじめて、何度も見返せる作品になった気がする。え?ある意味ではひどい3時間ではあるけど、嫌の種類が違うというべきか。これをコメディーととれるか アイドルのポスターだらけの部屋に寝かされているなど、ユダヤ教あるあるのような笑いはよく分からない訳であるが、構造だけでも私は十分

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          キャンセルカルチャーについて考える

          私がキャンセルカルチャーについて考えてみようと思ったのは、昨今の松本人志氏の性加害報道もあるが、直接的なきっかけはYouTubeの水道橋博士のチャンネルで配信された『【LIVE】映像業界の性暴力と加害について…【月2博士と町山】』で、映画監督に性加害を受けた睡蓮みどりさんが、「作品に罪はないと思うがそれは違う」という趣旨のことを発言されていたのを聴いたからである。同様の発言を睡蓮さんは映画秘宝3月号のインタビュー記事でもされていた。もちろん被害を受けた方がそのように感じるのは

          キャンセルカルチャーについて考える

          哀れなるものたち

          『哀れなるものたち』について藤谷文子さんが「大好きな映画になった」とおっしゃってたが、私も同じ気持ち。かつてのお台場ヴィーナスフォートを思わせるような(と言っちゃ失礼か)、空からして作りもの感を敢えて出している寓話的なセットや、エマ・ストーン演じるベラの表情(特に、冒頭のヴィクトリアとしての顔と、そのすぐ後に登場する無垢な赤ん坊としてのベラの顔の落差)に、すぐ夢中になった。 好きすぎて原作も読んでみた。原作は、『藪の中』形式といえばいいのか、複数の視点で書かれていたり、仕掛け

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          『三体』原作とドラマ

          配信サービス隆盛の中、WOWOWも生き残りをかけ、攻めたコンテンツを仕掛けてきている。11月には『キングダム』『キングダム エクソダス』を一挙放送してくれたおかげで、映画館で見逃したのに無事観ることができた。 そんなWOWOWで先日放送されたのがSFドラマ『三体』。これはWOWOWオンデマンドでも配信されている他、Hulu等でも配信が始まってるらしい。 原作は確か柳下毅一郎さんがBLACKHOLEで紹介くださったので私も読んでいた。原作はSFとしてたいそう面白い。最初、文化

          『三体』原作とドラマ

          アクアマン:失われた王国

          つい先日の『マーベルズ』までは元気だったんですが、とうとう私にも「スーパーヒーロー疲れ」の症状が出たようです。なので短めに。 疲れなのか、長いからなのか、海中のせいでスローモーなアクションのせいか、あまりツイストのないストーリーのせいか、なんか今回ノレませんでした。 唯一よかったのは、顔出しが主流のこのご時世、ブラックマンタがほぼマスクで通したことですかね。ただむしろ、マスクはアンバーの方に必要だったかも。本編では彼女が悪いわけではないんですが、なにしろ法廷のこととか、撮影時

          アクアマン:失われた王国

          映画 ◯月◯日、区長になる女。

          年始早々に封切られた本作、興味はあったものの、ポレポレで連日満員と聞き(渡辺満里奈さんが当日行って満席ですごすご帰るなんて話も)、また時間もなかなかとれなかったので、だめかなと思っていた。また、岸本聡子さんが杉並区長になるまでを追ったドキュメンタリーと聞いていたが、岸本さん自身にそれほど興味がある訳でもなかったということもある。しかし、たまたま時間がとれたので3日前の午前0時すぎ、Web予約、当日行ってきた。この日も当然満席。全然事前情報入れていかなかったが、この日は終了後に

          映画 ◯月◯日、区長になる女。

          鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

          去年公開の映画だが今年鑑賞。スルーしていたが、あまりに評判がいいので。子供の時以外あまり真面目に見ていたとは言いがたいが、なんとなくただいろんな妖怪が出てきて闘うんだろうなというイメージだった。鑑賞前のハードルの低さばかりではないが驚いた。物語を骨太な水木イズムというか、そういうものが貫いている感じがした。物語は犬神家というか横溝正史的な舞台からはじまる。妖怪も絡んでくるので、京極夏彦的といってもいい。百鬼夜行シリーズも戦後すぐの舞台だし、本作で出てくる狂骨がタイトルに入った

          鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