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生活の建築知識.8

おはようございます。

気温と風が気持ち良い季節になりました。
さすがにまだ朝方は寒いですが、日中なら窓を開けて風を通しても過ごしやすく、たまたま東京でも木が多いエリアなので、鳥の声も聞こえて健やかな気持ちになります。
少し前までは、寒く辛い冬でした。
我が家は窓が多いため、はっきり言って冬場の温度環境は良いとは言えません。
同じように冬に悩む方もいれば、夏場の暑さに悩む方もいるでしょう。
そんな温度に大きな影響を及ぼすのは確実に窓です。
窓は家の中で最も外気の影響を室温に及ぼす箇所と言えるでしょう。
逆に言えば窓さえ性能が良ければ、室温はかなり改善される可能性があります。
ということで、今回は窓の性能を向上させる方法を説明します。

窓は、採光・通風・眺望を行う機能を有している一方で、熱に関しては負荷として取り扱われます。
この負荷は最終的には空調設備の消費エネルギーに反映されるため、省エネ・環境負荷低減という観点からも性能が高い方が望ましいと考えられます。
性能を上げるには、窓において最も面積が大きいガラスの性能を上げる必要があります。
まずはガラスの種類を比較してみます。

・フロートガラス(FL)
最も一般的なガラスです。透明で、多くの窓に使用されています。
名前の由来ですが、融解させた金属の上に融解したガラスを浮かせ薄く広げて製造することに由来します。

・型ガラス
融解しているガラスの片面にローラーで様々な模様を施したもので、もう片面は平滑な仕上がりとなります。
多くの場合は小さい凹凸をつけて、それにより光が屈折することで透明度が下がるとともに、乱反射するため光の拡散性が上がります。
窓際の局所的な照度は下がりますが、室内の奥については透明ガラスより照度が上がります。
こちらも多くの窓ガラスとして利用されますが、目的としては光を取り入れながら視界を遮ることがメインとなります。

・磨りガラス
こちらはフロートガラスに対して、サンドブラスト加工という細かい砂を吹き付けて、表面に無数の凹凸を施したガラスです。
型ガラスとの違いは製造方法もそうですが、型ガラスの模様は複数あり、磨りガラスはあくまで凹凸を付けることにあります。
また、型ガラスの凹凸と比べより細かい凹凸となるため、不透明度が上がります。

・網入りガラス
フロートガラスもしくは型ガラスに格子状の金網が入っているものです。
使用理由としては、火災時の延焼を抑制するためとなります。
火災時の熱で窓ガラスが割れた時に金網があることで、ガラスがバラバラに飛散せず、結果的に噴き出る炎を低減することに繋がります。
建築基準法により、隣地境界線や道路境界線などどとの距離で延焼の恐れがある部分が定められており、その範囲に含まれる窓ガラスは網入りガラスか耐熱強化ガラスを使用することが義務付けられています。
※正確にはサッシ自体も防火設備として認定を受けているものを使用します。

・強化ガラス
透明なフロートガラスと見た目は同じですが、名前の通り強度を向上させてガラスです。
ガラスの圧縮力に強く引張力に弱い性質を利用して、製造時にイオン操作や加熱急冷を行うことで、常時表面に圧縮力がかかっている状態します。
ガラスを破るためには、その圧縮力を相殺する力+引張力分の衝撃を加えなければいけないので、通常のガラスより強い力が必要となります。
ただしガラスの角や小口部分といった端部はあまり強くなく、ちょっとした衝撃で割れてしまいます。
さらに強化ガラス最大の特徴ですが、一部割れが生じると全面粉砕してしまいます。
これも圧縮力が常時かかっているためであり、その力のバランスが崩れた途端、自らの圧縮力で粉砕してしまいます。
それでもそのような端部を保護しておけば、防犯性が非常に高いガラスと言えます。

・耐熱強化ガラス
これは耐熱性に優れた強化ガラスになります。
上記でも名前が挙がりましたが、主に延焼の恐れがある部分の範囲に含まれる窓ガラスとして使用します。
網入りガラスと違い金網が入っていないため、眺望を遮ることもなく、さらに金網とガラスの熱膨張率の違いや金網が錆びて膨張したことによるガラスの割れが起きないことに優位性があります。
ただし、非常に高額になることがデメリットと言えるでしょう。

・Low-eガラス
Low-eとは低放射を意味しており、ガラスは透明なのですが、表面に金属膜を施すことで可視光線を遮らず、赤外線や紫外線を反射させる効果があります。
これにより、夏場の熱負荷を低減でき室内環境の向上に繋がります。

これで一般的に利用するガラスは紹介出来たと思います。
そしてここから窓ガラスについてご説明します。
窓ガラスは大きく分けて3種類あります。

・単層ガラス
こちらは名前の通り一枚のガラスのみで窓ガラスとする形式です。
性能としては、使用したガラス単独の性能となり、断熱性は非常に低いとされます。

・合わせガラス
こちらは複数枚のガラスの間に中間膜を貼り合わせた窓ガラスの形式となります。
中間膜があることでガラスが割れても飛散せず、防犯上のメリットがあります。
また、中間膜に乳白色やパターンを施したものを利用してデザインすることも可能となります。
しかし、断熱性に関しては低いとされます。

・複層ガラス
こちらも複数枚のガラスを使用するのですが、各ガラスの間に空気層があり、この空気層が断熱効果を持つことで、室内環境への負荷を低減出来ます。
また、複数枚使うガラスはそれぞれ種類を変えることが出来るため、さらに機能を付随させることが可能です。
例えば、室外側:Low-eガラス+空気層+室内側:フロートガラスとすることができ、この構成では遮熱効果も合わせて期待できる窓ガラスとなります。

ここまで説明しまして結論付けると、遮熱性能を上げるにはLow-eガラスを採用し、さらに断熱性能上げるには複層ガラスを使用するということです。
ただ、今の室内環境向上を目的とするとガラス交換を実施しなければなりません。
マンションなどの場合、必ずしもそれが可能とは言えない状況もあると思います。
その時はインナーサッシを検討する必要があります。
インナーサッシは、今付いている窓の内側に後付けの窓枠を取り付けて、そこに新規の内窓を設置します。
インナーサッシにおいてもLow-eガラスや複層ガラスを採用することが可能で、断熱性の向上とともに遮音性能も向上する可能性があります。
こちらとて実施が不可能な場合はありますが、方法を知っていれば何が出来るか検討出来ます。

ガラス交換もインナーサッシ取付もDIYでやれる内容ではありませんが、室内環境が向上すれば光熱費の削減にもつながる可能性が大いにありますので、一度窓を見直すきっかけにしてもらえたら幸いです。

では、また。

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