日本は貧しくなった
「お道具箱をください」
掲示板にあった書き込み。
そんなに高価なものではないので、かえって頭にひっかかった。
そして偶然だが、私の家には未使用のお道具箱があった。男の子は何でも壊すから予備だ。たまたまスペアが残っていた。
未使用だがBサイズ。
今の小学校はプリントはAサイズと聞く。
連絡して、その旨伝えたらそれでいいと。
渡すためにお道具箱を出してながめてつくづくと考えた。
箱だよなぁ。
箱って中にものを入れるもんだよなぁ。
持ち主になる相手は多分小学一年生だよなぁ。
「中にこまごましたものを入れていいですか?」
承諾されたし、何でも喜ぶ子だと言われた。
最初は息子が遊ばなくなったミニカーを考えた。文房具の残りはない。
だけど、多分新入学だよなぁ。
お祝いでもいいんじゃないか?
子どもが遊ばなかった新品のミニカー。
我ながら物持ちが良い。車のディーラーのおまけだ。その頃、息子はもうミニカー離れしていた。
プレミアつくものじゃなさそうだし、いいよね。
子どもがとても喜んだと知らせが来た。自分もこんな取り引きをできるようになりたい、と。
多分できる。
しかし、だ。
それは置いといて、だ。
民間の、個人間の、取り引き。
助け合いは美しい。
でも。
お道具箱が買えたらこんなことは起きていない。
貧者が貧者と助け合う日本。
これでいいのかと私は思う。
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