2023/6/20 バッターボックスに入る

今日は個人的な連絡から始めたい。

20日のライブにお越しいただいて、毎週水曜あたりのポッドキャストを楽しみにしていますとおっしゃってくだすった方へ。
今日あがるとは思いますが、録音に失敗して音質が最悪です。申し訳ありません。

今日は11時に起きた。昨晩も遅くまで起きていた。
なんとか、ほぼネタを二本準備できた。起きてからもう一度、ネタを見直す。いつも勢いでネタを書ききるのだが、一晩経って見直すと大きな誤りに気付いたりするものだ。
そのため、一度眠った後にもう一度見直すのが必要である。漫才を作るときに特に私が気を付けているのは、台本上の日本語のミスと、情報のミスはしないようにすることである。

漫才が基本的にボケとツッコミで構成されている中で、ボケは世間(お客さん)とのズレであり、ツッコミは世間(お客さん)の代弁である。もしボケが言葉を間違ってしまえば、意図せぬボケとなってしまう。ツッコミが言葉を間違えれば、本来代弁者だと思って見ていたのに突然、ボケたと思われてしまう。そうなれば一気に漫才が見にくくなる。

情報の間違いも気を付けたい。さきほどのボケ、ツッコミの話にもかかっている。情報の間違いは漫才全体の説得力がなくなってしまう。
また、漫才は古今東西のものをネタにする。古今東西のものを扱うならば、リスペクトをもってそれらに接さなければいけない。情報を間違ってしまうということは、リスペクトがなく、それらをいたずらにおもちゃにしているように見えて笑えない。

例えばコンビニコント漫才をやるときを考える。変な店員というボケで展開していくならかなり慎重にならなければいけない。
現実のコンビニを想像すれば、バイトとはいえ履歴書を自分で書いて持参したうえで店長との面接もあるだろうし、3か月の研修期間があったりと幾つかの関門を乗り越えた方がレジに立っているしバックヤードで作業をしている。
なんとなくこんなことを店員がやったら、意外じゃね?とボケを作っていくと、そもそも面接で落とされているはずだろうと違和感と矛盾が発生してしまう。コンビニコント漫才であれば、客がボケるほうが配慮のレベルが数段階下がってやりやすい。
会場の多くの人がコンビニの店員以外の仕事をしている。普段はお客さんとしてコンビニとかかわっている。またコンビニであきらかに変な人と遭遇したことも1度や2度はある。漫才内のこんな変な人も、お客さんとしている可能性がまったくの0であるとは言い切れないところがおかしみにつながってくることもある。


養成所の授業みたいになってしまった。養成所に行ったことが無いけども。
たぶんこういうことを養成所はやっているんじゃあないかと想像している。これはリスペクトとディスリスペクトの隙間だ。

今日は夜に高円寺で漫才協会の若手が集まってライブを行った。とても良い会になった。やはりみんなレベルが上がっていっていると思う。
もちろんまだまだ、我々も含めてへたくそであるが(ミーナは優勝者なので上手い)、徐々に徐々に上達している。

漫才が楽しいのはこれである。私は何度も言うが野球を見るのもやるのも好きである。見るうえで楽しいのはやはり選手の成長と進化である。
最近特に楽しいのは、ジャイアンツの秋広選手だ。秋広選手は入団当初から、身長2m越えの大型新人として注目されていた。背番号は55番。巨人ファンの誰しもが活躍を期待して見てきた。一方で、巨人でちゃんと成長できるのかどきどきしながら見ていた。
かつて、巨人はドラフト1位で大田泰示選手を獲得した。大柄な体格でパワーは新人離れしていると言われ、彼も松井秀喜氏の負っていた55番を背負った。しかしどんどん打撃フォームが縮こまっていき活躍できないまま他球団に移籍した。
さまざまな理由があるうちの一つに、アドバイス好きな大物OBからいろいろと言われて活躍できなかったと言われている。巨人は歴史がある分、いろいろな(中には時代錯誤な)アドバイスがかけられる。それによって真面目な昨今の選手は混乱して成長し辛いと言われている。

