「受精卵ワールド」を読みました。
山本聖子さんの「受精卵ワールド」を読みました。
タイトルから想像するとおり、不妊治療のお話です。
主人公は胚培養士のお仕事をしています。
胚培養士は精子、卵子や受精卵を体外で扱う仕事です。
胚培養士と言えば、今、「胚培養士ミズイロ」という漫画もテレビで取り上げられていたりして、少し認知度が上がったのかなと思います。
国家資格ではないけれど、学会認定の資格があるらしいです。
主人公はその胚培養士のお仕事をしている独身の32歳。
あまり結婚願望はないようで、でもたまに寂しさに襲われます。
主人公は精子提供の人工授精で生まれていて、つまり、育ての親と遺伝子的なつながりはないのです。
それを知ってから一人で悩んでいるのです。
結婚どころではないです。
ところで、今回気になったのはその主人公の友人の言葉です。
友人はシングルマザーで子供が二人いて、主人はその友人の家によく遊びに行きます。
そしてやんちゃざかりの子供二人を見て、「子供を持つって、やっぱりいい?」とあらためて友人に聞きました。
子供二人を愛する友人ママは、「もちろん!」というかと思いきや、「どうとも言えん」と返答します。
その理由はいたってシンプル。
「大変やから。」
人ひとり社会に無事出すまで育てるのは本当に難しく、自分は全て吸い取られ、消えてしまいそうになるから、と。
納得。
「子供を持たず、自分だけの人生を生きるのもいいと思う」と言います。
それは独身の主人公に気を使って言ったのではなく、本心です。
この言葉、子育てで苦しんだ、悩んだ経験がある人にしかわからないでしょう。
それからもう一つ、この物語に出てくる忘れられない登場人物がいます。
野々村しおりという不妊治療中の女性。
主人公の勤める病院の患者さんです。
この方は不妊に相当悩み、追い詰められていて、物語の終盤に夫に内緒で、全く他人の精子提供を受け、顕微授精を受けるために病院へ持ち込みます。
ですが、病院のスタッフにその精子は夫のものではないのでは?と気づかれてしまいます。
自暴自棄になり、自殺を試みるのですが、主人公やその親友、同僚に止められる。
その一連の行動やセリフを読んで、そこまでして子供が欲しいものか!?というより、「子供がもてないのは不幸」と決めつけているのはおかしくないか?と思いました。
今の自分の状況が受け入れられないならきっと、今後妊娠できて、子供を産んでも、子育てに苦悩し、こんなはずじゃなかった、と悩むのでしょう。
今の状況は、不治の病、家族からのDVなど、そういった「どこからどう見てもつらい状況」ではないと思います。
子供ができないことは、自殺を考えるほどマイナスなことではない。
なぜ、そこまで追いつめられるのかと不思議に思いました。
セリフから想像できるのは周りからの心無い扱いを受けたこと。
「早く子供を産んだ方がいいよ」的な。
それを全部うのみにして、周りの価値観に振り回された結果ではないかと思います。
主人公の親友は、「子供ができたあとも、世間は自分に無責任なことを言ってくる。それを真に受けないで、自分からそんなやつにはレッドカード出して自分の人生から退場させるしかない」という意味のことを野々村しおりに言います。
確かにそうだ。
よくよく考えると子供ができないことはそこまで不幸なことではないのだから、周りの意見にフラフラ影響を受けず、自分は幸せなんだと思えば幸せなんだと思いました。
この2つがこの本を読んで感じたことです。
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株式会社 ジェー・シー・プラス
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