編集という仕事について

2020年は何か新しいことを始めよう、ということで、noteも本格始動を。せっかくマガジンを作ってみたので、今回はまず仕事について軽く触れてみたい。

書籍の編集者、というと、新卒から出版社に入社したり編集プロダクションに所属したりという流れが一般的なのかなと思うが、私はちょっと回り道をしてこの仕事についたので、この業界や仕事の仕方のスタンダードについてはまだまだよくわかっていないことも多い。それでも2017年の1月に初めての出版社に入り、手探りながら気づけば3年が経っていて、そろそろ新人というくくりでもなくなってきたかしら(それは嬉しい、誇らしいというのではなく、一人前にしっかりしていないといかんよなぁ、今の自分は大丈夫かなぁという焦りや自信のなさがほとんど)と、ちくいち振り返ってしまう今日この頃である。

いろんな職を転々としてきて、実は一つの職種で3年目に入るというのは今の書籍編集が初めてだ。30歳にもなって、と少し恥ずかしい気持ちもあるが、個人的にはこれまで通ってきた道がすべて今の仕事につながっていて、自分にとってはベストなルートでこの仕事に就けたと思っている(回り道についてはまた追って話していきたい)。

編集者になったばかりのころは、「3年も続けてみれば、ある程度何かしら掴めてくるんだろうな」と思っていた。実際に3年経ってみると、「わかってきたように思える部分もあれば、いまだに初めて知ることもたくさんある。見えてきたこともそこそこにある気はするけれど、それ以上にまだまだ見えていなく、学ばなくてはいけないことがたくさんありそうだ。『編集とはこうだ!』と自分なりにまとめるなんて、まだまだおこがましい感じ」……なんて曖昧! でもこれが正直なところである。

冷静になって考えてみれば、今世の中に出ている本は何千何万とあり、毎年さらに新しいものが出て、大枠のジャンルはあったとしても詳細のテーマはとてつもなく枝分かれしているのだからそりゃそうだと思う。実際この3年で20冊弱くらい作ってきたけど、それもいろんなジャンルをバラバラと作ってきたから毎回初めてみたいなもんで、まだまだ「自分はこのジャンルが強い」とか「こういうやり方が最適」とかは確立できず、試行錯誤の真っ最中だ。加えて自己肯定感も低めだし割とアナログなタチなので、本当なら今の世の中SNSを使いこなして発信者としてバンバン力をつける編集者になるのがよいのだろうけど、そっち側には行けずにいる。

それでも、編集の仕事はとても楽しい。

人がいて、悩みや課題があって、その潜在的なニーズを企画に仕立て、著者は誰で、どのような構成でどのような人員、計画立てをして、誰にどんなふうに届けるべく、本という形に仕上げてプロデュースしていくのか。ワンフレーズのキーワードや1枚の紙から大きなものを組み立てていく作業は本当にワクワクする。世の中にカリスマ編集者は数多くいて、自分はその中には入れていないとしても、書籍編集の仕事は天職であり向いていると心から思う。そしてそんな仕事に就けたことが最高に幸せだ。

「1冊の本があったとして、その内容を一番吸収し、学ぶことができるのは編集者」「編集者は、なんにもできないけど、なんでもできる」

こんなふうな言葉を聞くことがあるけれど、本当にそうだと思う。打合せや原稿の編集を通して誰よりも著者のメッセージを学ぶことができるし、自分自身は何もできなくても、どんな企画でも立てられる。いわばそれぞれの著者が生きてきた色んな人生を最も近しい位置で追体験できるような立場にも似ていて、これは幼いころにあこがれた女優や俳優が、たくさんの役の人生を生きることにも等しいかもしれない。それを短いスパンでバンバンやるから、なかなかアドレナリンがでる。なんというか、すごく得な仕事だよな、といつも思うのだ。毎回毎回新鮮だし、新しい学びや発見があるし、きっとこの先何冊作ってもそのたびに新たな視点を得られるのだと思う。そのうえ出来上がったものが誰かの人生にほんのちょっとの気づきや助けを与えられたりしたら、こんなに幸せなことはない。

……まだまだ編集者の入り口でもがいている若造ながら、みたいな気持ちでありながら思いのほか語ってしまった。ベテランの方々がこれを見たらどう思うだろうかみたいな気持ちもあるけれど、ひとまず最初はこのくらいで、これからも引き続き、作ったものや学んだことについてそのときどきの想いを書き溜めていきたい。それではまた、どうぞよしなに。


七海

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