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不幸な境遇が生んだ悪女「白夜行」雪穂

東野圭吾の傑作の一つ白夜行は不幸な境遇で育ってしまった少年と少女が手を取り合い、手段を択ばずに強く逞しく人生を生き抜くお話。やっている事はえげつないし、犯罪だし、二人と関わったらほぼ犯罪に巻き込まれるから絶対に知り合いになりたくない。

しかし、その儚さや陰がある雰囲気がとても魅力的でなぜか惹かれてしまう。昭和から平成初期を舞台にした物語なのでノスタルジックさもあり、読み進めていくうちにいつの間にか二人の人生の虜になっている。
切なく異常な現実の中で華麗に生きていく悪女雪穂の魅力を語りたいと思います。

雪穂は少女の頃から大人を圧倒させる程の気品と聡明さ、持ち前の外見の美しさがある。大阪のおっさん刑事が普段だったら「お嬢ちゃん」と呼ぶところ、この少女には似つかわしくないとためらい「お嬢さん」と呼びかけるほどには気品がある。

少女の頃の雪穂は母と二人で暮らしていて裕福とはいえない。着ている服もボロなのに何故か高級な猫を思わせる。よく本を読む少女だけど、本を読んでいるだけで気品さや聡明さは出ないと思うし、もちろん外見の美しさだけでもない。

雪穂は小学生の時にすでに自身の境遇を理解している。しかし悲観的ではなく、恐ろしいほどに緻密で強引な手口で自身の境遇を変えていく。また、小学生ながらに振る舞い方を身に着けていて、自己ブランディングが完成している。

不幸な境遇を強引に変えていく力強さとメンタルの強さ、自頭の良さと自身の魅力を最大限に使って、欲しいものは絶対に手に入れる。手に入れるためにもう一人の主人公、亮司と共に犯罪に手を染めていく。

雪穂にはなりたい自分像が明確にありその為に努力することができる。
教養のために茶道や華道、着付けなどを習い、英会話を学び、入りたい大学の学部の為に勉強をする。雪穂が普通の女であれば行動力があり努力家でとても素敵な女性だと思う。
明るく聡明な女性像とは似ても似つかない犯罪が雪穂には常に付きまとう。そのほの暗さも不気味な魅力の一つなのかもしれない。

環境の為に犯罪を犯し、邪魔者は排除する。
中学生の頃からその異常性が顕著になり、大人になるとそれが当たり前になる。

結婚、離婚、再婚、ブティックの経営。雪穂が何かを望む度に犯罪がおきる。人生をうまく運ぶための犯罪だ。
いくら邪魔者を排除したとしても雪穂の魅力や努力、経営能力がなければ全てうまくいかないと思う。

自身の魅力を理解し最大限に生かし、より良い生活、やりたいことの為には努力は惜しまない。そんな強く逞しい雪穂の人生は見事なものだと思う。

歪んだ環境から生まれてしまった悪女雪穂は傍から見るととても華やかで魅力的だけど、雪穂が本当に望んだものは手に入らなかったのかな、とも思う。

雪穂のメンタルの強さや聡明さに加え、行動力や努力、人当たりの良さ、美貌があれば犯罪を重ねなくても、普通に経営者として成功をしていただろうな。

亮司の人生もえげつないんだけど、白夜行の表舞台で明るく照らされている雪穂について書いてみました。




雪穂は魅力的だけど絶対に関わりたくない人間第一位だよ!!
雪穂に反抗的な態度を取ったり、嫉妬されたり、邪魔だと思われたら、事件に巻き込まれてしまうよ!



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