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大男身を縮めても出る背中~父のこと~

それは私が若く美しかった(就職)氷河期の少し前。

会社を辞めた後体調が悪くて、ある日救急車に運ばれて入院したんだが。
女性六人の大部屋で、二十代が三人いる部屋のベッドだった。
珍しい。
内科病棟はお年寄りが多かったから。

そこに毎日入り浸る中年の男性患者がいて、
なんだかんだとひとしきりしゃべる。
本人は、面白い話をしているつもり。

ぶっちゃけ、すこぶる女性陣の評判が悪かった。なんで女性部屋にいきなり入るんだ図々しい、と。

評価が高かったのは、うちの父。
私は、出入り口に一番近いベッドだったのだけれど、
身長180cmの父は、下を向いて背中を丸め、
背中の方からそーっと入ってきて、さっとカーテンに隠れて見舞いに来る。

あんな大きな人が小さくなろうとしても無理よねぇ可笑しいわぁ。

父に、笑われてるよ、と、告げると、

「ご婦人がみんな寝巻姿なんだぞ!目のやり場に困る!」

昭和一桁生まれの男であった。

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