見出し画像

漱石忌恋する人は月を見る

前世、私は男だった。
現世、私は女である。

別に前世の記憶があるわけではない。
現世のツレが、愛情細やかでしかも深く、まあ、要するに嫉妬深い。
家事全般のスキルが高いし、私との縁がかなり深そうなので、
(この人は前世も私と夫婦だった気がする。焼きもちを焼くのが自分でも苦しくて男に生まれ変わったんだな)と、推測している。

つまり現世、私たちは男女入れ替わり夫婦だが、あれれ?結構大変だぞ?

私は浮気に興味ない。
しかしツレはあらゆるオスに焼きもちを焼く。犬でも。男女入れ替わってもダメかー。

さて、来世はどうしたものか。

悩んだ末、本人に聞いてみた。
「生まれ変わったら、男?女?」
「女。」
「えー、私も女だったらどうする?」
「いいよ。いいじゃんPー(自主規制)」

前世は一夫多妻だった。
現世は一夫一婦。
来世は同性婚があるかもしれない。

他人と連れ合う未来が考えられない。
それほどツレとはシンクロする。
私が映画で泣いていると隣で泣いているのがツレ。

シンパシー。

思うにアレだ。
恋は相手を見つめ愛は同じものを見つめるってやつだ。誰が元かと思ったらサン・ディグジュペリだった。

愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである。

Love does not consist in gazing at each other, but in looking together in the same direction.

同じものを見てシンクロしている夫婦。
映画だったり景色だったり月だったり。
「愛している」を「月が綺麗ですね」にしたのは夏目漱石。

夏目漱石が英語教師をしていたとき、生徒が " I love you " の一文を「我君を愛す」と訳したのを聞き、「日本人はそんなことを言わない。 月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と言ったとされる逸話から。 信憑性は怪しい。

12月9日は夏目漱石の命日である。
死んだ日を偲ばれるのが文学者。
生誕祭を祝われるのは推し。
聖誕祭を祝われるのはイエス様。
つまりイエス様は聖夜を祝う万人の推し。

クリスマスイルミネーションの中、坊主が走る師走に、恋人を思って月を見よう。
いつか二人並んで月を見るとき恋は愛に変わる。

アドベントカレンダー企画参加しています!

明日は石嶋ユウさま!

小説『クリスマスに星々を』
だそうです!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?