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最近ふれた音楽 a Week #15 斉藤和義〜星野源・細野晴臣〜奥田民生

12/13~19

斉藤和義『空に星が綺麗』 私の頭の中の吉祥寺に響く歌

大学生くらいの頃にすごく好きだった歌がたくさんあります。

それらはたいていiPodに入れて聴いていましたが、自分の携帯をiPhoneに替えた時からiPodを使う頻度は落ちていき、やがてほとんど使うことがなくなりました。

最近になって、あの頃iPodで頻繁に聴いていた大好きな曲のひとつをふと思い出しました。

斉藤和義の『空に星が綺麗』です。

副題に『~悲しい吉祥寺~』と入れられて発表されている盤もありますが、サブタイトルが外れて扱われているものも多いです。

サブタイトルに吉祥寺とあると、やはり歌詞の表現のバックグラウンドとして吉祥寺の街を思い出します。“懐かしいあの公園”と来れば、井の頭公園! というように。

とても短いサイズの曲なのですが、その収まりがすごくいい。私も音楽をつくる者のはしくれですが、「こういう音楽」をつくりたいという理想モデルのひとつがこの曲。イントロの木琴とピアノの組み合わせの上行音形のフレーズが印象的。この弱起フレーズをモチーフに何か一曲つくってみたくなります。


Warm And Beautiful 絞った音数の神妙

ポール・マッカートニー、リンダ・マッカートニーらによる名義、ウィングス。『Warm And Beatiful』という世にも美しい曲があります。こちらの曲は実質ポールのソロでしょう。ピアノと歌を主にした、抑えた音数が魅力的な曲。

私は大人になってからビートルズやポール・マッカートニーのソロを聴き始めました。バンドや解散後のメンバーの音楽を知れば知るほど、彼らの影響があらゆるところに顔を出すことに気づきます。また、その曲が彼らのものであると知らずに、どこかですでに聞き及んでいいることも多いのです。「ああ、この曲って○○のソロ曲だったんだ」と。

年代を越えて、国や地域を越えて、ジャンルの壁も越えて、ある日まったく関係のない音楽を聴いているつもりのときでも「あ、このフレーズは」「このサウンドは」と、明らかなオマージュや作り手の深層に刷り込まれた音楽的素養を通して発現する、ビートルズ(ならびにメンバーソロ)の影響。彼らの音楽は知るほどに、世界中の音楽に「ビートルズ探し」するのが楽しくなるのです。

ポールは12/18にソロアルバム『マッカートニーⅢ』を出しました。作品の大部分を、自らの演奏の多重録音でつくっているそうです。私もそうした制作方法を普段から選んでいるのでとても興味深い。ですが新作をさらっと一聴した感じ、そうした「多重録音くささ」は感じられませんでした、良い意味で。まだ浅く軽くしか触れていないのでこれからまた繰り返し聴いてみたいです。

それにしても、78歳でまだアルバムを出し続けるなんて。


伊藤銀次(ナイアガラ・トライアングル)『幸せにさよなら』 決別の歌

伊藤銀次の『幸せにさよなら』を思うと私の記憶から出てくるのはかもめ児童合唱団のカバー。同合唱団のアルバム『インターネットブルース』に入っています。

伊藤銀次はこの曲を、山下達郎・大滝詠一との共同名義「ナイアガラ・トライアングル」としてリリースしています。

曲中には「想い出にさよなら」という歌詞が出てきます。曲のタイトルもそのようにしかかったところ、同名の曲(メリサ・マンチェスター『Just Too Many People(想い出にさよなら)』)の発表が近い時期にあったらしく、アイディアをいただいたとの誤解を避けて『幸せにさよなら』としたそうです。

星野源『ただいま』 顧みる郷土

星野源のアルバム『ばかのうた』(2010年)がリリースされた頃、この作品をを当時の恋人(現・妻)に紹介してもらったことがありました。当時の私は「ナニ? 俳優もやるし踊れるしなんか人気あるっぽいインストバンドやってた人が歌ったソロアルバム? ふふぅん…」という感じで先入観と偏見をフル稼働。もちろんアルバムは聴きましたが、そこまで深入りはせず。『グー』や『ばらばら』などいくつかの曲のイメージを築くのみで、全曲を細部まで深く聴くことまではしませんでした。ですので、星野源と細野晴臣の共作『ただいま』というハイトピックがこのアルバムに含まれていることなどにも気付かなかったのです。いえ、当時の偏見と先入観持ちのアホの私なら、気付いたとしても深入りしなかったかもしれませんが…

