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8. Didjeriduという名称の由来 1 - 文献由来説

Collet Bakerの手記に書かれた「didoggery whoan」

「Didjeridu/Didgeridoo(以下Didjeriduで統一)」という名称が使われるようになった理由については諸説ありますが、「Didjeridu」という名称を検証することができる歴史的資料はあまり存在しません。その数少ない一つがイギリス軍人Collet Bakerの残した手記です。

Collet Bakerは1784年生まれのイギリス軍大佐です。ノーザンテリトリー州の最北端にあるCobourg半島にあるFort Wellington基地に司令官として1828年に就任しました。現地のアボリジナルとの交流を手記に残していて、その一節を引用すると。

[Cobourg 半島]Darwinの東に位置する半島。かつてはここに基地があり、今ではその廃墟のみが残っています。となりのCroker島のIwaidjaの人々がこの地のランドオーナーですが、現在は半島全域がGarig Gunak Barlu国立公園になっています。

Mago had brought a kind of musical instrument, a large hollow cane about 3 feet long bent at one end. From [this] he produced two or three low & tolerably clear & loud notes, answering to the tune of didoggerry whoan, & he accompanied Alobo with this while he sang his treble.

Mago(アボリジナル男性の名前と思われる)が約3フィート(90cm)の大きな竹の楽器のようなものを持ってきたことがあった。彼は「didoggery whoan」の音の調べに応じて、低くかなりはっきりとした大きな2-3種類の音を鳴らしていた。Aloboが高いソプラノの声で唄っている間中、彼はこの楽器で伴奏していた。

Collet Bakerの手記

この文章の中に出てくる二人のアボリジナル男性のうちの一人が、西部アーネム・ランドのディジュリドゥ「Mago」と同じ名前という時点で、もしかしたら当地のアボリジナルは「Mago」というディジュリドゥの名称をCollet Bakerに伝えようとしていたのかもしれません。

[Mago - 西部アーネム・ランドのディジュリドゥ]Wugularrコミュニティが輩出した稀代のディジュリドゥ・マスターDavid BlanasiのMago。一般的にMagoはサイズが短く、空洞が大きく太く、マウスピースのサイズも大きめです。コールやトゥーツを鳴らさないドローンだけのディジュリドゥです。 drone key : E+ length : 118cm weight : 1.8kg mouthpiece : 3.1-3.5cm bottom : 9.4cm

この手記の内容では二人のアボリジナルと正確に意思疎通できていたかという点ではやや疑問が残りますが、Collet Bakerが実際に見聞きしたことを割に丁寧に記述していることがわかります。この手記の中で、ディジュリドゥの名称として「didoggery whoan」と記述されていて、そこから「didjeridu」と呼ばれるようになった、というのが文献由来説です。


後編へ続く


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