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生活の建築知識.88

おはようございます。

物体を認識する時、私たちは光を感知して把握します。
どんな色であっても、どんな形であろうとも、光がなければ私たちはそれらがどのような物かわからないのです。
そして光源を除けば、物に当たり反射した光が私たちの目に届き、初めて物体がどのような状態かを確認出来ます。
当たり前のことではありますが、建築において最終的にどのように見えるのかということを意識した時に大切な要素となります。
プランニングして、仕上げの材料を選び空間を構成していく建築ですが、照明計画次第で空間の奥行感や雰囲気というのは変化します。
さらに同じプランで同じ照明計画でも仕上げ材の色や艶でも変化が出てきます。
今回は物の見え方に由来する光の感じ方について説明していきます。

光には反射する性質があります。
また、物に対して透過や吸収することもあります。
透明なガラスに対して光を当てれば、当然透過します。
しかし、よく見ればわずかに反射する光があることに気がつくでしょう。
そして、正確には吸収もされています。
一般的に光はこれらの現象を起こしながら私たちの目に届いています。
次に透明ガラスに黒いフィルムを貼って光を当てるとどうなるでしょうか。
フィルムの性質にもよりますが、光の透過はほとんどなくなり、反射してくる光で見えるのは黒い面です。
きっとこの時眩しさはそれほどなく、それは多くの光が黒に吸収されてしまっているからです。
これは逆の言い方の方が正しいかもしれませんが、光を多く吸収し、反射が少ない色だから私たちには黒く見えているのです。
私たちが普段黒と呼んでいるのは、ある条件下で黒く見えるという結果だということがわかります。
このことを理解すると、性質から色を選ぶことも出来ます。
吸収せず、透過もせず、よく反射する色を選べば白が該当します。
さらに反射の仕方も表面が平滑なツルツルした物であると鏡のような反射の仕方となりますが、ザラザラした粗面であると光の向きがバラバラになり広い範囲に反射することになります。
透過した光は、さらに奥にある物に当たり反射・透過・吸収していきます。
吸収された光はエネルギーでもあるため、熱などに変換されます。
外壁や屋根において、黒系の色を選ぶ方は多くいらっしゃると思いますが、よく言われる黒は熱くなりやすいは正しく光が熱エネルギーに変換されてしまうために起きますので、その点を考慮すれば不利に働きます。

光の感じ方について、室内においても仕上げ材と関係してきます。
先ほど説明したように反射する面の質感によって室内の明るさに影響が出ます。
ツルツルした表面が多い仕上げ材は、当たった光がほぼ直角のみに反射しますので、反射した光がさらに当たる場所については明るくなりますが、他の部分には光が行きません。
一方ザラザラした粗面であると、いろんな方向へ光が乱反射するため、反射した光は周辺を明るくすることになります。
白を基調として、尚且つ艶が少ない粗面とすることで、部屋を明るくコントロールすることが出来るのです。
光の入り方(プランニング)、照明計画(光の配置)、仕上げの質感(反射の具合)を意識して室内を考えていくと、どんな室内にしたいかという目標に対して実現できる方法が増えることでしょう。

空間の構成は光を考えただけでも、多くの係数があるため非常に難しいものではありますが、素材や配置を変えて簡単に試していくことが出来ます。
ちょっと部屋が暗いなと感じたり、もっと落ち着いた雰囲気にしたいなと思っている方がいましたら色・質感・照明計画を見直してみて理想の空間に近づけないか試してみることをおすすめします。

では、また。

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