地球の果ての、パタゴニアのWルート
南米に広がるパタゴニア
パイネ国立公園の、Wルート
4泊5日の衣食住を持ち、大自然を進む。
80キロを超える距離を、重さ15キロほどの荷物を持ち、歩ききってきた。
山旅のはじまり
近くの街、プエルトナタレスからバスで2時間ほど。まずはアマルガ湖という場所で受付。
"W" Trailにチェックした時は胸が高鳴った
そこから再びバスに乗り、船で最初の拠点、パイネ・グランデへと向かう。船からはさっそく、絶景が出迎えてくれた。
いろんな国の言葉が飛び交う。
きっとみんな、「すげー」とか、「綺麗」とか、同じ気持ちで感動してるのだろうなと思う。世界のみんなが、この自然を美しいと思うことが、最高だ。
そして30分ほどの船旅を終え、4泊5日の山旅がはじまった。
たくさんの絶景があった
雄大にそびえる山々は同じ表情見せることはなく、力強さを示していた。その山容には、何度も興奮した。
道沿いにいくつも点在する湖の色はミルキーブルーに輝き、近くによるとわかるその透明度に何度も感動した。
渓谷を流れる川は龍のように流れ続き、顔を何度も洗った。「おれは生きているぞ」とその冷たさに何回も感じさせられた。
氷河が崩れる時と雪崩が起きる時は、どちらも同じように雷鳴のような轟音が響くことを初めて知った。
そして道はどこまでも続いていた。
たくさんの出会いがあった
携帯も水筒もマップも全て失くしてしまったブラジル人の、その全てのアイテムをたまたま自分が見つけて届けてあげて、ふたりで笑った。
氷河で出会ったスペイン人は、NHKのスペイン語講座の先生で驚いた。
たまに、おおきく道を譲ることがある。
険しい山道を物ともせず、馬たちが物資を運んでいるからだ。
何度もすれ違うオランダ人夫婦とアメリカ人とは夜毎お互いの苦労をねぎらい、旧知の仲のように語り合った。こちらのスピードに、「ヘリでも使ったのか」とからかわれた。
空を見上げると、コンドルが大きな翼を広げて岩陰へと飛んでいった。
耳が聞こえず手話で話すアルゼンチン人との出会いは、自分の人生でやるべきことを導いてくれた。
その人は足を怪我していた。ひどい靴擦れを起こしていたのだ。そこでせめて、バックパックを持ってあげることにした。残りの山道は、8キロ以上。その人はすでに、100キロ以上を歩いてきていた。Wより上の、circleというコースだ。
道の途中、その人がトレッキングシューズからサンダルに替えた。そしてそのトレッキングシューズを崖下に投げる素振りをしておどけてみせた。そして、飛行機の真似をして稜線を走っていったのだ。
その姿はこのWルートで、どんな絶景よりも感動した出来事になった。終わったいまでも、涙が出そうだ。
僕は、山で困っている人を助けたい。この時に、本気でそう思った。
すべてのアウトドア好きに勧めたい
Wルートは、見所だらけだ。
グレイ氷河、フランセス谷、ブリタニコ展望台、トーレス・デル・パイネ…。
もちろん、本当に美しいし、達成感もある。でもそれ以上に、名前のない何気ない道に心震えたりする。
膝が痛くなったりもした。
朝起きたら身体中がバキバキになって大丈夫か今日と思う毎日だった。
それでも進むと見えてくる美しい地球が、すべてを癒してくれるように、僕を励ましてくれた。
歩ききってよかった。世界一好きな場所はここだ。間違いなく、僕はここが大好きだ。
きっと、また来ると思う。最終日の早朝、このルートの象徴、トーレス・デル・パイネは燃えなかった。
完全に焦らされた。また来て欲しいんだな、こいつめという気持ちでお別れした。そう、必ずまたここに来るのだ。日本の裏側の、地球の果ての、嵐の大地に、僕は必ず、また来る。
✈︎
パッキングが得意というかスキです。