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米国はIT覇権競争で中国に勝てるか?

「内側から見たAI大国中国」福田直之著・朝日新書2021年4月発行

著者は1980年生まれ、朝日新聞経済記者、2017年~2020年まで北京特派員を経験する。

中国は、社会主義と市場経済の二つを操作し、人口14億人のエネルギーで米国と技術覇権争いを展開する。AI技術で2030年には世界トップが予想される。停滞30年の日本はどうすべきか?

6月4日経産省は「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。官僚主導、政府中心の産業支援策に未来はあるのか?

AI技術では、中国はデータ量、AI技術の社会利用分野で米国より有利である。ハード、ソフトライブラリー、人材、技術研究では米国が勝っている。

最大の弱点は「高性能半導体技術」高性能半導体を作れる企業は中国本土にない。世界最大企業は台湾の「TSMC」である。「TSMC」は世界半導体シェアー54%を占め、台湾メーカー4社で63%を独占する。

中国半導体メーカーシェアーは世界第5位。「中国製造2025」で2025年世界の製造強国仲間入りを目指す。

半導体自給率2020年目標40%、2025年目標70%も、2020年実績15.9%、2025年予定も19.4%と厳しい状況にある。

習近平の軍事的台湾統一による地政学的リスクの存在が理解できる。中国のGDPは2030年には米国を追い抜く。

AI技術も自動運転、監視カメラ、宇宙開発技術でも米国レベルに近づいている。米中AI技術覇権争いは更に激化する。

米国には「6割法則」がある。他国が米国の国力の6割に近づくと徹底的に他国を圧迫する法則。

1988年、日本のGDPは米国の58%となった。1986年、日本半導体シェアーは50%を超えた。その頃、日米貿易摩擦、半導体摩擦が起きた。

中国はこの法則を警戒する。中国最大の輸出国は米国、トランプの関税戦争が起きた。

結果、中国は東南アジア、アフリカに輸出を伸ばす。世界の中国を生み出した。一帯一路、世界の工場として、経済を利用した地政学的安全保障、国益重視に重点を置く。

中国のハイテク企業はすべて民営企業。「国進民退」構想で民営企業を国営企業が買う動きが進む。国家安全法がバックアップする。トップダウンのイノベーションである。

「AI技術の進歩で、市場経済より計画経済が有利」と言う人もいる。政府主導の日本半導体産業の失敗、ノーリスクで、責任を負わないイノベーションが成功するか疑問である。

日本との違いは、中国は、ハイテク眼鏡の「LLビジョン」、コロナ肺炎探知AI技術を開発の「推想科技」創業者らは皆、43歳、33歳の若者。政治的には別に、若者活力への期待が大きく異なる。

経産省若手キャリアの給付金詐欺がニュースになった。日本の若者の活力、将来、好奇心に期待できるだろうか?

東芝の株主総会でも半導体メモリー事業売却、コーポレートガバナンスに大きな問題を残した。ここにも経産省の影がある。

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