薬学部生が1ヶ月で危険物甲種を取ってみた〈甲種危険物取扱者合格体験記〉


1.はじめに

 こんにちは、ばんです。
今回、私は友人達がチャレンジするからという理由で危険物取者甲種の受験勉強を約1ヶ月行って試験に挑み、一発合格することができました。

その記念として(?)合格体験記という大袈裟なものを書いてみようと思い執筆に至りました。危険物取扱者について全く知らない方私と同じ大学生の方危険物取扱者の資格取得を目標とされる方に参考として読んでもらえると幸いです。

2.「危険物取扱者」とは?

 はじめに、危険物取扱者という資格をご存知ですか?この資格は国家資格で、取得すると消防法により定められた危険物を取扱う事ができます

 危険物取扱者は甲種,乙種,丙種という3種があります。更に乙種には第1〜6類という分類があります。何故6つも分類があるのかというと、危険物は第1~6類という分類があるからです。
話の都合上、乙種,丙種,甲種の順で説明していきます。

 まず、乙種は指定された類の危険物を取扱う事ができます。例えば乙種第1類を持っていると第1類の危険物を取扱えます。しかし、第2~6類の危険物は取扱いできません。

 取扱うという行為は多岐にわたります。製造貯蔵タンクローリー車等での移送が例として挙げられます。下の写真の様にタンクローリー車やトラックに黒地,黄色で「危」と書かれた標識がついているのを見た事ありませんか?

タンクローリー車後方に設置された標識

これは危険物を移送しているマークで、移送してる人は危険物取扱者です。なので、結構身近に資格を持っている人がいるんですよね。

 「乙4を取得するとガソリンスタンドでの賃金が上がる」なんて聞いた事ありませんか?その「乙4」は乙種第4類を指しています。ガソリンや重油,軽油,灯油などは第4類危険物に指定されています。それを給油という形で取扱うため取扱者の資格を持つ者に業務を行ってもらう必要があります。これが賃金がアップする理由です。

 次に、丙種は第4類の特定の危険物を取扱う事ができます。それが前述したガソリンや重油などです。乙4より取り扱える危険物は少ないけど、ガソスタで扱う危険物は取扱えるので賃金がアップします。

 そして、甲種は第1~6類の全ての危険物を取扱う事ができます。トム・ブラウン風に言うと「乙1から乙6を集めて、合体させて最強の危険物取扱者を創りたいんですよ~。」という感じです。まさしく甲は乙を兼ねるということです。当然、甲種は第4類危険物も取扱えるのでガソスタでは賃金がアップします。

 以上が甲種/乙種/丙種の階層構造です。例がガソスタだったので乙4以外の乙種の使われ方が分かりにくかったかもしれませんが、ちゃんと適所で適材されています。

3.何故甲種危険物取扱者を受験したのか

 私が今回、甲種試験を受験したのは冒頭で述べた通り友人が受験するからであって必要性に駆られて受験したわけではありません。では何故甲種受験をするという発想が友人間で湧いてきたのかと言うと、春休みのミニゲーム的な側面もありましたが、肝は薬学部生が甲種の受験資格を満たしていた事にあります。ここまで一度も言及してきませんでしたが、甲種は乙種/丙種とは異なり受験資格が設定されています。それは、

  • 大学等において化学に関する学科を卒業した者

  • 大学等において化学に関する授業を15単位以上習得した者

  • 修士、博士の学位を有する者

  • 複数の乙種を有する者(<1or6> + <2or4> +3+5が条件)

のいずれかを満たす必要があります。
大卒もしくは院卒って結構ハードルが高いし、4つ目の条件で行こうとすると最低でも4回乙種を受験しないと資格を得られないです。

 しかし、実は薬学部生は2つ目の条件を軽々と突破しているのです。薬学部は医療系科目の勉強をしているイメージがあるかもしれませんが2,3年次では化学や物理、生物と言った自然科学の勉強が大半となります。私の大学では2年次で有機化学を8単位履修します。その他にも、物理化学4単位、分析化学4単位、そして生化学4単位etc…を履修するのでラクラク受験資格を取得できます。

 そして、化学系の授業と言っても結構融通が利きます。1年次で学ぶ全学教育の化学もカウントされたり、授業名が○○化学ならまずカウントされるし、そうでなくてもカウントされたりするので、薬学部以外の学部でも簡単に受験資格を得られるかもしれません。カウントされる授業は消防試験研究センターのHPに書かれているので興味が湧いたら調べてみてください。

 以上の通り、甲種危険物取扱者はそもそも受験すること自体難しく、それに加えて合格率は概ね40%という中々難易度の高い資格です。せっかく受験資格を持っているし、長い春休み中に取り組むにはうってつけの資格じゃありませんか?
ということで、受験するに至った訳です。

4.実際に行った勉強方法/試験本番/合格!

