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「愛しやすい」ということにする

・今日は何の予定もない日曜だけど、早起きをして支度をする。一刻も早く家を出なくちゃいけない用があった。

・だって私は、なくした手帳を探しに行くから!!!

・実は、手帳をなくした。自分のすべての予定が書いてあるカレンダー付きの、紺色の手帳。もっといえば予定どころではない。課題の進捗、読んだ本の一節、買い物のメモに新しいペンの試し書きまでしてある。私に関するすべてのことが記されているのだ。私が手帳だった世界線における私とも言える。そう、もはや、自分を失ったに等しい。自我の喪失。アイデンティティの欠乏。

・つまり、普通に大事なものだからなくして困っている。


・まあでもそこまで焦ってはない。なくすの2回目だし。実は大体の目星もついてる。たしか水曜ぐらいの授業中にテスト日程を書き込んだあと、机の下のラックに手帳を置きながら「ここに置いたら忘れそうだな~」と思った記憶がある。予見通りしっかり忘れている。

・そして私には割と、この類の「あちゃー」ということがある。

・私の特技の一つに「ものを壊す」というのがあるが、いつも「今手を滑らせたら多分割れてしまうな」と思った瞬間に手を滑らせる。ちなみに最近、一人暮らしを始めてから割れた(割った)グラスが4つに増えた。
あと、地図に強い人には意味が分からないかもしれないけど、地図を見ているときも「多分こっちじゃないな」という確信を抱えたまま進む。ので、いつも確実に迷う。地図は読めない。ただ、この道じゃないことだけは分かっている。そういうジレンマを抱えながら1歩ずつアスファルトを踏みしめる。

・上記のような私の「終わり」エピソード、探せばまだまだ出てくる。何も無いところでつまづいたり、目が悪いのにメガネを忘れていることにしばらく気づかなかったりするのは日常茶飯事。あとはゴミ袋を買いに出て手ぶらでコーヒーだけ飲んで帰ってきたり、お米を量るカップをプリンの容器と見間違えて捨ててしまったり、何も考えずに自転車を廃品回収に出して、移動手段を自らなくしたり。

・私には粗と隙しかない。自分の麩菓子のような脳みそに毎度新鮮に絶望する。少しでも現実から目をそらすため、その都度「いや~~こんなあり得ないミスしちゃって!愛しやすいなあ~~~~~!」とでかい声で言うことにしている。

・どうしようもない注意力の欠如を「愛しやすい」とすることで無理矢理「これは失敗ではなく、愛嬌である」と認識させる、つまりは自分に洗脳をかけるのである。


・今年で20なのに。私って、こんな感じで大人になっていくんだね。


・そんなこんなで、なくした手帳を回収するため大学にやってきた。いざ入ろうと思ったら自動ドアが開かない。日曜は閉まっている施設だったらしい。

・んもう。愛しやすいな~~~~~~~~~




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