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死の種

無限の空間にうごめくものがあった。

そこに光がやってきた。

光は言った。
「お前に”命”を与えよう。
それは、すべての喜び、すべての輝くものであり、
お前の中で育ち、老い、枯れるであろう。」

次に、薄闇がやってきた。

灰色の薄闇は言った。
「お前に”性”を与えよう。
それは次の命の器を用意するためのものだ。
多くのものは、肉体の器に合わせて育ち、
開花し、枯れるであろう。
しかし、肉体の器と合わぬ花が咲いたとき、
お前は苦しむことになるだろう。」

最後に、漆黒がやってきた。

底のない闇は言った。
「お前に”死”を与えよう。
それは、”命”が老いるとともに育ち、
命が枯れたとき初めて花を咲かせる。
花は”夢”とよばれ、あるいは”霊”とよばれ、
この空間を漂いながら、やがて枯れるであろう。
しかし、命がまだ若いとき、この花が育つと、
お前は地獄の苦しみを味わうであろう。
”死”のみを取り除こうとしたとき、
”命”もまた枯れるであろう。
だが、その苦しみは、
”命”の花をより美しく輝かせることにもなろう。」

そして、三つのものは言った。

「これは祝福でも呪いでもない。
お前の人生そのものである。
生きることは”花”であり、それ以上でも以下でもない。
ただし、その”花”はお前だけのもので、
群れ咲く花の一つにすぎないように見えても、
同じ輝きは二つとない。」

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