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DNF! 2024 Mt.FUJI 100

2015年UTMF以来となる、9年振りの100マイルレース完走に向けて、2024 Mt. FUJI 100に挑戦してきました。

※2024年5月2日追記:トレーニングデータの振り返りを追記しました。


このチャレンジの背景

当初は、比叡山や甲州アルプスと同様に山に行かずに100マイルトレイルにどこまで対応できるのかを試していく予定でした。ですが、後述するように一月初旬に故障をしたことに伴い、故障をマネジメントしつつ100マイルトレイルにどう合わせていくか、に焦点が変わりました。

Mt. FUJI 100 (Ultra Trail Mount Fuji)は自分にとって思い入れのある大会です。2013年では初めてDNFを経験し、2014年では国際大会となった本大会で初入賞することができました。2015年も連続入賞、2016年はコース短縮で11位、2018からの新コースはDNFといった戦績です。そこから骨折やコロナ等でレースその者から遠ざかっていましたが、そろそろもう一度100マイルにチャレンジしてみようと思った時に諸条件が一致したのが、FUJI100でした。50マイル、100kmと距離を伸ばせつつあるので、順当にここもクリアーしたいという想いでした。

故障について

甲州アルプスのレース後、思ったより全身疲労的なものは強くなくリカバリーも3週間くらいでできてしまった感覚がありました。そのため、FUJIまで4.5ヶ月程度しかないこともあり、年末年始にかけて想定よりもテンポ良く練習が詰めていました。一方で、当時の記録を振り返ると、左脹脛とハムストがスピードを出すとピリッとするとか、右足の足底の張りやラン後の違和感等がとれずテーピングで補強しながらといった状態でした。今思えば、このタイミングで根本的な治療をしっかりすべきでした。

1月初旬から右足の腓骨筋腱鞘炎と思われる症状が発生し、1月13日から明確な痛みになり走ることができなくなりました。歩いていても痛いレベルになり、これは久しぶりにやってしまったなーと。当初は1週間か2週間くらいあれば何とかなるかなと思っていましたが、結果的に何ともならず色々ケアしたり模索し最終的にカッサを使ってゴリゴリやることで何とか走れるようになったのが、3月下旬頃からという状態でした。1週間以上の長期に渡るような故障は2013年以来、11年振りです。気持ち的にも入れ込み過ぎてしまった所があったのかなと思います。

故障中の対応について

対応の方針

故障(痛み)をして即座に考えたのは2案です。一つ目は、トレーニングを一度全て中断して休養することです。二つ目は痛みがでず故障箇所が悪化しない範囲でクロストレーニングを続けることです。前者を選べば早期の回復が見込めるかもしれませんが、フィットネスも同時に急激に失います。少なく見積もって一ヶ月も完全に休めば、もうその時点でかなり厳しいことは目に見えていました。後者を選べば、回復は遅くなりますが、ある程度のフィットネスは維持することが期待できます。どちらにしろギャンブルですが、どうせやるならと思って結果的に後者を選択しました。トレーニングボリュームは基本的におとさず、というかラントレーニングをしていた場合に増やしていったであろうボリュームをバイクトレーニングで実践していった形です。

故障中のクロストレーニングについて

そこからは、ランニングの代わりにひたすらZwiftをやり込みました。ワークアウトでスピード練習の代わりにVo2MAX系のメニューを、トレッドミルの代わりにLTインターバルを、といった具合にランメニューを置き換えるようなイメージでやっていました。早朝のトレーニングが終わってもまだ薄暗かったのに、気づけば明るい時間が増え変なところで季節の移ろいを感じてしまっていました。なお、痛みは出ないですが、故障箇所が故障箇所だけに全く腱を使わないということもないので、バイクトレーニングが終われば腱鞘炎の反応もあるにはあるといった感じ。100で全回復として、毎日5回復するけど2か3くらい削られるみたいなイメージでしょうか。ちなみにジョグをちゃんとやろうとすると回復に必要なのが100から120くらいになるイメージです。1月後半からくらいから痛みが悪化しない範囲で5kmをキロ6分〜6分半くらいなら大丈夫になってきたので、メンタルケアの意味も含めて週間20−30kmくらいは走っていました。