最近、細野晴臣がパーソナリティのラジオ『Daisy Holiday!』(Inter FM 897)をしばしば聴きます。

出版されたばかりの『細野晴臣と彼らの時代』(門間雄介)という本でこの曲『ただいま』のエピソードを私は知りました。それはそれはもう、素敵なエビソードが魅力的につづられているのです。試し読みをネットで読んで、私は本を買いました。ちょっぴりずつ、余裕のあるときに読んでいます。



ECHOES『ZOO』波紋の隅でABCD

「愛をください...oh」で多くの人がこの曲を思い出せるのではないでしょうか。川村かおりに提供されてリリースされたのち、提供者の辻仁成らECHOESのセルフカバーが出ます。それから、菅野美穂主演のドラマ『愛をください』(2000年)の主題歌になり再ヒット、といういきさつを持つ曲。

まっすぐ立ってまっすぐ歌う辻仁成の姿がかっこいい。彼が立つ場所が実際に高い位置かどうかを別として「高いポジションから歌っている」かのような気にさせるのはなぜでしょうか。とても魅力的な声とパフォーマンス。洋楽っぽいクールな感じ? の80~90sなサウンドが雰囲気出ています。

歌メロディのパターンが豊富で、AメロBメロ…とメロディのパターンにナンバリング(アルファベッティング?)していくとDメロまであるかのようです。このくらいの時代の音楽、さらにいうと筒美京平作品にはEやFメロまであるものもある…などというコメントも頂きました。安易な繰り返しによらず、どんどん変化させた構成を出していくことでオリジナリティを追求したんでしょうかね。

ZOO『Choo Choo TRAIN』 夜のストリート・チャンポン

ZOOという名前で私の記憶はこんがらがっていました。そのこんがらがりをほどくと、ECHOESの楽曲『ZOO』と、『Choo Choo TRAIN』が有名なダンス・グループのZOOに分解されました。

楽曲ZOOとグループのZOO、ふたつが動いたのは年代的にも割と近いものがあります。これは自分の混同のいいわけです。

作曲者が中西圭三だとは知りませんでした。EXILEがカバーでヒットさせたのが2003年。多くの人がぐるぐる回るダンスを真似しましたね。あれ、オリジナルのZOOとEXILEで回る方向が違うんだそうです。

楽曲タイトルは幼児語的な「汽車ぽっぽ」といったニュアンスの意味らしんですが、もうひとつにはオトナで俗な別の意味もあるらしくてですね、そちらが明るみに出ると人によっては「記者ぽっぽ」的な感じになってしまうかもしれません…失礼しました。

奥田民生『まんをじして』 何歳でも貫禄

私に出演を提案し続けてくれる数少ないライブハウスが八王子にあります。papabeatというお店なのですが、有名なバンドやミュージシャンとの逸話をたくさん持つ名物オーナーのお店です。現店長さんが私と同い年。終演後、そうした名物オーナーの逸話をよく聞かせてくれます。

ユニコーンや奥田民生を敬愛するスタッフが、ある日イベントがキャンセルでぽっかり空いてしまった日に「民生ナイト」を企画しました。私も関心があったのですが参加がかないませんでした。なんとなく民生熱(フィーバー)を持て余した私は奥田民生作品を思い返しました。

『まんをじして』(2002年)は、三谷幸喜脚本・演出のコメディドラマ『HR』の主題歌。『さすらい』や『イージュー★ライダー』に次いで、私の記憶に強く刷り込まれた曲。骨っぽく荒々しいかっこいい曲です。スライド・ギターが飛び回る。ブルージーな音階のボーカルメロ。ドラムスはズンズンダンダンとダウン・ビート(強拍)。

この曲の当時の奥田民生が37歳。あと3年でこの貫禄が私(34)に出せるか? いやいや、比べるとこじゃねーだろ、と…。

年末も年末。来週のいまごろは大晦日イブ。街にもラジオにもクリスマスソングが鳴りまくりです。

青沼詩郎




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