おせちにかける想い
こんにちは、こんばんはばんどうです。毎年なんだかんだでサラッとしかご紹介していたなかったおせち について。noteというフォーマットが長文書くのに向いてるのでガッツリご紹介させていただこうと思います。
コンセプト・おせちとは?
そもそも、御節ってなんだ?と考えるとまず「正月の間、竈の神様にも家族にも休んでもらうために餅とお茶以外の火を使わなくていいように」というための冷蔵庫がない時代かない時代からの「ハレの保存食」でした。
しかし、現在の流通や冷蔵技術が発達した昨今、昔ながらのおせちをそのまま作り続ける意味があるのか??という疑問。
そして、「現代における正月ってとてもめでたい特別な席だけど、そこで冷たい煮っ転がしとか食べて本当に<この1年のやる気出ます?>」ということ。
そこで、ばんどうのおせちは・・・・
「また一年を頑張ろう」と思えるような、美味しさと幸せに満ちたものを作りたい。そんな思いでやらせてもらってます。
紐を引き抜くと発熱する、いわゆる「牛タン弁当」のようなお重を使い「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく」食べられるようにしております。
召し上がり方
なので一の重とニの重は「蓋をしたまま紐を引き抜いてから」お召し上がりいただきますとより一層美味しくお召し上がりいただけます。紐を引き抜くと、しばらくすると蒸気が上がってくるので「蒸気が出てから10分ほど」が食べごろです。
それでは今年の献立についても細かく。
まずは一の重
主に伊勢海老やらアワビやらの大物系の豪華な食材を詰めています。
伊勢海老は今年は自家製のXO醬を仕込んだのでXO醬炒めに。旨味食材の重層的な旨味が、伊勢海老の美味しさを後押ししてくれます。また、海老つながりで車海老は「酔っ払い海老」に。みりんベースの合わせ調味料に「溺れさせて」締め、味を飲ませて含ませます。身のほうはその後湯がき、頭の方はカリカリの唐揚げに。今年は食べ応えのある大きめサイズをチョイスしました。
また、伊勢海老の頭は「ただの飾りじゃん」と思われるのが嫌で、きちんと掃除して味噌を取り出し、取り出した味噌で「エビチリソース」に。頭の下には三河名産のよし海老でしんじょを作り忍ばせています。
また、鮑は今年は黒ではなく「蝦夷」を。昆布の旨味を感じる鮑を、酒を効かせたお出しでじっくり含ませ煮に。アワビの隣には「鮑より単価の高い」椎茸をこちらもじっくり時間をかけて旨煮に。
その手前の枡には煮物類を。天竜鮎の子持ち鮎。こちらは12時間ほどかけて骨までホロホロの甘露煮に。お野菜は毎年大体に通ってますが「トルコの松茸、京人参、慈姑、早筍、絹さや」です。それぞれ処理を変えて
松茸・・・半干してからお出汁に落として含ませに。
人参・・・今年は「ペクチン硬化」という技法を用いて「低温で下茹でしてから、お出汁で炊いて」います。こうすることにより中まで火は通ってるのに表面は食感の残る状態、に仕上げることが可能となりました。
慈姑・・・六方に剥いてクチナシで色と香りをつけながら少し甘めに。
筍・・・産地的に香りは弱いですがお出しで旨味を補い、歯触り残して炊き上げています。
絹さや・・・超高温で極一瞬だけ湯通しした後、即座に氷水で急冷。その後冷たいお出しと合わせて自然と味が馴染むのを待ちます。
そんな感じです。
続いて二の重
こちらも温かい段になります。焼き物を中心にあれこれ工夫を凝らした品を詰めさせていただいております。
左上から
海老芋唐揚げ
例年は大野芋を使っていましたが今年は植え付けができなかったらしく京都の海老芋を。ねっとり炊き上げた後、唐揚げにしてコク味を足し、唐墨を削って。
宇治田農場鶏と信長ネギの鍬焼き
特注で育ててもらっている宇治田農場の鶏。かなり食感の強い鶏ですが噛み締めるほどに旨味があります。滋賀の信長ネギと一緒に甘辛のお醤油味で鍬焼きに。
帆立のみりん粕焼き
帆立を、酒粕ではなく甘味の強いみりん粕につけて。身が締まって旨味が凝縮します。
熟成鰆の酒塩焼き
気持ち濃いめの塩を当てて2週間以上熟成をかけた鰆を、酒で洗って風味をつけて焼き上げました。愛知県の片名の鰆です。
特選白身と宇治田農場の卵の伊達巻き
昔僕が居候をしていた宇治田農場さん。鶏も絶品ですが本業の卵と野菜も抜群に美味しい。エソ・グチなどの食感の強い白身と合わせて甘めの伊達巻きに。
段戸牛のミスジ ローストビーフ
最近定番で扱っていますトヨタの段戸山の段戸牛。ミスジの部分をローストに。マッシュしたポテトのソースとばんどう定番の白い玉葱醤油とともに。
鰤の赤味噌漬け焼き
こちらは「味をつける」というよりは「風味をつけて血合を旨味にする」ための「漬け」込み。赤味噌で濃くつけると濃すぎるので、サクの状態でつけてから、切り出して焼いています。
白子の胡麻味噌漬け焼き
