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コミュナリズム:解放的代案(10)

解放的テクノロジー(その2)

・農業

先進技術は、有機的な形で農業に適用できる。周辺の生物多様性を増やし、農作業の楽しさを高めてくれる。有用な農業機械の典型例はトラクターである。様々な道具を取り付けて使えば、トラクターは、重いものを持ち上げて運ぶ・土を掘る・耕す・除草する・種を蒔く・オーガードリルで穴をあける・堆肥を混ぜるといった多くの役立つ仕事を行ってくれる。同様に、自動ロボット農業器具も小規模農場で使え、栄養価の高い美味しい食べ物を育て、土壌の改善もできる。

農業の自動化にパーマカルチャーの諸原則と先進ソフトウェアシステムを組み合わせると、農場は、苦役から自由になり、複雑なポリカルチャーで構成され、食料生産の場所であると同時に美的遊び場にもなる。パーマカルチャーは、情報集約的生態調和農業である。生物多様性の増大を目的として、諸要素が注意深く設計される。農場の要素一つ一つが複数の機能を果たし、隣接する他の諸要素と相互に利益をもたらし合う場所に置かれる。さらに、土壌を肥沃にするために、自然な植物推移を促す。パーマカルチャー゠デザインの一例は、豆・トウモロコシ・カボチャを近くで一緒に栽培する「三姉妹」混植テクニックである。トウモロコシは豆の蔓が成長する構造を提供し、豆は土壌に窒素を固定し、カボチャは地被植物として湿気を保持して雑草の繁殖を防ぐ。パーマカルチャーを行う場所は、益虫や益鳥を引き付ける植物を利用するよう設計される。これが生物学的害虫防除の方法である。最後に、多年生植物を栽培し、耕作をマルチングに置き換えることを強く強調する。このことで、人が行う仕事と土壌攪乱が最小限に抑えられるのである。(原註45)

コンピュータを使ったパーマカルチャー(CAP)ソフトウエアは、生態調和農業計画の作成を支援できる。ゾーニング・集約的ポリカルチャー・生産量推計のモデルを作り、無駄をなくすための地元材料の完全利用を調整する指針となる。農業従事者は、家族であれ集団であれ、モデルを作るために必要な情報をソフトウエアに入力しなければならない。この情報は、気候・地形(訳註:原文ではtypographyと書かれているが、topographyの誤記だと思われる)・地元の水文学などで構成されるだろう。ソフトウエアは、人々が改変できるデータベースにアクセスする。そこには、植物群落(コンパニオン)・その適切な間隔・発芽と収穫の時期・水と日光の要件など多くの特性に関する情報が蓄積されている。この情報によって、CAPソフトウエアは、栽培する植物の配置、土壌・日当たり・水はけに応じた最適な場所、予想される食料・薬・動物性食品の量、どの植物がどの程度バイオ燃料・バイオプラスチック・マルチに変わり得るのかを詳しく示したモデルを作り出すだろう。モデルとなる計画を手にすれば、農業従事者は、民主的プロセスを経てモデルを修正し、容認できる計画を決められるようになる。最終確定した計画は、その後、情況と参加者の選択に応じて毎年修正される。さらに、これらの計画は、当該地域周辺の農場と連携し、その活動を調和させ、分権的で生態調和的な地域農業を実現できるようになるだろう。

裏庭で行うのとは対照的に、一定規模の農場で集約的にコンパニオンプランツを栽培するのは手間がかかる。ここで小規模で自律的なフィールドロボットの助力が役立つ。フィールドロボットは、移植・除草・マルチの拡張・収穫といった多くの有用な作業を行える。点滴灌漑システムや有機肥料散布を管理するなら、自動監視システムを導入すればよい。鶏や家鴨を特定の場所に囲って昆虫を食べさせるためにもロボットシステムを使える。自動化された温室は、種蒔きと苗の育成にも活用できる。それとは別に、自動化された温室では、大量の魚・野菜・バイオ燃料をもたらす先進的アクアポニックス゠システムも実施できるだろう。こうしたテクノロジーは、従来型の農業機械の自動化と共に、最小限必要な労力で豊富な食べ物を供給し、同時に土壌を改善し、地元の生物多様性を高められるのである。(原註46)

・エネルギー

生態調和社会のエネルギーを化石燃料に依存してはならない。その代わり、地元で生産される多様な再生可能資源で構成されるべきである。再生可能エネルギーの生産方法は、良く知られている太陽光パネル・風車・バイオ燃料だけでなく、集約型太陽光エネルギーシステム・水素燃料電池・熱分解(パイロリシス)もある。(原註47)

例えば、熱分解は、バイオマスを様々な量の炭・合成ガス・バイオ原油に変換する。合成ガスは、高効率の水素燃料電池を使って電気に直接変換でき、排気も非常に少ない。このプロセスで排出される二酸化炭素は、熱分解プロセスで使われるバイオマスが元々蓄えていたもので、生産サイクル全体はカーボンニュートラルになる。

熱分解で作られる炭は、それが持つ生態系への利点から、一般にバイオ炭と呼ばれている。バイオ炭を土壌に加えると、栄養素の保持を促し、その結果、土壌の肥沃度を高める。バイオ炭は非常に分解しにくいため、バイオ炭に含まれる炭素は全て、数千年間実質的に、大気中へ放出されない。バイオ炭に変換されるバイオマスは、成長過程で大気中の二酸化炭素を消費するため、このエネルギー生産方法は、カーボンネガティヴ゠プロセスの一環であり、さらには、有益な土壌添加剤も生み出すのである。つまり、バイオ炭は、大気中の高レベルの二酸化炭素を減少させる大きな可能性を持っているのだ。(原註48)

このパンフレットでは網羅できないが、テクノロジーへの解放的アプローチを適用できる経済領域はもっと多い。これまで記した分析が示しているように、分権化された生態調和社会を確立するために不可欠な必須テクノロジーと生態調和エネルギー資源は、現在存在し、手の届くところにあるのだ。

45.Mollison, Bill, Introduction to Permaculture. 2nd ed. (Tyalgum, NSW, Australia: Tagari Publications, 1994)
・Hememway, Toby, Gaia’s Garden (White River Junction, VT: Chelsea Green Publishing, 2000)

46.このテクノロジーの実例は以下の通り:
小規模農業フィールドロボット(YouTube)
小規模農業フィールドロボット(2)
イチゴを収穫するロボットアーム(リンク切れ)
自動移植機(YouTube)(要ログイン)
温室用自動移植機(YouTube)
ココナッツを収穫するために木に登るロボット(YouTube)
自動化された鶏舎(YouTube)
ドライバーのいない農業トラクター(YouTube)
ロボットによる除草(YouTube)
自動搾乳機(YouTube)
アクアポニックス゠システムがたった3エーカー(12140.57㎡)で毎年百万ポンド(453592.3㎏)の食料を創り出す(YouTube)

47.このテクノロジーの実例は以下の通り:
集約型太陽光発電(YouTube)(再生できない)
太陽光エネルギーの夜間蓄電
熱分解
大型風力発電機データシート(トップページにリダイレクトされる)
ブルーム水素燃料電池データシート(リンク切れ)
ブルーム燃料電池のプレゼン(YouTube)

48.バイオ炭の情報(リンク切れ)
熱分解処理装置(リンク切れ)

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