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冬のライオン

舞台「冬のライオン」 東京芸術劇場
2022年2月26日~3月15日
演出:森新太郎 主演:佐々木蔵之介

緻密に計算し尽くされた芸術作品のようでありながら、まるで最初から人の手など加わっていなかったかのようにその人たち本来の言葉が滝のように押し寄せてくる、ナチュラルな会話劇。
もうもうめちゃくちゃ面白かった!!
息つく暇もない会話の応酬のおかげで観劇後は疲労感を覚えるほどなんですが、彼らの発する言葉を聞き漏らしたくなくて気付いたら3回追いチケしていました。

舞台は1183年のフランス・シノン城。イングランド国王ヘンリー二世の息子3人のうち、跡目を継ぐのは誰かを決めるべく、家族や敵国の国王らが一堂に会する。
順当に考えれば長男が継ぐんじゃないの?と思いきや、そこには様々な人物の思惑が複雑に絡み合い、はいじゃあ長男で決定!とはいきません。というか結局、物語中では継承者が決まりません(笑)
登場人物の誰もが渇望にも近い欲を隠し持ち、時に陰謀を企て、言葉巧みに人を操り、目まぐるしく戦局が逆転していくところに会話劇ならではの面白さを感じました!

以下はTwitterに書いてた感想と被る部分もあるのですが、取り留めなく垂れ流していきます。

まず舞台セットがすごかった…。出捌けする場所(なんて言うの?)にも壁と扉がちゃんと作られていて、舞台上に城の一室がすっぽり入り込んでいるような構造でした。
あとバイユーのタペストリーが引き幕として使用されていたのも雰囲気があって好きでした。
(世界史知識が皆無なのでそもそもバイユーのタペストリーというものを知らなかったんですが、ツイッターでそう呟かれている方を見かけて調べることができました🙇‍♀️ツイッターってすごい)

この「冬のライオン」は前述の通り12世紀が舞台となっているのですが、実は現代劇なのでは?と思わせる部分もあります。
まず劇中で、シェイクスピア作品のセリフが多々引用されている点。彼は17世紀の詩人なので、「時代が違うじゃんか!」と最初は引っかかりました。けれどこの時代を超えた引用こそが、この作品が現代劇であることの証明になっているようにも感じられて面白かったです。(実際は単なるメタフィクションだとは思いますが…)

あとは衣装が革ジャンやらスーツやらメガネやらで色々と新しいです。でもちゃんとキャラクターの性質に合っていて、見ていて物凄くわかりやすかった。特に末っ子のジョン!何もできやしないのに威勢だけは良くて父親から愛されてる一点を誇りに思っているチンピラ的愛らしさが革ジャン姿に詰め込まれてて最高でした。長男リチャードも、宿る欲望をメガネで押し隠しているようないじらしさ(いじらしさ)があって素敵。
彼らの言い分を集約すると結局みんなシンプルに「愛情が欲しかった」に帰結するのも、国とか時代とか権力とか関係なく2022年に生きる私にも共感できる内容でなんか良いな…と思いました。

それからなんと言っても佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんの言い合いが物凄かった…。劇なんだけど劇に感じられなくて、もはや本物の夫婦の会話のよう。この作品にここまでハマれたのも、核となる夫婦の争いに没入できたからだと思います。会話だけで魅せるとはこういうことなんだと、何度も感銘を受けました。
私の解釈では、やはりもうヘンリーはエレノアに対して男女(夫婦)としての愛情は抱けないのではと思います。けれどそうではない情、いい例えが見つからないけど強いて言うなら恩情のようなものは、二人が手に手を取って歩いていく姿にも見えました。これも夫婦の形だなと。二人も言っていたように、何もかもを失ってしまったけど希望の残る、後味の良いお芝居でした。

和樹さん久々のストプレだったけど、こんなに素晴らしい作品を見せてくださって…嬉しかったなぁ…。
和樹さんの持ち味としての硬質さが、今回のリチャード役にピッタリだったと思う。クソ真面目で面白いこと言えない、けれどそこが却って面白い……。
和樹さんのお芝居が大好きなので、今回ストレートに演技を浴びれて本当に楽しかったです!
9月にもストプレが決まったので嬉しい〜〜〜ラブコメ楽しみ〜〜〜!

今日の一曲
クリスマスのお話だからクリスマスソングメドレー聴きながら書きました(適当)

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