巷の数学の教科書・参考書の酷さについて
つい最近 Twitter (𝕏) 上で,次のような画像が流れてきた.
投稿主によると,チャートの一部らしい.表記の見た目からして青チャートかな?
(2024 年 3/30 ㈯ に追記:画像は新課程の青チャートのものでした.黄チャートにも同様の表記がありました.なお,旧課程のものにはこのような表記はありませんでした.)
まぁ酷い表記ですね.正しくは,左側は「$${ p }$$は($${ q }$$であるための)十分条件であって必要条件でない」,右側は「$${ p }$$は($${ q }$$であるための)必要条件であって十分条件でない」ですが,それぞれ後半が抜けているせいでとても語弊のある表記となっていて,学習者に優しくありません.
これに限らず,現在多くの数学の教科書や参考書の記述に不適切な説明が沢山あり,高校までの数学を学ぶ子供たちを取り巻く環境はあまり良くありません.
まぁ上に挙げた例はちゃんと勉強した学習者なら気づける誤りでしょうが,中にはそれなりにちゃんと勉強した学習者でも共倒れしてしまうであろう酷い誤りが沢山あります.
例えば,
① 同値を主張すべき場面で「$${ \therefore }$$」や「〜より」などを使って,同値であるように読めない,それでいて逆を確認しない答案を書く.
② ① とは反対に,同値記号を乱用してしまう(これは,教科書には少ないが,市販の参考書・問題集には多い誤り).
③ ただの不等式と変域を区別していない.それに付随して,関数$${ y = f(x) }$$の値域や最大値・ 最小値を求める際に,$${ x }$$の存在性を示していない.
④「小数」や「分数」を《数の属性》によって分類されるものと考えているような記述がある(例えば「有理数は整数と有限小数と循環小数に分類される」などの誤り).
⑤ 求まるはずのない階差数列が求まってしまう(特に教科書).
などです.
この辺の詳しい話は,﨑山さんの note や書籍を参考にすると良いと思います.
これらの数学的な誤りや語弊のある不適切な表現は,右も左も分からない初学者にとって非常に大きな障壁になり得ます.
巷の教科書や問題集の解答を理解できる方が《オカシイ》と言える場面が多々あるのです.
また,僕が「酷いな」と感じるのは「数学的な誤りがあるから」だけではありません.
例えば高校数学はⅠ・A・Ⅱ・B・Ⅲ・Cと内容が分断されてしまっています.
これは,受験で数学を使わない層や数学を学ぶモチベーションが低い人達にとっては「学年が上がるごとに広く浅く話題に触れることで,毎年各話題に触れて高校数学全体の定着を図る」というメリットもあるのですが,受験で数学を使う人や意欲的に数学を学ぼうとしている人にとってはハッキリ言ってデメリットの方が大きいと思います.
そして,この障害を取り払えるような,受験に向けて高校数学を効率的に学べるような参考書がこの世に存在しません.
要は「コスパ」を意識した参考書が無い(あっても,やはり数学的な誤りが盛り沢山)のです.
また,数列における実験・書き出しの軽視(不要な公式に過度に依存した解答の掲載)や,三角関数および対数関数における定義の軽視,ベクトルにおける斜交座標的視点の軽視など,高校数学をシンプルに眺めることができる見方・考え方をあまり扱っていない点も非常に良くないと感じます.
数学的な誤りが無く,効率的に高校数学の基礎・基本を学べる本を書きたいなぁ ⋯ と思う今日この頃です ⋯ .
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