宝箱を置く人4

4:ヤンデレ系★腐魔女

いやー気付けば春が通り過ぎてすっかり梅雨入りだね。関東もジメジメでベタベタでテカテカになってるよ、もうすっかり6月だ。自分は北海道出身だから梅雨というものを経験した事が無くてね、梅雨を生まれて初めて経験したのはいつだっけかな...あれは、そう。まだ自分が十代の頃、愛知県に居た頃だわ。

そこでの体験は今でもたまに思い出すよ、生まれて初めてゴキブリを見てね、生まれて初めて寮という所に住んでだね、寮の中では殴り合いの喧嘩をする奴ら、大浴場では墨の入った奴らがウジャウジャ、大便をトイレにぶち撒ける奴、階段にピーナッツが落ちていてそれを辿って登っていくと、ピーナッツ缶を抱きしめて幸せそうに眠っている酔っ払い。蒸発しちまう奴、その愛知にいたのは1年半ぐらいだったけど、その期間で300万近く貯めた。

友達がそこで正社員になったりする中、ある夢を追う為にそこでの正社員の誘いを蹴って上京し、その貯金を全て使い果たした。友達や先輩達と別れてたった一人で首都に「いざ出陣じゃーッ!」ってな具合に挑みに行く時のドキドキ感とワクワク感。親の脛も齧らずに自分で稼いで自分で学校に通い、自分で住む場所決めてバイトしながら家賃を払い、それが実を結ぶのならまだしも、旅の始まりの希望が軽い絶望と倦怠感に変わり、挫折を味わい、仲違いや、別れを経験して。気がつけば俺はまだここ首都で暮らしている。そして俺は地元に戻る気は無い。何故だろう?今でも不思議に思う、地元の景気もあるだろうけど、一番の理由は自分と同じ境遇の人間を何人も知っているからだろう。特にここ東京では数え切れないぐらい出会ってきた。現実は厳しく、実を結ばない人間が殆ど。それでも俺はここが堪らなく好きだ。皆若い。何かを追っている人間は若い、年齢は関係無く。

この長いまえがき(しかも物語と関係のない)を書き終えて思った事がある。伝えたいメッセージはこんな大した事のない、ありきたりな苦労話や自分語りじゃねぇ!宝箱を置く人の続きだよバカ野郎!ダンカンバカ野郎!ダンカンのバカ野郎!コマネチ!


…ここはツンデレ岬

花が咲き連なり、遠くから見るとピンク色に見えるその岬は、可愛らしい見た目とは裏腹にいくつもの手強い化け物が生息しており、地元の人間ほど近寄らない。そこにタケやんと、タケやんより身長が高く魔女の格好をした華奢な女が歩いてきた。タケやんはいつものように、ちさとに言われた言葉にめげずに、宝箱を抱えている。その岬の先端に宝箱を置く為

女の手首にはリストカットの痕があり、瞳をキョロキョロと動かしどこか挙動不審に見える。杖はいかにもオタクっぽいデザインでスカートは無数の目が描かれており、ヤンデレ系である。ヤンデレ系★腐魔女である。女の名は呪子(のろこ)ウィンストン。長くて忘れそうなので腐魔女と呼ぼう。腐魔女はサバサバした口調が特徴だ、心のこもっていない言葉を次々と吐き出しオタク用語もふんだんに使用してくる

『ちょwwwwwwwなぜそうなったwなぜそうなったwwwまぁーある意味メシウマだけどwww銀の盾手に入ったしwww』

タケやんは歩きながら今までの冒険を辿々しく話していた。用心棒の腐魔女はそれを聞く度に爆笑している。その間も巨大な化け物が次々とタケやん達を襲ってきたが、腐魔女の魔法によってタケやん達は無傷であった

腐魔女の魔法はちさととは少し違い、基本は相手の動きを封じ込める魔法で、杖を振りかざすとお経がどこからか聞こえてきて、化け物の全身に気味の悪い経文が浮かび上がる。すると痙攣を起こしてその場から動かなくなるというものだ

タケやんは腐魔女と会話をしていると、傷口が癒されていく様な感じがしていた

そして大変な事も知った、ポリコーとの冒険で手に入れた銀の盾がとんでもない価値の物であるというのだ。黒人の戦士と白人の戦士が争っている理由の一つにあるのが、この盾ともう一つの剣を奪い合っているからで、元々の持ち主は黒人なので両方返せという黒人の主張と、王室側が全てを管理し暴走が起きない様にするべきだという白人の主張がぶつかり合っている

そんなややこしい物をタケやんが保持しているのだから、腐魔女は驚きを通り越し爆笑する訳だ

『とりあえずもちつけwwwマジレスするともう手遅れかもwwwwwwwwwだってdark knightに顔割れちゃってるしwwwくっそワロスwwwえwwてかオイラも今ガチでヤバ目な状況じゃねwww銀の盾を奪った人物の用心棒とかヤバスwww完全にオワタwwwwwwwwwww』

タケやんは段々と不安になってきた。もうこのツンデレ岬に銀の盾を置いてしまおうかと腐魔女に提案したが、腐魔女は更に笑い出した

『やめとけwそれもっとヤバくなっからww万が一白人側が手に入れてしまったらもう全面戦争回避不能www一番良いのはdark knightに返す事でFAだろwwwつーかその話が釣りである事を願うわwwwwwwオイラ貰い損じゃねwwwwww orz』

なんだかんだでタケやん達は岬の先端まで辿り着いた

波が打ち寄せる音とカモメの鳴き声が聞こえる。風はうす塩味。そこからは濃い青色の海が見渡せる。それと同等なくらいタケやんの顔色も真っ青である。早く銀の盾を返さなければと焦っている様だ、タケやんは心ここに在らずで革のリュックから薬草とランタンを取り出し、それを宝箱に入れて蓋を閉じた。腐魔女はそれを見てまた笑い出した

『謎wwwそれだけかww誰得wwwwwランタンとかオワコンだろwwwwwwまぁいいわww早く帰ろうズwwww』

無事ツンデレ岬の入り口まで戻ってきたタケやんと腐魔女。腐魔女からの提案でとりあえず来週また会う事になった。今度はキモカワ海岸で。その時に銀の盾も必ず持ってくる事と、この話は誰にもしてはいけない事を諄くタケやんに説明した。タケやんは親身になって相談に乗ってくれる腐魔女に恋心を抱いていた。タケやん達は別れた

『それじゃ色々と乙wwwwwノシ』


タケやんは恋心を手に入れた。

つづく

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