私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?

レイプされた女性がそれに負けずに立ち上がる、イザベル・ユッペール主演の映画。と書くと、『ELLE』と同じになってしまうが、ヴァーホーヴェンのエキセントリックな主人公と本作はだいぶテイストが違う。前者は完全創作で、後者は実話に基づいているというのもあるが、イザベル・ユッペールの演技もまったく違っていて、こちらの方がリアルで落ち着いた、これはこれですばらしい演技が楽しめる。

物語の方も、実話に基づいてはいるものの、主人公モーリーン・カーニーが「信用ならない語り手」でもあるため、非常にスリリングな内容となっている。主人公はフランスの原発会社アレバの組合長として、アレバ社が極秘で中国への技術移転を進めていることを知り、内部告発したところ、会社から脅迫を受け、その結果レイプされる…ということなのだが、その後、警察の捜査が進んでいく段階で、逆にモーリーンが自作自演を疑われてしまう…というストーリー。しかしここで怖いのは、モーリーンがレイプされるシーンがないため、モーリーンが「信用ならない語り手」となってしまい、観客の方も、疑心暗鬼にとらわれていくという、スリラーになっていくのだ。そこが非常によかったと思う。

また、実話ベースということだが、フランスの警察の隠蔽体質というか、権力の犬になっていて、フランスでもこうなんだ、と恐怖させる映画でした。


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