教員の働き方改革~変形労働時間制は裁量労働制と何が違うの?~

教員の働きすぎの問題

今回は教員の働き方の改革について、ご紹介しようと思います。
今回のキーワードは給特法、裁量労働制、変形労働時間制です
最近、教員の働き方改革が言われていますが、一体どのくらい働いているのでしょうか。

2018年OECD加盟国に対して調査された、国際教員指導環境調査(TALIS)によると、中学校の教員の仕事時間が、週56.0時間、小学校の教員の仕事時間が、週54.4時間と加盟国最長の労働時間をたたき出しました。当然ながら、こちらは平均なので、月200時間残業している方や、逆に月の残業が20時間ぐらいの方もいるでしょう。しかも、授業の準備で残業しているという理由でもなさそうです。多い方は当然過労死のリスクも上がってきます。
どちらにせよ、週40時間1日8時間が労働基準法で定められてる法定労働時間ですので、残業代を支払う必要があります。残業代はもらっているのでしょうか?

給特法って何?

実は公立の教員の方は残業をしたらその分割増賃金で普通に残業代をもらっているわけではないのです。
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)という法律があります。この法律によると

1 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。
2 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
3 第一項の教職調整額の支給を受ける者の給与に関し、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める内容を条例で定めるものとする。

ざっくり言うと、給与の4%支給するので、残業代を支払いませんよと書いてあります。しかし、これじゃあ4%で働かせ放題ですよね。さすがにそんなめちゃくちゃなことはしません
超勤四項目といって残業命令できる分野が限られています。

生徒の実習関連の業務(校外学習など)
学校行事関連の業務(修学旅行など)
職員会議
災害時等の緊急でやむを得ない業務

この四項目を見ると確かに致し方ないよねとなりますが、問題はこれ以外に残業をしても自主的にしていると見なされていることです。
つまり、教員に大量の仕事が任されていたとします。この限定四項目とは関係ない仕事です。例えば校内のいじめ対策委員をやっていたとしましょう。その仕事で追われ、残業したとしても、自主的に残業をしたこととなります。それで4%分で足りているのでしょうか。仮に基本給を25万と仮定すると8000円もらえます。TALISの調査結果を見ると中学教員が平均週16時間残業をしているので、一か月で64時間とすると、残業中の時給が125円となります。(公務員なので、年を追うごとに上がっていくのでここまで酷くはなりませんが)
125円は流石に小学生のお小遣い並であまりにも酷いですね。さらに、仕事を押しつけていけば、働かせ放題ですめちゃくちゃですね。(自主的に残業してくれれば問題ないとされてしまいますからね)

となると、そもそも仕事量が多すぎるのでは?という疑問もしくは、しっかりと払うべき(4%を変えるべき)では?といった意見が上がってきます。

そこで、今回の裁量労働制やみなし残業制、実際に今後採用されることになりそうな、変形労働時間制が出てきます

裁量労働とみなし残業?

裁量労働とは、今多くの人は働いた時間に応じて賃金をもらっていますが、そうではなく、働いた時間を一定の時間働いてるとみなして、賃金を支払う働き方です。
つまり、8時間でこれらの仕事をやっておいてねとみなした場合、実際に9時間かかっても、7時間しかかからなくても支払われる賃金は同じ8時間分です。
さらに出勤、退勤時間の制限が基本的にありません。なぜなら8時間とみなしてるので前日に全部終わらせてしまうということもありうるからです。

もちろん全ての業種がこれをできるわけではなく、厚労省によって一定の職種に絞られています

これを見てみると教員は裁量労働制とは相性が悪いですね。出退勤の時間を自由にすることが難しいからです。
おそらくよくある間違いですが、みなし残業制のことを裁量労働制と勘違いして、言われていたのかもしれません。

みなし残業制は、月何時間残業するとみなして残業代を支給する制度です
よく求人で「月給〇〇円 みなし残業〇〇円含む」みたいな表記もありますが、それがこの制度です。

要するに最初から残業することが前提で固定の残業代が組まれているわけです
実際の残業が固定の残業代よりも少ない場合でも、固定で支払われ、多い場合は追加で残業代が支払われなければなりません。(追加で支払うことを踏み倒してる企業も多いようですが)

みなし残業制をみると、教員の給特法はこの制度に近いことがわかるでしょう。
しかし、大きな違いとして、みなし残業制は残業命令ができるのに対して、給特法では限定項目以外残業命令が出せないことです。

教員の場合は残業命令が出せないので仕事を投げ捨てて帰ることも法律上は可能です。(やれる人がいるかは知りませんが)

ともかくみなし残業制を採用した場合、現在の給特法の4%の上乗せでは全然足らない額になることは間違いないでしょう
残業代は本来割り増しで支払うことを義務付けることで、経営努力で改善することを望む意味合いがありますので、単純に残業代支払えば健康を無視して働かせていいというわけでもありませんが、払われていないよりはマシでしょう

変形労働時間制とは

それでは最後に変形労働時間制です。この制度は簡単に言うと、労働時間を1ヶ月や一年単位でみて考える制度です

例えば、一日12時間働いたとしたら4時間残業をしたことになりますよね。
では次の日は4時間しか働かないとしたら平均では8時間しか働いてないことになりますよね

なので変形労働時間制は、一年や1ヶ月単位で、労働時間を調節して、残業代を節約しようという制度ですね。特に繁忙期と閑散期がある仕事は、繁忙期にはたくさん働いてほしいが、閑散期は何もすることがないということもあると思います

教員に当てはめると夏休みはやることが少ないが日々の業務は多忙極めているわけなので、夏休みの労働時間で一年間の労働時間を調整しようと考えたわけですね。

もちろんですが、1ヶ月全部働かせて1ヶ月全部休みのようなめちゃくちゃなことはできません。ちゃんと制限があります(ここでは割愛しますが)
また、あくまで、一年を通して均しているだけですので、それを上回る労働をした場合残業代は発生します。

まとめ今後どうなるの?

さて、色々みてきましたがどうでしたでしょうか?
結局どうなるの?というのが本音でしょうか
今回、給特法に変形労働時間制ができるようにくっついただけです。つまり超勤4項目以外残業命令が出せないのは消えてません。
しかし、残業命令を出さずに、日々の労働時間を多少伸ばせる可能性が出てしまったといえます。

もちろんその分夏休みの労働時間が減るはずなのですが、夏休みも研修などでそれなりに忙しかったり、年休の消化を一気に行う人もいるでしょう。
そのため、実際に教員にとって助けになる改正案というよりは、現状無理がある給特法を残業代を支払わない方法で延命したというのが、現実なのではないでしょうか。

もし、実際に教員の働き方にメスを入れるなら、業務量の改善(人を増やす、やることを減らすことも含め)か残業代を支払うこと、またはその両方をするほかないはずです。
今回の改正案は、延命的な措置なのではないかと私は思うところです。

文部科学省 給特法改正案のHP

https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/1421396.htm



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