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生物は死ぬから生きる価値がある!

「生物はなぜ死ぬのか?」小林武彦著・講談社現代新書2021年4月発行

著者は1963年生まれ、東京大学定量生命科学研究所教授、ゲノム解析と生命の連続性を研究する学者。

「生物はどのように死んでいくのか?」「なぜ死ぬのか?」「なぜ絶滅するのか?」を問う。答えは生物の進化が生き物を作り、同時に死ぬことも進化が作った結果である。生も死も進化と表裏一体。

アマゾンのサルは木の上から降りず、進化が止まった。アフリカのサルは木から降り、霊長類に進化した。

進化は、古代、地球環境の安定化で、生き物を独占から共存へ、量から質へ変化させた。

進化の原因は有機物である。特にアミノ酸、核酸の影響が大きい。核酸にはリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)の二つがある。

DNAは遺伝で自己複製する。安定した遺伝子である。一方、RNAは不安定で、変化しやすく、自己編集で変化する。コロナウイルスが変質するのもこのためだ。

世の中に生物は約800万種ある。古代より天候異変、火山活動、隕石衝突などで多くの生物が絶滅した。現在は大量絶滅時代に突入している。

生物800万種のうち、ここ100年以内に100万種が絶滅すると言う。生命の多様性は地球の価値、魅力である。今、ヒトが地球環境を破壊しようとしている。

医療が発達して人間の寿命も伸びた。縄文時代の寿命は15歳、政治が安定した平安時代は31歳、江戸時代は38歳。現在、男81歳、女87歳。近代化の明治以降一気に伸びた。

「人間はいくつまで生きられるか?」答えは115歳。日本で100歳以上は8万人、115歳以上は11人しかいない。

人間の細胞は50回分裂すると老化して死ぬ。死とは細胞の老化。細胞の老化はガン化リスクを増やす。老化を55歳以降は止められない。もう再生しないからだ。あとは運に任せるだけ。

生き物の死は「食われて死ぬか?」「食えなくて餓死するか?」どちらかである。

小さい生き物は大きな生き物に食われる。大きな生き物は老化で食えなくなって死ぬ。「死のプログラム」は確実に存在する。

死は生命の連続性維持の原動力。死は悪でなく、生き物にとって必須なものである。

仏教に「生死一如」の言葉がある。死があるからこそ、今日一日生きる意味がある。死から目を背けず、生きることが大切。

AI時代「進歩するAI、考えるAI」が出現した。このAIは機械ではない。エイリアンである。エイリアンは死なない。

ヒトは死ぬからこそ、生きる価値がある。科学進歩は、必ずしも生き物に繁栄をもたらさない。このことを知った本である。

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