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bandshijin Weekly #10&11 三崎紀行 短調ブーム

自称、新人音楽おたくの青沼詩郎です。新人とは若いとかそういう意味ではなく、「音楽おたく」デビューしたのが最近だということを強調しているだけです。誰が強調しているのかといえば私です。デビューの定義も何もなくて、ただ私がそう言っているだけです。

「高校デビュー」などと表現することがありますが、高校に入ればそれが「高校デビュー」の定義なのでしょうか。「それを機会に、思い切った変化があること」も条件な気もします。それに対して、私が自分のことを「音楽おたくデビューした」というところにどんな条件があるのか。それはおそらく、ただそういう自認が生まれただけにすぎません。ただ、確固たる自認だということです。自分で、強くそう思うようになったな、というだけのことです。

「音楽おたくデビュー」にメジャーとかがあったら面白い。音楽おたくとして「メジャーデビュー」。「音楽おたく」を売り出すメジャーレーベルでも存在するかのようです。それを思うと、私の自認、私自身による売り出し(特に何も売ってませんが)はインディーズレーベル発という感じでしょうか。どんな感じやねん。

この記事は自称音楽おたくの青沼詩郎が書いた音楽ブログの記事をふりかえるものです。当初「週刊」を謳いましたが今回は2週間ぶりになってしまいました。合併号です。これの「音声配信版」も、このnoteの同じマガジン内に投稿していますのでお聴きください。そちらは文章じゃなくてしゃべっています。音声なので当たり前か。

11月8日(日)『翼をください』赤い鳥 ザ・ロック・グループ

9(月)『北風小僧の寒太郎』音楽が導くエモ

10(火)にんげんっていいな 童体の躍動

11(水)『大きな古時計』についてのエピソード

12(木)キセル『ハナレバナレ』に寄せて(その2) 平静な叙情

13(金)ウルフルズ『なんでなん』Bメロのコードひねくりまわし

14(土)見上げてごらん夜の星を ミュージカルとKinKiと九ちゃんと


合唱曲として親しまれた曲、もしくは学校教育でつかわれた歌本に載っている曲に多く私は触れました。音楽ブログを書いていても、そうした曲たちのことは頻繁に思い出します。

『翼をください』の原曲が「赤い鳥」だというのは知っていました。ですが知っているのは名前のみで、彼らがこれほどにロックなグループだとは知りませんでした。記事内にリンクした『翼をください』の激しいアレンジのパフォーマンスにぶったまげました。ドラムスが村上秀一氏(ポンタさんと親しまれる)だというのも恥ずかしながら知りませんでした。彼の熱いドラムスプレイにしびれましたね。

『北風小僧の寒太郎』のことは夏のうちから意識していました。いい季節になったらこうして書くブログのネタにしたり、自分でも歌ってみたりしたいと思っていました。あっという間にその季節がやってきてしまいました。

サビの「ひゅるるんるんるんるん」という擬態語・擬声語で高い方の主音に刺さるメロディ。じわじわと順次で持ち上がる低音進行。エモいぜ!と思いましたが、この曲のコンセプトは「子どもの演歌」。「エモい」という感覚と演歌には通ずるものがあると感じました。

『SWITCH』の松本隆特集号にくるり・岸田繁が登場しています。歌詞に着目した彼による選曲がそこに掲載されているのですが、そのなかの一曲に『にんげんっていいな』があります。コード進行やメロディの動き、歌詞をあらためて注意深く観察するとより面白みの増す傑作です。

『大きな古時計』も言わずもがな知れた名曲です。作曲のいきさつを検索してみたらわかったことがあって面白かったです。なんでも、時計のオーナーだった人が他界した時刻を指して止まってしまった時計が実在するのだそう。そのエピソードを知ったヘンリー・クレイ・ワークが今からおよそ144年前に書いた曲が「大きな古時計」の原型です。

辻村豪文・友晴兄弟による音楽ユニット・キセルのファンで、彼らのつくる歌が好きです。『ハナレバナレ』は私が彼らを知ったきっかけになった曲。前にも一度この曲について触れて記事を書きましたが、あらためて焦点を当てました。というのも、この曲にはバージョン違いがあるのです。サウンドやアレンジの違い、歌詞にも着目し直しました。

ウルフルズを私は大好きですし、私の書く記事を読んでくれる人のなかにもウルフルズが好きで、関連情報を寄せてくれる人がます。その人が紹介してくれた、ウルフルズ・トータス松本出演のラジオの中で紹介された曲が『なんでなん』。ウルフルズのアルバム『人生』に収録されています。

この曲のコードをトータス松本は「ひねくりまわした」といいます。確かに、Bメロが興味深い動きをしていて、サビにつながったときに転調したような錯覚があるのですが実際はもともとのキーのまま…という「ひねくりまわした」仕掛けがあるのです。その面で非常に面白い曲ですが、彼らのデビュー曲を思い出してしまうようなほろ苦さあるまっすぐでキャッチ—な曲でもあります。

グリコ・森永事件をモデルにした小説を原作とした映画『罪の声』が公開されました。事件に巻き込まれた企業はグリコ・森永だけではなく、ハウス食品もそのひとつです。事件の収束を墓前に報告するために搭乗した飛行機が墜落して亡くなったしまった、ハウス食品の当時の社長。同じ飛行機に搭乗して亡くなってしまった者の一人が、坂本九でした。