結果的に、Zwiftやりこみは一つ大きな発見をもたらしました。それは、登りがとても楽になったことです。少し故障箇所の調子が良くなった際、トレッドミル傾斜走を試しましたが、その際、明らかに以前より登りが楽になっていることに気づきました。単純に走っていなかったらから疲労が抜けただけでは?という指摘も考えましたが、ランニング再開後もその感覚は継続し階段トレーニングもいつもより長く・回数多くこなせるようになりました。またレース当日の天子岳での登りでもそれは実感できました。レース中でしたがほんの少しパワーハイクをやめてステップを刻んで走ってみましたが、明らかに登りの調子が良い!なお、甲州アルプスの際にはステップを刻んで登れるイメージはなく、この時バイクトレーニングはやってなかったので、この点はは自分にとって明らかだと思います。問題点としてはZwiftの何がこの登りの調子の良さに繋がったかです。特定のメニューなのか一定期間取り組んだことなのか単に刺激で十分なのか。この点はまだ良くわかっていません。一方で、実は個人的に調子が良かったり結果の出たレースについて幸か不幸かクロストレーニングを直前期の1−2ヶ月前くらいに入れていたパターンは実はありました。例えば2013UTMB前に6月のアイアンマンレースと直前の脚の故障のためにバイクと水泳にかなりの比重を置いて練習していたり。これらのことから明確に意図しクロストレーニングを比重高くやる時期を入れてみるというのは有りではないか考えています。

故障の治療

今回は、基本的にセルフケアで対応することにしました。基本的なストレッチだったりフォームローラー・マッサージガンなどできることはやっているつもりでしたが、前述のようにクロストレーニングをしていることもあり、中々治りが悪いと感じていました。最終的に色々調べたり試しているうちに、カッサをやっていなかったなと思い出しスキンストレッチを使って当該箇所をゴシゴシ・ゴリゴリほぐす(というより削る?)イメージで処置していきました。2月下旬か末くらいにカッサを使うことをYoutubeで発見して半信半疑で試したら良くなりました。3月12日から本格的なジョグを再開させることができました。ただし、スピードを出すのは怖いので坂ダッシュのようなことはせず、代わりに週1回のバイクトレーニングは継続しました。
ちなみに、カッサ(スキンストレッチ)は改めて使ってみると、リカバリー目的としても結構優秀なことがわかり、継続的に活用していこうと思っています。元々知識として知ってはいたけど、ちゃんと実践できていなかったというやつですね。

ラントレーニング再開後(3月12日以降)

対応の方針

前述の通り一部のメニューの実践には故障悪化の可能性があったため、一部バイクトレーニングを残しつつラントレーニングを再開しました。いきなり全部をバイク→ランにするのではなく、徐々にバイクとランの比重と負荷を逆転させるようなイメージですね。トレーニングボリュームはZwiftやってた時は週間12時間くらい、ラン再開後は13-15時間くらいでした。なお、トレーニング時間を落とさなかった効能としては、レース中に脚は終わってしまっていたけど、心拍や疲労感には余裕を感じられた点があります。スタミナ自体は甲州アルプスの際より明らかに上がっていたと思います。実際、甲州アルプス時は7−8時間で最初の疲労のピークがきましたが、今回は脚部を除いた疲労感というものはなかったです。

第二の故障と胃腸炎

3月30日に痛恨のテーピング忘れで、今度は左足の前脛骨筋の炎症をやらかしました。右足も完治したかどうか微妙なところなので、バランス悪くなり色々併発する可能性はあるとは思っていたので、驚きはあまりなかったです。しかし、ここも悪化させないようにバイクトレーニングに1日ピンポイントで置き換えたりそういう工夫はしました。

その1週間後には胃腸炎を発症。一日休んだだけで済みましたが、こう連続すると流石にちょっと無理かもなーという思考が頭をよぎるものです。すぐに気にしないようにしましたが。

