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メイケイエールちゃんの話

考えとか問題点とかタスクとか、何しろ色々そうこんがらがっているときは、一旦書き出してみるのがいいと聴く。
正確にいうとこんがらがっているわけではないのだけども、なにやら妙に入れ込んでいる感じがするので、試しに書き出してみようと思う。
先にほんのりお断りを入れさせていただくと、本記事は競馬のお話である。それとともに、私自身、家族が競馬好きだもんでほんのり乗っかっているくらいの、まだまだ競馬ファンとしてはおけつ真っ青な人間であることをご容赦いただきたい。

メイケイエールという馬がいる。4歳の女の子だ。
人間の年齢に換算すると大体20歳くらいらしい。
濃いめの茶色の美人さんで、珍しい白毛で大活躍しているソダシとは遠縁にあたるそうだ。
競走馬さんは調教を受けて、レースに出るためのあれこれ試験に合格すれば2歳でレースデビューする。メイケイエール(以下エールちゃん)は、デビューから3戦勝ってしまうくらい力のあるお馬さんななのだが、彼女には一つまあまあ大きな問題があった。スタート後に囲まれてしまうと、もはや獅子舞か歌舞伎のけぶりかというほど、ぶんぶんと首を振って前に進もうとする。それで先頭に出ると少し大人しくなるものの、ぶんぶんするのでエネルギーを使ってしまうのか、失速してしまうこともある。第一それ以前に、周りにだって走っている馬がいるんだから、そんなのでぶつかってしまったら、そして落馬なんかしてしまったらあわや大事故である。順当に考えれば、これじゃいくら力があると言われたって普通ーーにただの困ったちゃんだ。ぶつかって怪我になっても嫌だし、周りを走る馬達のメンタルに影響するのも嫌だし、と見られるのは仕方がない。

そんな感じに、ある意味大変にインパクトの強いエールちゃんであるので、ちょっと興味があった。あの(競馬は知らなくてもお名前わかる、という方の多そうな)武豊騎手でさえお手上げ状態だったそうだから、まったくどんだけ気性の荒い子なんだろうか。

それで、色々インタヴュー記事を読んでみた。多分ここが、私がエールちゃんを応援したくなった大きなきっかけだろう。
どうも、普段からすぐムキー!!となってしまうタイプではないそうなのだ。
お世話をしている厩務員さんや調教師さん曰く、彼女は普段とっても穏やかなのに、あんまり真面目で、一生懸命で、一番にならなくちゃーーー!!ってこう(目のところで視界を狭める手の動きをしているところを想像してください)なっちゃうようなところがあるらしい。
もちろん、我々は人間で彼女は馬なので直接話ができるわけじゃないから、もしかしてもしかしたら全然違うってこともあるかもしれないけど、馬という生き物はとても賢いそうだし、ああなるほどなぁと思ったのだ。
とはいえ、それでエールちゃん本馬に乗る騎手の方はもちろん、周りに危ないのは決していいことではないし、なにより一等賞取りたい・取れる力があるのに上手くいかないのはただただ勿体無い。ということで、馬具にも色んな工夫がされ、鞍上も過去複数の気難しいお馬さんに乗ってきた池添騎手が担当することになった。そして少しずつ、危なっかしかった走り方が安定して、ものすごいあざやかな加速で先頭でゴールを駆け抜けていくエールちゃんの姿を見るようになった。

道中は相変わらず、まだちっとも詳しくない私が見ても力いっぱいがっっちり手綱で抑えられているエールちゃんがおり、池添騎手もそのおかげ(?)で、インタヴューでは相当お疲れの様子だったりする。
だけど、あの、あんなに首をぶんぶんぶんぶん振って突進するように走っていた子が、しっかり競争できるようになって、そのために人も馬もものくごく頑張ってきたのだろうなと思ったら、なんだかもう、すっかりファンになってしまったのだ。そんなにあっちこっち応援にいけるわけではないから、まだまだにわかの域を出ないけれども。

ご存知の通り、競馬はギャンブルだ。
綺麗事かもしれないけど、私の場合、少しの金額を、ほとんど応援のつもりで投票に使っている。
割と「お馬さん可愛い!かっこいい!ジョッキーすげぇ!!」くらいのゆるゆる感だ。
そして、スタッフがいて、競技する人がいて、色んな工夫をしながら臨んでいるというところは、他のスポーツと一緒なんじゃないかなぁと思う。
……まあ、ギャンブルとしてちゃんと?やろうとすると、何しろ見なくちゃいけないことが多いし、そこで稼ごうとも思っていないのがそもそもではあるけども。

何しろそんなわけで、勢いで家族に申し込んでもらって、エールちゃんの初G1タイトルのかかった「スプリンターズステークス」に行ってきた。
距離は1200m、お馬さんの脚だとあっという間の「スプリント(短距離)」レースだ。
残念ながらエールちゃんは14着でレースを終え、さらに私は色んな要因でちっとも彼女と池添さんを目視すらできなかったのだけども、ファンファーレと観客の拍手が聞こえた時はなんかやたら泣きそうだったし、馬群が駆け抜けていくのはとにかくものすごい迫力だったし、何より事故なく全人馬無事にレースが終わったのはよいことだ。
後になって怪我がわかることもあるので、どの馬もどうかそういうことがないといいなぁ、と思う。

栄光があるのは素晴らしいことで、でも、元気でいてくれるのがやっぱり一番いいなと思う。
そして、ここまでを諦めなかったから、いつか一番星にも届くといいなと思う。
ひとまずは、エールちゃん、池添さん、スタッフの皆様お疲れ様でした。

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