 友人間で甲種受験の話が持ち上がったのが期末試験直前の1月下旬ぐらいでした。その時は期末試験に集中したかったので受験申し込みだけ行って、試験終了後に参考書を購入して勉強を始めました。期末試験が終わったのが2月6日で、試験日が3月10日でしたので勉強期間は1ヶ月弱でした。
 先に断っておくとこの期間全てを甲種の勉強に注いではいません。旅行に行ったり、友人と飲み会をしたりしました。一緒に受験した友人も
サークルやバイトと両立して取り組んでいました。全力投球していたという訳ではありませんでした(※決して楽々合格という訳でもありません。試験1週間前はスパートをかけて勉強しました)。適度にリラックスした状態で勉強した結果、本番で絶対に結果を出そうと過度に緊張せずに受けられて、それが合格した一要因だったのかもしれません。

 使用した参考書は以下の2冊です。2月上旬に1冊目を購入してゆっくり読み進めていき、締めに問題演習を重ねる為に試験1週間前に2冊目を購入して解き進めて本番に臨みました。

 簡単にそれぞれの参考書の感想を述べておきます。何冊も参考書を読み比べたりしてないので、あくまで個人の感想と受け取ってください

 1冊目はイラストやまとめが多くて取り組みやすかったです。しかし、本番レベルに対応しているかと言われると少し不足しているのではないかと感じる部分がありました。具体的には、試験にて詳しく問われる法令がやや大雑把に書かれてたりしました。
 
 2冊目は非常に良い問題集でした。この本によって合格したと思います。内容は本番形式の演習書で、6回分の問題が収録されています。問題難易度が中々に高くて解説がとても丁寧であったので1冊で完結していました。使い方としては1日に1回分+前日解いた分の復習をして1週間できっちり使い倒しました。この使い方がベストじゃないかと思います。解けなかった問題は解説を丁寧に読んで、後日解けなかった問題を集めて解き直す事で苦手な分野も対策できました。この本の著者が参考書も執筆されていたので本書とそれの二冊で対策するとシナジーが高いかもしれません。

 本番について話すと、問題集で見た事のない問題がいくつかありました。これは単純に演習不足によるものだと思いますが、知識を総動員して取れる問題は確実に正答するのが肝心だと感じられました。受験者は老若男女多様で新鮮でした。試験時間は2時間半となってますが解けない問題は知識不足でどうしようもなかったので勘でマークして1時間半程で退出しました

 合格発表は3月28日の正午にネットで公開されました。大学受験みたいに開くのに時間がかかるといった事は無く、すぐに番号を見つけられました。先述した通り当初はミニゲームの感覚で勉強していましたが、いざ受かるとやはり非常に嬉しかったです。資格マニアの気持ちが分かりました。

5.危険物取扱者を受験する人へ

 ここからは、老婆心ながら危険物取扱者を受験する人へ少しアドバイスをしたいと思います。試験科目は

1.危険物やそれを取り扱う施設、危険物取扱者に関する法令(15問)
2.高校レベルの物理/化学(10問)
3.危険物の性状と消火法(20問)

の3種類があり、それぞれ60%以上正答が合格基準です。私の正答率はそれぞれ80%,70%,65%でした。結構ギリギリ。

 1は完全暗記なので何度も反復して地道に覚える他ありません。ある程度覚えられたと思ったら、問題集をこなしてみてください。合格点に達しないと思います。ですが、そのギャップを埋めることが最も重要です。「なんて自分は勉強が出来ないんだ!」と思うかもしれませんがめげずに食らいついてください。その苦しい期間が一番成長する時期だと思います。

 2は高校レベルの内容なので大学生ならばスムーズに解けると思います。ですが油断すると痛い目に遭います。現に私は3問もミスをしていました。高校で物理/化学を履修してない方にとってはかなり厳しいかもしれません。問題が10問しか無いのでたった4問しか間違ってはいけません。物理,化学の演習に特化した参考書もあるらしいのでそれで対策する事を勧めます。計算問題は得意不得意が大きく分かれるかもしれません。ですがこの試験はマーク式なので、荒く近似して計算しても答えを出せます。ですのでその練習をしておくといいかもしれません。まあ、試験時間は十分長いので丁寧に解いていっても良いと思います。

 3は高校化学における無機化学の延長ですつまり暗記結局暗記です。期末試験では薬の名前と作用を延々と覚えましたが、それの再開か・・・と落胆しました。ですが、法令とは異なり化学の知識を使ってグループごとに整理する事で暗記量を削減することができます。甲種は範囲が膨大なので、効率的に覚えていかないとキリがないです。高校で習った事を思い出してコスパ良く覚えてください。あと、甲種については類の勉強する順序を自分なりに整理する事を勧めます。私は6→2→3→5→4→1の順で勉強しました。理由はその順で覚える量が少ないからです。試験では全類が満遍なく出題されるので化合物によって出題頻度にばらつきが生じます。そして短期間で勉強する際、化合物の量が多い1,4に時間を多く割いていると他の類に手が回らなくなるというリスクがあります。故に少ない類を先に完璧にして、量が膨大な類は後回しにしました。あくまで私の戦略なので必ずしも同じにする必要は無いので適宜アレンジして下さい。

6.最後に

 勉強を行った感想としては、頑張った証が目に見える形で現れて嬉しいに尽きます。それに、いつどこで資格が活きてくるか分かりません。
 そして、これは資格勉強に限らず勉強という行為に言える事ですが能動的にやれば始めはだるくても徐々に楽しくなっていきます
 私は今回の勉強を経て危険物に関する標識があれば気になって、まじまじと見てみる様になりました。勉強した知識が実際に使われているのを見ると感動します。能動的に学ぶきっかけは本当に大切にすべきだと思います。

 最後に、私は薬学徒ですが専門分野となる薬学は勿論、昔から好きだった物理学や数学、そして高校生の頃に触れなかったものの興味のある世界史などに触れていけたらと思います。現在は物理屋の友人に質問しながら力学を勉強しています。読んでいる本は素晴らしい名著らしいので宣伝しておきます。

 最後まで読んで下さりありがとうございました。それではまたいつか。


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