リトアニアのビルシュトナスに行ったワケ・9(最終回)
ビルシュトナスの話も最後となる。
ビルシュトナスインフォメーションセンターはじめ、訪問した各所で対応してくれた皆さんにこの場を借りて感謝を申し上げたい。
これまでのビルシュトナスでの話は1から8まである。それぞれに新しい発見があった。
実は8の時に1つ紹介していなかったスパがあったので紹介したい。街の中央に位置しているVersmėに訪問した。2週間前に新しくなったという施設を体験した。泥スパとミネラルウォーターを浮遊するという流れ。おそらくこの流れはどこのスパでも同じセットなのだろう。
新しく美しいミネラルウォーター風呂は非常に大きく一人で使うには贅沢すぎる広さだった。だがここに40分も浮遊させてもらった。スタッフの方も非常に優しい物腰でガイドしてくれた。
スパの後は、素晴らしい休憩エリアに行った。ここは、材料にこだわった健康的なスイーツやお茶が用意されているカフェも併設されているので、リラックスしながら時間を過ごすこともできる。
サジー(シーバックソーン)のホットジュースとグルテンフリーのケシの実を固めた雷おこしのようなスイーツを選んだ。どちらも日本では見ることもない食べ物だった。サジーは酸っぱいがビタミンが豊富で近年はパワーフードとして名を連ねる食べ物だ。日本ではあまり見ることがないが、バルト三国では黄色の実がたくさんつけているブッシュを見ることがある。棘があって痛いのだが、その実を収穫してジュースやジャムとして食べやすく加工することが多い。ケシの実はバルト三国ではスイーツやパンで使われる素材だ。グルテンフリーの食べ物も最近は多いので、選択肢が広いのが日本とは異なる部分で嬉しい。
カフェの美しさは他に見ないほどだったので、ビルシュトナスに行ったら必ず立ち寄りたいところでもある。
二日目の午後はビルシュトナスの市政府に訪問することになった。
庁舎は街のセンターにあるので、観光ついでにふと見ると市庁舎だとすぐわかる。ビルシュトナス市の市庁舎に入るとさまざまな国との交流が盛んに行われているのが感じられた。姉妹都市からの品が展示されており、その中になんと加賀市からの美しい九谷焼も飾られていた。すると2023年5月に両都市は姉妹都市提携を結んだということだ。当時の記事はこちらから確認できる。なんでも加賀市も温泉で有名であるということもスパなどたくさんの施設を持っているビルシュトナスと共通するところだということだ。
観光で日本とリトアニアが結ばれることはとても嬉しいことだった。私を案内してくれた市政府のエルバルダスさんとインフォメーションセンターのパウリナさんどちらもビルシュトナス出身。この街を愛してより世界に知ってもらいたいという気持ちからさまざまな意見を求められた。
「私たちは日本人に知ってもらうために何をしたらいいかな?」この質問を聞き、更なる街の発展に意欲に満ち溢れていると感じた。
食事の後は二人と一緒にビルシュトナスの一番高い丘に登った。ほぼ日が暮れかけた時に登ったが、ネムナス川とその対岸を見渡せる素晴らしい景色だった。気になったのは街に橋がないこと。対岸までは船か車で遠回りしないと渡れないのだ。
橋について聞くと、エルバルダスさんはまさにその計画を今しているところだと教えてくれた。橋が渡ると対岸の地域にも素晴らしい場所が増えそうな予感がする。
水が豊かなところには文化が栄える。
ビルシュトナスが多くの人々に訪問される街になのは、水そして湧き出るミネラルウォーターもさることながら、外からの人々を受け入れる街の人々の心の広さではないだろうか。資源だけに頼らず人間ができることも考え、最大限にその街の可能性を引き出していこうとする志のある街。
それがリトアニアにある街、ビルシュトナスなのではないだろうか。
旅の珍道中そして、普通のバルト三国の人々の料理を教えてもらったレシピが掲載されている拙著『バルト三国のキッチンから』(産業編集センター)発売中です。お近くの書店、オンラインでご購入できます。
有益な情報、ためになったなーと思われた方はぜひどうぞ。いただいたサポートは次作の書籍の取材費として使わせていただきます。