さらに一方で、太田選手と真逆の育成をされた選手にソフトバンクの柳田選手がいる。柳田選手は広島経済大学という野球の名門校とは言えない大学で野球をやっていた。体も大きく、こちらもフィジカル面では新人離れしていた。しかし、打率が振るわない。パワーがあってもボールに当たらなければそのパワーも意味を持たない。

ある日、王会長が柳田選手を見て、「彼にコンパクトな打撃は教えるな」とおっしゃったという。普通のコーチや監督ならば、せっかくパワーがあるのだからコンパクトに当てることさえできれば、ヒットも量産できるだろうと考え、教えてあげたくなる。王会長はそのコーチングを制してとにかく思いっきり振らせるように指示したのだ。
その結果どうだろう。圧倒的なパワーをつけていった柳田選手は日本人選手では考えられないほどのパワーを身に着け、バットにこすった打球すら柵越えするまでに育った。バットに当てるテクニックはあとからでも身に着く。柳田選手は圧倒的なパワーを手に入れたのちにヒットも量産できるようになり、日本を代表する外野手まで成長した。

話が遠回りしたが、この秋広選手が果たして太田選手のようになるのか、柳田選手のようになるのか、我々巨人ファンは緊張しながら見守ってきた。

現在、秋広選手は高卒3年目にして主力選手となり3割を超える打率と4本の本塁打を放っている。いまのところを見れば、秋広選手は着実に成長している。ファンは一安心である。
この気持ちの揺さぶられ方が、野球の面白いところである。

漫才に話を戻せば、まさに漫才もそのような気持ちの揺さぶられがおもしろい。プレイヤーとして自分はどこまで成長できるのか、成長できないかもしれないという緊張感。
そして、ほかの若手たちがどんどん漫才が上手になっていく様。これらはまさにプロ野球と一緒で、ルーキーがどのように成長していくのかも楽しいのである。

はあ?である。どうでもいい話である。

そんなこんなで、今日も漫才を二本披露した。どれだけ悩んで作っても、なんだか足りないなあ、つまんねえことばっかり言ってるなあと自分が嫌になるものだ。
また野球で例えれば、どんな名選手でも打率は3割程度であり、7割は凡退している。はたから見てすごくても、選手は常にふがいないと思いながら打席に立っているのではないだろうか。
良い漫才だったと声をかけていただけることもある。プロ野球選手に自分を重ねるのはあまりにおこがましいが、良かったと言われても7割くらい失敗してるなあ、申し訳ないなあとなるわけだ。

今の我々の漫才、体感打撃成績で言えば

.075 0本 2点

くらいだろう。ありがたいもので、打席はたくさんいただいている。でも打てないからこんな打撃成績が大スクリーンに映し出されながら打席に入る。
投手よりも打撃成績が悪い。これはつまり、打撃(笑い)を期待されていない選手以下である。たしかに、イケメン俳優やグラビアアイドルの方がふとした一言で爆笑を生んだりする。

ああ、お笑いは野球であることよ。


ライブを終えると、ありがたいことに大学生という信じられないほど若い方が話しかけてくださった。

いつもポッドキャスト聞いています。いつもは寄席を見に行っているので、こういうライブは初めてで緊張しましたがとても楽しかったです。

などなど、たいへん嬉しい言葉をいただいた。こうやって応援してくださるかたがいるからこそ、私は今日も素振りをして走りこんでいけるのである。
でも、今日のポッドキャストはアップされるだろうが、音質が最悪である。お耳汚し失礼します。
これに懲りずに球場に来ていただければと思います。次の打席こそヒットが打てるように、なんならホームランが出るように頑張ります。

今日面白いと思ったことは「とんとん拍子のお二人の二本目は新ネタではなくアリネタであったというタレコミがあった」


こんなつらい人生。ここに空き缶を置いておきます。