ごま油の風味をつけた味噌にたらの白子を漬け込んでいます。ねっちりとした濃厚な珍味に仕上がっています。
牛蒡とむかご の和牛そぼろ餡
牛蒡とむかご を、たっぷりの鳳来牛の極あらミンチでそぼろ煮に。
あいち鴨のロース煮とあんずのワイン煮
豊橋で開業した頃から懇意にしているあいち鴨を定番のロース煮に。付け合わせは鴨はフルーツと相性が良いのでオーガニックの無漂白アプリコットを赤ワインで煮付けたものを。
一汐鯖の味噌煮
入荷後すぐに塩を当てて旨味を引き出したサバを、生姜を聞かせた赤味噌煮に。コレは日本酒ですね。
牡蠣の支倉好み
和製コンフィとでも言いましょうか。焼いた後、油に落として「空気に触れさせない」ことで保存食とする古い仕事です。今回はとびきり風味の強い愛知県のほうろく菜種油を使い、牡蠣の香りと菜種の油の相乗効果を狙いました。「支倉好み」という調理名はそのまま「支倉さんが好きだった」そうです
三段目の冷製
そして「冷たい珍味類」のお重。
同じく左上から
胡桃の飴がけ
味の強いものや珍味が多いおせちの中で、甘いものが少しあると結構ほっとします。オーガニックのくるみをカリカリの飴がけに。毎年多めに仕込んで、1月のおやつにするくらいのお気に入りです(笑
蜜蝋の大学芋
蜜蝋という甘くなるサツマイモを、さらに濃厚な大学芋に。こちらはクルミよりも「とろりとしたあまじょっぱい飴」にしています。
しめ鯖
脂の乗った冬季のサバを赤酢で絞めて赤かぶと一緒に。ミツカンが「山吹」という創業当時のお酢を今も当時のレシピのまま作っているものがあるのですが(原材料酒粕だけ、江戸前寿司はこのお酢があったから生まれたと言われている)、そちらを使って旨味たっぷりに仕上げています。
信州サーモンと玉ねぎのマリネ
信州サーモンは長野のマスです。養殖の魚に特有の「養殖の餌の匂い・脂の匂い」が全くなく、「川魚のかおり」がきちんといきた美味しい鱒。脂のノリは優しいですがそれが川魚らしくてなお良いです。
自家製XO
海老やら帆立やら鰹節やら、世界最高の胡椒やらをほうろく菜種油でまとめた旨みの塊。お酒のあてに。お餅やご飯に乗せても。
黒豆
京都丹波最高品質の黒豆を、こちらはスタンダードにふっくら艶やかに優しく炊き上げました。
金柑のヴィネガー煮
ワインビネガーを使って「酸っぱい」金柑の煮物に。口安めにちょうど良いです
せいこ蟹 せいこ の蟹味噌餡
せいこ蟹をバラして、蟹味噌だけは別で集めて「濃厚な蟹味噌餡」を作りました。せいこはなんといっても出汁が美味いですからね。
子持ち昆布 みりん粕漬け
子持ち昆布を塩抜きして、みりん粕で甘く酒のアテに漬けました。
カラスミ 砧巻き
カラスミを、桂むきした大根の塩漬けで巻いて、一晩寝かせます。
そうすると水分と塩気が馴染んでめちゃくちゃレアな味わいのカラスミに。
「これが一番好き!」て方も多いです。僕もカラスミの一番美味しい食べ方と思います。
京人参と牛すじのリエット
色々使った今日人参の切れ端が大量に出るので、その切れ端とローストビーフを作るときに出た牛すじを合わせてリエットに。オーガニックのクラッカーと一緒にお召し上がりください。
紅白なます
めっちゃシンプルななます。こういうのも、珍味ばかりの中にあるとさっぱりして妙に美味しく感じます。鰹だしの土佐酢で仕上げています。
いくら 氷魚
塩漬けのいくらと、氷魚=鮎の稚魚の釜揚げです。酒のあてですね。
菜花の胡麻和え
京都の香り高い菜の花と、有機胡麻を直焙煎して胡麻和えに。これも個人的にめちゃくちゃ好きです。
剣先いかのこのわた和え
軽く熟成かけた剣先いかと、薄口・酒と一緒に叩いたこのわたをあえた「気品ある足跡塩辛」に。普通のイカ塩辛より美味しいと思ってます。
作るのめちゃくちゃ大変です(笑
そんなこんなで全何品だ?て感じのばんどうの御節、基本的には「急速冷却と調理法・冷蔵技術」によって保存性を確保しているため「甘くてしょっぱければ腐らないでしょ」という通常のおせちとは別物の美味しさがあると自負しております。
(終わった後に、大晦日の夜あまりものをみひろが盛り込みしてくれた「余り物おせち」を食べながら自分で感動してたくらい(笑
良ければ次回分、早めにご予約ください
結構体力使う仕事なので、毎年「ずっとはできないな」と思って作っていますが、「体力のある限りは、新年から美味しいものを食べたい、そんな人のために作り続けたい」そう思っています。もしよろしければ、今からでも早めのご予約いただけますと幸いです。
1人前や鍋セットもあります
また、今年から復活させた
●「1人前」セット
(おせち1人前+鍋セット0.7人前くらい)や
●クエと伊勢海老の鍋セット
●定番のもつ鍋セット
この辺りも「おせちだけだと飽きちゃうけど、正月はご飯の用意が考えるのも大変」という方々からご好評いただいております。良ければ来シーズンまたご検討ください!
ではでは!お読みいただきありがとうございます!