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コミュナリズム:解放的代案(14)

現代社会から来るべき社会へ(その2)

民衆集会は、コミュニティ゠テクノロジー゠プロジェクトや社会的プロジェクトの資金調達方法を非常に慎重に検討した方が良い。運動の長期目標に同調していない提供元から資金を調達すると、この提供元が資金提供者としての力を利用して、自身の改良主義計略に運動を吸収しようとするだろう。別な方法として、市税の支出方法を決める直接管理権を民衆集会に与えるよう要求することでも資金調達を実現できる。自治体によるこうした資金拠出は「参加型予算」と呼ばれているものに該当する。参加型予算は改良主義者が様々なやり方で実施しているが、二重権力としての民衆集会に資金提供する目的で市税の直接民主主義的管理権を手に入れることは、集会の政治的・経済的力を拡大する上で重要な一歩を示すだろう。(原註67)

民衆集会は参加型予算で獲得した資金を使って地区所有のマイクロファクトリーを設立できる。そこでは、それぞれの地区の中から労働者を雇って運営し、労働者に生活賃金が支払われる。マイクロファクトリーは、小型自動機械とデジタル製造テクニックを可能な限り使って、様々な商品を製造できる小規模な工場である。マイクロファクトリーは、地区がある程度経済的に自立できるようになるだろう。民衆集会は、都市内や地方内にある他の集会と協力して、それぞれのマイクロファクトリーがどの商品に力を入れるべきか決めなければならない。そのことで、作業の不要な重複を避けて、経済的力を最大限活用できるようになる。居住者は、企業の小売店ではなく、地区で製造した商品を買うよう奨励される。上手くいけば、マイクロファクトリーは民衆集会に副次的収益をもたらし、その経済的力をさらに強めてくれるだろう。(原註68)

市役所が、既存権力構造を犠牲にして自治体予算を使う権限を地区集会に僅かでも認めるとは思えない。この目標を実現するために、民衆集会は市役所内で政治権力を獲得しなければならない。地区集会は、コミュナリズムの綱領に沿って地元の公職選挙に候補者を擁立すべきである。この綱領は、地区の最小限綱領を生態調和社会という最大限綱領に結び付ける。教育キャンペーンの部分で既に述べたように、こうしたキャンペーンは、既存社会の諸制度を徹底的に変換するという長期的ヴィジョンを支持する人々の支援を得ることだけを目的としなければならない。そうでなければ、運動全体が改良主義になり、革命勢力としての独自の可能性を駄目にしてしまうだろう。候補者は、集会そのものの代弁者と見なされ、集会に対して完全に説明責任を持ち続けねばならない。一旦当選すれば、その責務として、民衆集会の権限強化の助けとなるよう全力を尽くすだろう。参加型予算を最大限実施しなければならない。高い累進課税を実施しなければならない。民衆集会の目標を妨げる規制やお役所仕事を排除しなければならない。企業の規制を増大させねばならない。地区内の私有地管理権を集会そのものへ移さねばならない。(原註69)

そうすれば、新たに権能を持った民衆集会は、その最小限要求の多くを実現できるはずである。このシナリオは、既存国家装置と比べて、二重権力としてのコミュナリズム運動の役割を非常に大きくする。この情況は必然的に国家との緊張関係を創り出す。集会運動の強さは国家がこの運動を統制する能力を犠牲にして実現するという事実のために、国家は存続できなくなる。この緊張関係は、歓迎されるべきであり、それ以上に、助長されねばならない。集会は権限を拡大するあらゆる活動を行わねばならない。さもなくば、国家は如才なく集会を強奪するだろう。権限を拡大するために、集会は、その最大限要求を達成する作業を行わねばならない。現在のヒエラルキー社会から完全に解放された生態調和社会への移行期となるべき活動段階に突入するのである。市憲章を変更し、市役所などの代議制権力の承認なしに民衆集会が独自に自治体政策を決定する権限を持てるようにする。講じるべき最も重要な措置の一つがこれだ。次に、法人資産を収用し、市の地区集会連邦下に置けば、この権限をさらに拡大できる。こうした資産に関係する特許と著作権は廃絶される。全ての知識は、インターネット上で自由に入手できるようにしなければならない。そのことで、世界中の人々が、新しいエコテクノロジー革命の導入に貢献できるようになる。これは現在のエコテクノロジーをはるかに超えた解放的可能性を持つ。同様に、全ての銀行は収用され、あらゆる負債は全て免除される。空きビルと地主の所有地を没収し、全ての人に住宅を提供できるようにして、家賃という無駄で搾取的な負担を廃絶する。(原註70)

この移行プログラムが持つ挑発的行為の実施により、社会は革命的情況に突入するだろう。留意しておかねばならないが、権力エリートがこの発展を受動的に受け入れることはない。どこかの段階で、暴力的攻撃が生じるだろう。上手くいけば、多くの人々が軍隊から離脱し、社会的自由の大義に参加しているだろう。いずれにせよ、コミュナリズム運動が生き残り、国家と資本主義システムを打倒するためには、国家による暴力の独占を排除しなければならない。この行動には、民衆集会の完全管理下にある防衛的市民民兵ネットワークの創造が必要である。(原註71)

革命を完成させるためには、貨幣システムを廃絶しなければならない。集会レベル・様々な連邦レベルで条例を作り、新たな直接民主主義社会の仕組みを明確に定義しなければならない。こうした諸構造の準備が整うと、都会の分権化とテクノロジーの解放的利用の達成に必要なあらゆる取り組みが、それぞれの連邦代理人を通じて様々な集会間で調整できるようになる。

原註67.Legard, Sveinung, "Democratizing the Municipality, The Promise of Participatory Budgeting" (「自治体の民主化--参加型予算の展望」、森川莫人訳、『アナキズム』第十号、2008年、152~170ページ)

原註68.同様の考えについては OpenSourceEcology が提案している RepLab を参照。

原註69.The Politics of Social Ecology - p.63-72

原註70.The Politics of Social Ecology - p.121-130

原註71.The Politics of Social Ecology - p.167-168

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