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「100%得する話し方」を読んで

帯には「1%変えるだけで、仕事もお金も人間関係もバッチリ」とでかでかと太字で書いてある。僕も人間関係には常に悩まされているので、何か改善するヒントが少しでもあればと手にしてみた次第だ。

結論を言えば、個人的に収穫はなかったけれど、コミュニケーションが苦手という人には有用かもしれない。ただし条件があって、相手がこちらと会話をしようという気持ちがあった場合、ということが前提になっている。

基本的に人は他人にほとんど関心を抱かない。たくさん転がっている石の一つに無関心なように、およそ自分というone of themには何の価値も見いださない。見目麗しい外見でも備えていない限り、興味の対象から外れるのが常だ。

なので、最初から会話の糸口さえ掴めないのが通常で、この糸口の掴み方こそ一番知りたいところなのだ。もっと厳密に言えば、まったく関心も関係もない赤の他人に、限られた時間という資源をこちらに割かせるだけの興味を持たせるにはどうしたらいいか?が知りたい。

そのためには相手の趣味嗜好や悩みなどを把握する必要があるけれど、それを知るためには親密な関係にまで発展させなければ聞き出せない。『釣りバカ日誌』の主人公のハマちゃんほどのコミュニケーションモンスターなら話は別だろうけれど。

そんなハマちゃんでも相手にその気がなければ、むしろ嫌われてしまう危険は常に抱えていて、そんな堅固な心の城壁を築いている相手に城門を開かせる戦術が書いてある本をこそ僕は読みたい。そんなものがあればの話だが。

今回取り上げた本は、話し方しか書いてないので、付き合い方まで網羅していないという意味で――そんな本はないだろうけど――有用とは言い難い。人によって付き合い方が違うのに、話し方の一つのモデルに従っても100%も得することはないだろう。

聞き上手になれというのがこの本のミソだけれど、実際書かれていることを音読してみれば、なんだか白々しいと感じてしまう。そもそもこちらも相手にそれほど興味があるわけでもないのだから仕方がない。無理して話すより適当に話を切り上げるほうがいい場合もある。

またその話の切り上げ方も難しくて、どこでどう話を終わらせるかも技術だ。僕はもう要件が終われば早々に「では」と言って別れるようにしているけれど、きっともっと巧い方法があるだろう。

とにかく相手次第でどう対応すればいいのか変わってくるので、これで必ず上手くいくなんてありえないから頭が痛いのだ。おまけに胃も痛くなる。一番手っ取り早いというより、話がはやいのは自分の本音をすこし混ぜることくらいか。

あとはちょっと冗談を言ってみるのもいいかもしれない。それが許される状態で、そういうキャラをしているのなら効果的だろう。とにかく相手が話しやすい雰囲気を醸し出すことが肝要だと思う。引きつらない程度に口角を上げておくのも大切だ。

いずれにしても人付き合いは千差万別、仕事のほとんどの労力はこれに費やされているといっても言い過ぎにはならないだろう。60代以上のおじさんたちは、取引先でもタメ口を利いているのを見かけることがあるけれど、自由だなァと驚きと羨望の眼差しを向けてしまう。

これぐらい気楽に仕事ができたらいいけれど、彼らに比べて僕らの世代はどうも窮屈な気がする。それだけ余裕がないのだろう。誰か僕に人付き合いの真髄を教えてはくれないだろうか。

ありがとう♥