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【P-14】11/11(土)開催の文学フリマ東京37にて新刊『BNNCLB3』を頒布いたします!!!!!!

 お世話になっております。バナナ倶楽部のnszwと申します。

 わたしたちバナナ倶楽部は、いよいよ今週末に迫った文学フリマ東京37に出展し、新刊『BNNCLB3』を頒布いたします。ブースは【P-14】となります。第一展示場の入り口からお入りいただき、右折、そののち左折、そのまましばらく歩いていただくと左手に見えてくる位置かと思います。もしかしたら近くに柱があるかもしれません。
 文フリ公式サイトのカタログ情報も更新しましたので、ぜひご覧ください。


『BNNCLB3』について

 今回販売する『BNNCLB3』は、バナナにまつわる掌編集です。

『BNNCLB3』表紙

 わたしたちの「バナナ倶楽部」という名前には特に意味はないのですが、それでもやはり「バナナ」という言葉を冠し、しかもあろうことか「東京でバナナの研究をしています」なんてふうに自己紹介文に書いている以上、バナナからは逃れられない。わたしたちはもっと真剣にバナナに向き合う必要がある。そんなことを考えての「バナナ」特集でございます。
 しかし書き始めてみれば、バナナほど広がりがあり、喜劇性があり、悲劇性も併せ持ち、何かを書き始めるとっかかりとしてふさわしい単語は他にないのではないかと思えるほどに、様々な小説が浮かんできそうな気配がありました。もっと早く書き始めていればよかったと強く思いながら書いた、いくつかの短い小説が『BNNCLB3』には掲載されています。

『BNNCLB3』目次

特集「バナナ」(著:nszw)
・二〇二三年十月五日の日記(序文に代えて)
・バナナのおいしさについての簡単な考察
・東京の引っ越し事情
・校庭がバナナ園になっちゃった!
・校庭がバナナ園になっちゃった!・その後
・ブルーバナナ
・自由工作
逆上がりを盛り上げろ!(著:nszw)
二〇二三年夏の日記 自薦ベストセレクション(著:nszw)

 ちなみに「逆上がりを盛り上げろ!」という掌編は今回の文学フリマとはまったく関係なく以前書いたもので、ページが余りそうだったために掲載しました。メンバーのnszwのブログでも読むことができます。

 「校庭がバナナ園になっちゃった!」という短編の冒頭も以下に公開いたします。


【試し読み】校庭がバナナ園になっちゃった!

 バナナを食べなさいと世間もお母さんもいうけれど、朝起きてすぐに丸一本なんて食べられないよ! でもそんなこといって残そうもんならお母さんは二度と『ゆうやけバナナくん』を見せてくれないだろう。『ゆうやけバナナくん』というのは僕とユフスケが好きなアニメで、主人公のバナナくんとその友だちたちとの日常をオフビートなタッチで描いた名作なのだけれど、バナナくんが常に話の中心というわけではなくて、彼はあくまで語り手のひとりに過ぎず、真の主人公は彼らが住むゆうやけタウンという町そのものなんじゃないかってことが、話を見進めていくうちに浮かび上がってくる様がすごいと僕は思っているんだ。ユフスケはまだ小さいからそんなことまでは考えてないかもしれないな。お母さんもしょせん子どもの見るアニメだっていう程度にしか考えていないはずだから、主人公の(ように見える)バナナくんがバナナだってことをいいことに、あんたバナナを残すんだったら『ゆうやけバナナくん』はもう見るんじゃないよ、なんてふうにいいがかりをつけてくるに決まっている。だから僕は、朝食のバナナをぜったいに残すわけにはいかない。でも一本なんてぜったいに食べきれないんだ。
 だからその日の朝、僕はちょっと風邪気味みたいなふりでテーブルの上のティッシュ箱を自分のほうにちょっと引き寄せてから、バナナをいつも以上にきれいに剥いて食べ始め、三分の二くらい食べて、残りの身が皮から取れるようになったところで芸も細かく鼻をひくつかせてからくしゃみをし、ティッシュを二枚取って残りのバナナを包んでポケットに入れて、皮だけをシンクの三角コーナーに捨てた。くしゃみをすることでむしろ注目を集める心配があったけど、僕は前の日の夜にベッドのなかで一連の動作を繰り返し練習していて本番もばっちりできる自信があったし、それにお父さんはいつも朝ドラを見て目をうるませているし、お母さんはアイパッドばっかり見ているしで、唯一僕を見ていそうなのはユフスケだったけど、たとえ僕がバナナをポケットにしまうのを目撃したとしてもそれをお母さんにはぜったいにいわないのがユフスケなんだ。それで実際に本番を迎えてどうなったかというと、僕が残り三分の一くらいになったバナナをポケットに入れたとき、想定通りお父さんもお母さんもこちらを見ていなくて、これまた想定通りユフスケだけはくしゃみに反応して僕のほうを見ていたけれど、そのまま僕の真似をしてまだ半分以上残っていたバナナをぜんぶティッシュでくるんでポケットに入れちゃった。それでユフスケのズボンのポケットはおかしいくらい膨らんだけど、お父さんもお母さんもやっぱり気づかないんだな。ふたりにとっては僕たちがバナナを食べたかどうかではなくて、テーブルに置いたバナナがなくなったかどうかが重要なんだ。そんなふうにいうけれど、僕だって子育てのたいへんさは多少なりともわかっているつもりさ。
 でも、僕もユフスケもポケットに入れたバナナをそのあとどうするかっていうことには頭が回っていなかった。ユフスケは僕の真似をしただけだから、本来であれば僕が考えておくべきだったけど、やはり僕もそこは子どもで、まずはバナナを食べきらずに済む方法を考えることで頭がいっぱいだったんだな。ではどうすればいいかというと、もちろん家のゴミ箱なんかに捨てるとお母さんにばれる可能性があるし、だいたいゴミ箱に捨てるなんてなんだかいかにも食べ物を粗末にするっていう感じがして胸がきゅっとなるからそれはやめて、どこかに埋めるなりしようということにした。だから僕とユフスケはとりあえずポケットを膨らませたまま家を出て、道路脇で埋められそうな場所を探したけれど、いざ探してみるとそんな都合のいい場所って意外にない。まさかご近所さんや知らないひとん家の垣根のすき間に勝手に埋めるわけにもいかないし、通学路に一箇所だけある空き地は監視カメラみたいなので見張られているみたいで、どこに立ってもぜったいにそのカメラの視界に入ってしまう気がして怖くて埋められなかった。『ゆうやけバナナくん』のなかで前に一度、町の監視カメラにまつわる怖い回があって、それ以来僕は監視カメラってやつを必要以上に警戒しているんだ。けっきょくどこにも埋められないまま通学路を歩き続けて、ポケットに手を突っ込んでいじったりするものだからバナナをつつんでいたティッシュもすっかりぐじゅぐじゅになってしまい、手からも甘い匂いを発しながら僕たちは学校に着いた。ここでユフスケが、兄ちゃん、校庭は、といってくれていなかったら、きっと僕たちはその日一日中ポケットのなかのバナナをいじり続けて、崩れきったバナナがズボンに染み込んでバナナズボンになってしまっていたことだろう。もしそんなものがあるとしたらの話だけど。
(続く)


 それでは、当日はぜひお気軽にいらっしゃいませ!

 以上でございます。

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