生活の建築知識.4
よくクライアントに聞かれることとして、1番多いかもしれない内容が、壁にアクセサリーを付けていいかというものです。
もちろん付けてもらうことに対しては何ら問題はないのですが、付けるものによっては重くてしっかりした固定が必要です。
今回はそんな問い合わせに対して説明をしていきます。
少し内容がまどろっこしいことになりますが、ご了承ください。
壁に付けるアクセサリーと言っても色々あります。
壁付けの時計や絵画、タオル掛けやフックなど多種多様です。
生活に応じて必要が生じたときに追加して設置することで、利便性や意匠性が向上することがあるでしょう。
軽くて、荷重がかからないアクセサリーであれば特に何も気にせず設置をしても問題ありません。
しかし、重かったり荷重がかかるようなアクセサリーであれば設置に対して注意が必要です。
なぜなら何も処理を施していない壁ではビスやネジを打ち込んでもほとんど固定する力は働かないからです。
ではなぜ固定が出来ないかということですが、それは一般的な壁は粉末の石膏を板状に固めたボード(石膏ボード、プラスターボード)を張って出来ており、ビスなどを打ち込むとその箇所の石膏は粉末状に損傷してしまうからです。
また長いビスを用いれば良いという話でもありません。
石膏ボードは9.5mm or 12.5mm or それらの複層張りをしてあるのですが(一般的な住宅では12.5mm)その中がどうなっているかというと、木材か軽量鉄骨(LGS)で303mm or 455mmピッチで縦格子状に下地が組まれています。
なので、ほとんど空洞と言って良いでしょう。
先程固定出来ないとお伝えしましたが、たまたま縦格子状になっている木材などにビスが当たれば固定出来ます。
しかし、運試しではまず付けられないと思ってもらった方が良いでしょう。
では、どのようにして設置をすべきかというと、そもそも設置したい壁の石膏ボードをベニヤ※にするか、石膏ボード背面にベニヤや下地となる部材を仕込んでおくことがベストでしょう。
※ベニヤと言ってもいくつも種類があるので、適切な選定はプロに確認しましょう。
しかしこれでは生活する前から検討するか、壁を一度開口して復旧まで見込まなければならず、多くの方には役に立つ情報ではないと思います。
他の方法として、ボードアンカーという部材を利用して設置することが可能です。
樹脂製か金属製のものがありますが、どちらでも構いません。
具体的な取付方法は割愛しますが、デメリットもあります。
・下地を仕込んだ取付ほどの固定力は得られない。
・大きめの穴を開けてボードアンカーを仕込むため、アクセサリーの設置時にボードアンカーの縁が見えてしまう可能性がある。
・仮に外れてしまった時に大きめの穴が残ってしまう。
上記が挙げられます。
これらのデメリットを許容出来ない場合、やはり下地を探し出し固定することをおすすめします。
下地を探し出すには、専用の壁に針を刺して見つける工具がホームセンターなどで購入出来ます。
ただこの場合ももちろんデメリットはあります。
・ちょうど良い場所に下地があるとは限らない。
・水平方向に複数点固定が必要な場合、ピッチが合わない可能性がある。
・LGSの場合、ビスの打ち込みが難しく、緩む可能性もある。
もう一つ紹介すると、水平方向に木材などのビスが効く板を壁面に固定して、そこにアクセサリーを付けることが可能です。
水平方向の板自体も接着ではなく壁の下地にビス留めすることをおすすめします。
しかし、意匠的に許容出来ない方も多いとは思いますので、あくまで参考までにしてください。
いくつか紹介してきましたがアクセサリー1つ付けるだけで、課題が色々多いのが正直なところです。
場合によっては壁面がコンクリートということもありますが、こちらも電動工具がないと設置は難しいでしょう。
一番現実的なものとしては、ピン針での設置となります。ホームセンターや無印などでもピン針を利用した設置が可能なアクセサリーが購入可能です。
種類は限られてしまい、荷重に対しても制限はありますがこちらであれば石膏ボードの壁に対して設置可能です。
実際には壁の構成も様々あり、今回説明した内容が全てではありません。
しかし、多くの場合が説明した内容に当てはまると思いますので、アクセサリーの設置をご検討の方は各々の設置に対するデメリットを理解した上で実施をしてもらえればと思います。
なにより、下地を最初から計画出来る方はそちらをおすすめします。
そして、後からアクセサリーを設置したいという方については、失敗したということが減れば今回説明をした意味もあるように思えます。
ご自身の生活に合わせた、最適解を検討してみてください。
では、また。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?