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イスラエル問題とは何か?「世界史の中のイスラエル問題」

「世界史の中のイスラエル問題」臼杵陽著・講談社現代新書2013年1月発行

著者は1956年生まれ、日本女子大学教授。専門は現代中東政治、パレスチナ問題。

本書は、現在のイスラエル・パレスチナ紛争を世界史的視点から述べたもの。本質はヨーロッパ・キリスト教社会の歴史的差別の潮流とユダヤ民族による国民国家建設にある。対立の根拠を古代聖書学まで動員され、人為的構図が根底に存在する。

中東問題の本質は第一次大戦後のオスマン帝国戦後処理から始まる。欧州帝国主義国家の植民地政策の結果から生まれた。

即ち、イタリアのサンレモで開催された列強による中東分割とユダヤ国家建設承認である。会議に日本も参加した。日本も当事者である。

イスラエル・パレスチナ問題に日本は中立的と言われるが、決してそうではない。明らかに日本の手は汚れている。日本は明治以降、脱亜入欧思想の流れと大アジア主義から朝鮮占領を太平洋戦争終戦まで継続した。

イスラエルのパレスチナ入植、占領と同じ行為を日本も実施した。その背景のあるのは差別的人種主義であり、植民地主義である。イスラエル・パレスチナ問題を遠い国の関係ない出来事、日本の手は汚れていないと安易に考えてはならない。

ユダヤ教とキリスト教の歴史、欧州の宗教観、キリスト教・イスラム教一神教の対立、冷戦終結後イスラム脅威現象の出現、対テロ戦争など様々な要素が入り組んでいる。

本書は、中東問題、パレスチナ問題を考えるのに最適な基本書である。米国、イスラエルに偏った思考形態、メディア報道は一方に偏向している。もう一度、多様な世界史的視点からパレスチナを考え直すことが重要である。

現在のガザに対するイスラエル攻撃はジェノサイドそのものである。どう理屈付けしても大量虐殺である。イスラエルの目的は民族浄化、パレスチナ人のパレスチナ地域から排除、抹殺である。同時に米国、日本ら国際社会のダブルスタンダードも明らかである。

イスラエルの国際法違反、安保理違反は不問に付し、日本メディアも米国に都合悪いことは報道しない。国際社会も長年放置してきた。その責任は大きい。イスラエルは世界トップの諜報国家、情報戦で自己の正当化のため、偽情報を流す。日本メデェアはそのまま流すだけ。

政治解説者、知識人は簡単に暴力の連鎖、憎しみの連鎖の言葉の羅列で誤魔化してはならない。本質に近づく努力しない人の多さに悲しみがさらに増大する。

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