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バトルシャーク第1話

それは、日本のどこかの海岸。
都心からアクセス可能で、スキューバダイビングができるスポット…
あくまで架空の、どこかの海岸としておこう。

その海岸から、上がってくる人影があった。
マスクを取ると、腕時計型携帯電話ダイバー仕様に連絡が。

「交替の時間だぞ」。

海から上がったのは海道つよしという青年で、
交替を告げたのは、つよしの兄・海道たけし。
ふたりは、海岸近くのスポーツクラブ兼ショップ『マリン倶楽部HOOK』でアルバイトをしているのだ。

つよしが『マリン倶楽部HOOK』に入ると、
交替で出ていくたけし。
そして、中には一人女性がいた。名は杉田さん。
この三人がここでアルバイト店員をしているのである。

『マリン倶楽部HOOK』は、オーナーが趣味でやっているような店で、
その日も、客は少なく、
何の変哲もない昼下がりになるはずだった。

だが、宇宙では…

地球を狙っているある組織が!
今まさに、地球に向かって侵攻を開始していたのである!

地球を眺めながら、ワニ型の鎧を着た女性が言う。
バナナワニ女王、「おいしそうな星。宇宙ゼニーでいくらもうかるかしら?皆の者!」

たちまち異形の怪人たちが集合する。

女王「キラ、あの星で売れそうなものは?」
話しかけられたのは、オルカの下半身を持つ人魚だ。

キラ(何かの機械を操作して)「一番繁殖している動物は人間です。幅広い環境に分布していて、知能も高く、労働力として売れそうです。」
女王「よし!では、まず人間を売りまくるわよ!スローガン復唱!『売れるものなら根こそぎ分捕れ』!」

復唱するのは、
カブトガニの怪人ガニー博士、
筋肉質のアザラシ怪人タマサップ、
スズキの怪人スズキ、
そして戦闘員オキアミだ。

総員『売れるものなら根こそぎ分捕れ!』

女王「ゼニーのためなら星も滅ぼせ!」
オキアミ「あみあみ~」

彼らの名は、「宇宙商人ギルド」!
実は、「宇宙商人ギルド」と言う名の会社組織なのである。

ならば何故女王がいるのか?

本人が
「わらわのことは女王と呼べ!」
と、言ったからである。

バナナワニ宇宙商人ギルド地球支社社長、は、故郷の星では本当に女王である。
だが、王族は残っているが王政は廃止されている星なのだ。
だから、彼女は一般人として普通に働いている。
しかし、彼女は故郷での身分が「女王」で、本人も女王様キャラなので、
新入社員のころから「バナナワニ女王」と呼ばれ、
それが気に入っているので、愛称として「バナナワニ女王」と呼ばせているのである。

同様に、ガニー博士も、ガニー地球支社研究所所長、なのだが、
彼の場合、商品を開発するのではなく、商品を略奪するための怪人を開発しているので、
ガニー地球支社戦略怪人戦闘員開発研究所所長……
本人は、故郷の星で博士号取っているし……と、
バナナワニ女王と同様の事情で「ガニー博士」と呼ばれている。

オルカ人魚キラ、は、キラ地球支社社長秘書、
アザラシ怪人タマサップは、地球支社営業部長兼地球支社現場総監督部長、
スズキ怪人スズキは、現地作業員で正社員、
オキアミたちは、現地作業員だが派遣社員とアルバイトである。
それゆえオキアミたちは、戦闘状態に入った場合、
怪人戦闘員が到着するまで戦うふりをして、
怪人が戦い始めたら退却していいことになっている。
その場に残る義務があるのは正社員のスズキだけ。

しかし、いずれも、ギルド側から見れば会社構成員であろうが、
略奪される地球側にとっては侵略者に他ならない。
会社組織の肩書で呼ぶと、その邪悪さが薄れてしまうので、
本書では「悪の組織ギルド」、と呼ぶこととする。
キラ・タマサップは敬称略、
現地作業員オキアミは、戦闘員オキアミ、である。
やっていることは戦隊ヒーローシリーズの戦闘員とほぼ同じだからである。

さて、彼らは物質転送装置で一瞬にして地上に降り立つことができるのだが……

そもそも、戦隊ヒーローシリーズの敵組織は、何故日本を狙うのか?

