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ベンチャー型事業承継とは何か?「劇的再建」

「劇的再建・非合理な決断が会社を救う」山野千枝著・新潮社2024年1月発行

著者は1069年生まれ、2000年中小企業支援拠点「大阪産業創造館」設立に参加。ビジネス情報誌編集長として中小企業経営者を取材。「ベンチャー型事業承継」を提唱。デザイン会社、社史制作の㈱千年治商店代表。関西大学非常勤講師として「アトツギ白熱教室」ゼミを担当する。

本書は、著者運営の一般社団法人・ベンチャー型事業承継が行う同族会社の後継者の事業展開支援、環境整備に取り組んだ過程での中小企業「アトツギ」の奮闘、裸の記録である。

「ベンチャー型事業承継」とは事業承継とスタートアップの中間領域を言う。事業承継が予定されたアトツギでなく、準備なくアトツギをなった後継者の事業再建の記録が語られる。

倒産寸前の先代の後を継ぎ、奮闘する姿。そこでの決断は非合理的である。合理的なやり方では再建、生き残りは出来ないからだ。

決断は一人ぼっちの決断である。しかし夢中で活動しておれば、誰かが見ており、聞いてくれる。必要なのは社員に対する信頼と彼らを何より大切する気持ちだろう。地獄でも神風は吹く。

著者は、ユニコーン企業(時価総額10億ドル超の未上場企業)1社より、家業ビジネスの伸長を10倍にするアトツギが1000人誕生した方が日本は豊かになると主張する。事業所数の98%が中小企業、就労者の7割以上が中小企業に勤める。中小企業こそ日本経済の原動力である。

日本は世界的に長寿企業が多い。長寿企業は企業の成長より存続を重視する。そこに家族的組織、信頼関係が生まれる。だからと言って、閉鎖的ではない。開発、イノベーションにも積極的である。最大の課題が後継者不足問題である。

そのための環境整備、制度整備、金融支援が必要である。金融機関は将来性より保全、安全性に偏る融資姿勢を取り勝ちである。金融機関の意識改革が必要である。そのためには金融機関に収益余力も必要。低金利で金融抑圧されては支援もできない。

アトツギに必要なのは、先代、古参社員とは異なる優位性を持つこと。新しい時代観、感覚である。経営資源を棚卸して、自社の強みに基軸を置く。これからの時代×自分らしさ=新しい事業領域の創造の算式である。そこでの責任を取るとは、最後までやり切ることであろう。

アトツギは決して、後継者として教育を受けた者は多くない。ただの若者である。しかし本業を学び、夢中で動くことによって、新規事業に挑戦する能力を獲得できる。それこそがベンチャー型事業承継そのものである。


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