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コンビニの日常「コンビニオーナーぎりぎり日記」

「コンビニオーナーぎりぎり日記」仁科充乃著・三五館新社2023年8月発行

著者は夫婦で経営する大手系列のコンビニ店舗のオーナー。1960年代生まれ、30歳代で開業、30年間毎日店頭に立ち続け、60歳代になる女性である。

まえがきに「本日で1057連勤」とある。即ち、1057日連続勤務、3年近く、1日も休んでいないとの意味。24時間営業、オーナー経営者とはいえ、一般では考えられない激務である。

コンビニにはあらゆる種類のお客が来店する。店長の土下座事件が話題となった。カスタマーハラスメントは日常茶飯事。それでも笑顔を保つ商売。夜間はワンオペ勤務、日に何回も食品納品、陳列と時間との戦い。著者は人間不信・人間恐怖になると言う。

消費者として身近な存在でありながら、その実態はあまり知られていない。ゴミ処理(月3万円要するという)ペットボトルのキャップを外す手間が大変とある。キャップを外し、中身をキレイにして捨てることで店舗が大いに助かることを初めて知った。

働き方改革の中、経営者の平均年齢は53.2歳、平均加盟年数14.2年、60歳で廃業する人が多い。オーナーの勤務日数が週6.3日、年間休暇日数21.3日、1日13時間勤務も当たり前、深夜勤務もあれば、体力勝負の経営、高齢では続けられない商売である。

コンビニは弁当の賞味期限廃棄が問題となっている。値引き販売が禁止されている。著者家庭の食費は廃棄食品ですべて賄える。「母親の味」はコンビニ弁当の味、笑えられない現実である。

店舗乱立で売上は減少傾向。電気代は増加一方、廃棄食品の仕入原価はオーナー利益から差し引かれる。廃棄発生の有無で大きく利益は減少する。著者は、「コンビニ経営はギャンブル商売」と言う。

競合激化でも、本部ロイヤリティーの全体は増加する。店舗タイプによって、純利益の70~45%がロイヤリティーとして抜かれる。生かさず殺さず。一種の奴隷制に近い。

厳しい経営実態にも関わらず、ほのぼのとした小さな親切、人間関係のエピソード、地元住民との交流が描かれ、読書後にさわやかさが残る。著者の人間性であろう。ぜひ、一読をお薦めする。

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