悪の組織ギルドの場合、
バナナワニ女王たちは、事前の調査で、
人間は陸地に生息していることを知っていた。
だが、ギルド側は、ワニ・オルカ・カブトガニ・アザラシ・スズキ・オキアミ、と、
「水辺のいきもの・海のいきもの」とでも言いたいようなメンバー、
バナナワニ女王も、入り江に棲むワニが進化した種族なので、海になじみが深く、
大陸より、海に囲まれて人口密度の高い「日本」をターゲットとして選んでしまったのである。

そして、首都東京ではなく、近県の海岸付近を狙ったのは、
その日が休日で、観光客が海岸に多かったせいであり、
そこが「マリン倶楽部HOOK」の近くだったのは、
全くの偶然である!

地上に突然現れる宇宙ギルドの怪人たちと戦闘員オキアミ。
オキアミたちが拡声器のようなものを構えて「あみあみ~」と進んでいくと、
何故か人々がバタバタと倒れていく。

それは、女王が
「売り物には傷をつけるな!」
と、命令したからだ。
そして、
「労働力にならない人間は無視せよ!」
とも、命令したので、
どういう仕組みか、人々は、頑健そうな人ばかり倒れる。
子供・老人などは対象外であるらしい。

かわいそうなのは子供たち。
ついさっきまで親子で楽しく海水浴!水族館!と、はしゃいでいたのに
「おとうさん!」
「おかあさーん!!」
倒れた父母に取りすがって大泣きである。
その騒ぎは「マリン倶楽部HOOK」にも聞こえてきた……

様子を見に出てきた海道つよしと杉田さん、
そして、海から出てきた海道たけしも、異変に気づいて駆けつける。

女王「よし!倒れた人間を回収せよ!」
タマサップ「きゅきゅー!」
タマサップの指示で、
スズキと戦闘員オキアミたちが、子供を押しのけながら、倒れた人々を運ぼうと手をかけた。

この光景を目撃した海道つよしは、
「やめろ!」
と、叫んで、異形の集団「悪の組織ギルド」の中に突進した!
あとを追うたけしと杉田。

つよし「お前たちは誰だ!その人たちをどうするつもりだ!」
女王「名乗る義理もない!お前たちはこの地球にいる動物にすぎないわ!」
タマサップ「我々ギルドが、この地球の人間を労働力として売って、大儲けするのだ!」
キラ「タマサップ、女王様が『言う必要はない』って言ったじゃない!」
タマサップ「え?きゅきゅきゅ?」
つよし「なんてひどいことを……、そんなことをする権利はお前たちにはない!」
女王「あら、じゃ、人間には何の権利があるの?」
ガニー「人間は、地球の動植物鉱物資源に至るまで、地球の他の生命のことはお構いなしに使っていますからな。」
キラ「自分のために自分の星を略奪するって、最低。」
ガニー「同じことでも、自分の身に降りかかるといやだと。勝手なものですな。」

飛び掛ろうとするつよしを、片手で制すたけし。
「人間はおろかだ。だが、この星の命と共に生きようとしはじめているんだ。ふるさとの星だから……貴様らとは違う!」

その時、スズキが
「あのう……、この人間たち、丈夫そうなのになぜ倒れないんでしょうか?」

ガニー「!!!特異体質か?」
キラ「ギルドのマニュアルでは、『この場合、真っ先に処分すべき』、と、あります!女王様!」
女王「この星の人間程度に戦略怪人戦闘員は必要ない、そうであったな、ガニー。」
ガニー「スズキとオキアミで充分です。」
スズキ、内心(ええええ~?)と思いながらも
「よーし、やるぞー!取り囲んでやってしまおう!」

たけし・つよし・杉田は、オキアミたちに囲まれた!
だが、三人、意外に強い!
多勢に無勢ながらも、オキアミたちをなんとか退ける!

女王「ええい、じれったい!タマサップ、やっておしまい!」
タマサップ「きゅきゅ!」
アザラシ怪人タマサップはさすがに強かった。
殴られ、投げ飛ばされ、もはや絶体絶命かと思われた瞬間!

突然、三人は海洋戦隊バトルシャークに変身!

海道つよしはバトルレッド、アカシュモクザメのヒーローだ!
海道たけしはアオザメのバトルブルー、
杉田はレモンザメのバトルイエローに!

三人は一瞬戸惑うが、ギルドを倒すのが先決だ!
さっきまで、三人がかりでもかなわなかったタマサップを、
バトルレッドが、

女王「こしゃくな……一旦退却じゃ!」


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