私の身の回りで映画『罪の声』を話題にしていた人がいたので、そんなつながりから思い出した坂本九の歌った名曲。実は、坂本九よりも先に歌った人があるうえ、もともとは同名のミュージカルの曲だったのです。私がこの曲をちゃんと認知したのはKinKi Kids・堂本剛が彼が主演するドラマの挿入歌としたカバーしたことがきっかけでした。

11月15日(日)ゲゲゲの鬼太郎 不気味な愛嬌

16(月)夢の世界を 若き教科書編集部員の思い

17(火)友部正人『朝は詩人』とミニレポート・芋煮ロックフェス2020(三浦・三崎)

18(水)くるり 益荒男さん 音のあそびに着目した視聴メモ

19(木)くるり ハイウェイ 百の理由 心象の絵画

20(金)ちいさい秋みつけた うつろいの音景

21(土)『君をのせて』メロディの秘密(『天空の城ラピュタ』主題歌)


『見上げてごらん夜の星を』と『ゲゲゲの鬼太郎』には作曲者がいずみたくであるという共通点があります。『ゲゲゲの鬼太郎』の作詞者は水木しげる。原作漫画の作者ですね。『墓場(の)鬼太郎』という漫画を描いていた水木しげるでしたが、アニメ化に合わせて改題しました。歌のタイトルも当初は『墓場の鬼太郎』だったそうです。そう、最初、この曲はアニメの主題歌としてでなく、漫画のイメージソングといいますか、出版と音楽制作のコラボで生まれた歌だったのです。

歌は短調がそれだけで強烈なフックになっています。熊倉一雄による湿っぽい歌唱はお見事。研究の糧にいたしました。

歌本をめくると『夢の世界を』がありました。教育芸術社『歌はともだち』、重宝しています。若き教科書編集部員だった橋本祥路が、競うようにして書いたもののなかにこの『夢の世界を』があったそうです。これほど長く親しまれる歌になるとは、そのとき誰が思ったでしょうかね。平歌が現実、サビが夢の世界…とみることもできそうな歌詞。作詞者:芙龍明子については情報が少なかったです。

15日に私は神奈川県三浦市・三崎を訪れ、『芋煮ロックフェス』を観覧してきました。かもめ児童合唱団の出演を見るのが一番の目的でした。川本真琴の出演もあり、そちらも楽しみでした。彼女のキャラクターが発する独特な空気とゆったりしたスピード感のMC。それに対して、機敏で高らかな歌唱力のギャップが際立っていました。オープンエアーで、港町のちいさな商店街の駐車場に設けられた手作りのステージと客席。空を見上げると海鳥の軌跡。芋煮と日本酒が極上で一日堪能しました。

友部正人『朝は詩人』のカバーを、そのステージでかもめ児童合唱団が歌いました。かもめ児童合唱団のカバー曲のセンスに私は影響を受け、音楽の世界を広めています。かもめ児童合唱団のプロデューサーで、地元・三崎の宝と呼ばれる藤沢宏光の姿が芋煮ロックフェスのPA席やステージに見られて、久しぶりに音楽の現場を生で共有できた喜びも相まって感激でした。

11日の0時に、突如配信開始・発表されたくるりの新曲『益荒男さん』。私は1週間リピートしてひたすらに聴きました。配信開始時から注目していましたが、1週間聴いてここでひとつ書いておこうと思い、「音のあそび」に注目して書きました。声や楽器や電子音、加工をほどこしたり様々工夫をこらしたりした演出が盛りだくさん。ちなみに、先日注目した『ゲゲゲの鬼太郎』も『益荒男さん』も短調。私に短調ブームが漂っています。

くるり『ハイウェイ』はずっと私の心にあった曲。ですが、先日、『ジョゼと虎と魚たち』のアニメ映画が12月に公開される報せを知って、2003年の犬童一心監督の同名映画の主題歌・くるりの『ハイウェイ』を思い出しました。

アコギとドラムスのシンプルで素朴なビートの印象ですが、リフや歌のアウフクタクトが曲の性格を握っていることに気づきます。気軽に弾き語りで真似したくなる曲ですが、このアウフタクトの再現をないがしろにすると曲の魅力が大きく損なわれてしまうのです。「旅」や「途上」、その心象風景を思わせる名曲。

肌寒さに季節のうつろいを感じます。『ちいさい秋みつけた』が歌本に載っていて、その譜面のえも言われぬ美しさに目が止まりました。季節的にも、今だな、と。作詞がサトウハチロー、作曲は中田喜直。メロディ美が図抜けています。私は音大時代にも中田喜直作品を歌ったのを思い出しました。ハーモニーが美しい男声グループ・ボニージャックスの録音も堪能しました。

私は完全に短調熱を発してしまったようです。教育芸術社『歌はともだち』をめくっていると、短調のそれに強く反応。ジブリの長編アニメ映画『天空の城ラピュタ』主題歌の『君をのせて』も短調です。この曲についての私の書き込みに対して歌のメロディの良さを「なんともいえない」と反応した人があったので、その理由が気になって曲を読み込んでみると、わかってきたことがありました。ヒラウタの調和とサビの緊張。ベースと歌の音程の関係に秘密があると私は分析しました。気になったら記事をぜひ読んでみてください。

むすびに 勝手に合併号

週刊を謳いましたが、乱れてしまいました。ひとりでやっていますしビジネスでもなんでもないですし誰も困らないでしょう。2週間あったら、成虫になった蝉が死ぬのに十分な程度の時間でしょう。夏を引きずってみました。「引きずる」と「思い出す」はちょっと似ているなと思いました。

青沼詩郎

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