ピーキングとテーパリング

定石が通用する状況でもないので、思い切って5週間負荷と量を上げて、残り12日で一気に落とす(ピーク時の45-20%前後)という方法をとってみました。今までは2-3週間かけて徐々に負荷を下げる方法を好んで採用していました。が、甲州アルプスの際は思ったより疲労が取れにくかったのと時間も短かったですし、このような方法はテーパリング関連の書籍等で見たこともあり試してみたかったのです。結果、これについては可もなく不可もなくという感じでした。調整で仕上がりきった感はあんまりなかったですが、客観的な直前のジョグのタイムとか当日の走り出しの感じからすると、甲州アルプスの際よりはマシかなと感じました。なので、この方法もまぁありかなと思います。いずれにせよ新しい試みをして経験値が一つ増えたという意味では良かったです。

甲州アルプス時との比較

非常にざっくりですが、週間トレーニングは以下のような違い。

週間トレーニング比較

大きな差は火曜日がランかバイクか、日曜日の荷重トレミかバイクかになります。これだけみるとそこまで劇的な大きな差はさそうにも思えます。なお、クロストレーニングを追加することで全体的な運動時間はFUJIの方が多いです。フラットパートや平坦なロードで脚が削られたことを考えると、やはり数ヶ月単位でのラントレーニングの不足であったり、累積標高の獲得が不足したように感じます。

レースレポート

レースのリザルト

115km地点の忍野エイドにてDNF

レースのプランニング

順当にいけば、24時間ゴール、順位は結果論ですが20位前後くらいを狙えればというイメージでした。各エイド毎にトップ選手プラス30分ずつくらいなイメージです。もっとざっくり、麓6:00, 北麓公園12:00, きらら16:00, ゴール24:00みたいな。

当日まで(主に睡眠について)

当日は仮眠バスツアーを予約しており、15:00に宿チェックイン、15:30-17:30, 18:00-21:30で寝れました。途中30分は起きてしまいましたが、大きな影響はなかったと思います。22:15に宿出発、途中バスの中で15分くらい寝て、22:45頃に会場着。スッキリした状態だったの睡眠的には十分取れたと思います。スタートしても時差ボケのようなだるさなども特にありませんでしたし、DNF直前でダレて日中(14時頃)ぼーっとするまでは覚醒状態が続いていました。推測になってしまいますが、動けていれば今回は夜中(24時以降)ゴールでもそこまで睡眠は問題にならなかったのかもしれません。

レースの振り返り

スタートして富士宮エイドまでは絶対に飛ばしてはいけない林道コース。西方くんや岩垂さんと並走・前後しつつも決して飛ばさないようにマイペースで進んでいたつもりでした。ちなみに一人めちゃくちゃマイペースでどっしり構えたいい走りをする選手がいるなと思っていたのですが、結果9位でゴールした佐口選手でした。ものの数分並走させて頂いた程度ですが、個人的には理想的な走りのスタイルだなと思いました。

富士宮エイドは2:20くらいでいければと思っていたので、ほぼ想定通り。天子も思ったよりサクサク進めてしまい調子が良いのかなと思う反面、ウルトラあるあるで飛ばしすぎてる可能性もあるので慎重に慎重にとは言い聞かせながら進みました。心拍も145-150メインで気持ち低いくらいで、この面からしても飛ばしすぎたとは思えません。驚いたというか気になったのは一部セクション除いて下りセクションが思ったよりスルスル進められる。

ちょっと嫌な感じがし始めたのは、天子おりて麓までのフラットセクション。天子からの下りロードも決して良い感じもしませんでしたが、長さを感じてしまいました。麓を出てから竜ヶ岳とりつきまでのフラットセクションで早くも一度ぐっとペースが落ちる感覚がありました。とはいえ、これもウルトラあるあるで竜ヶ岳登りで回復するかもしれないし、気持ち的にそこまで焦ることなくボチボチ進みます。登りはまー悪くないけど、竜ヶ岳下りも微妙、そしてそこから精進湖エイドの平地も上がる気配なし。。。

精進湖エイドを出て数分は一瞬回復した気もしましたが、さすがにあまりにペースが上がらないので、数分走って1分ウォークしてみるとかを取り入れて見たりしました。ともかく北麓公園まで進めてしまえば、あとは気合できららまでいき、気合と根性で山岳セクションを進めばゴールという感じなので、気持ちはネガティブに振れないようコントロールしながら足和田山へ。しかし、足和田山を出てからのロード7kmで完全に脚が止まり歩き主体となりました。

サポートメンバーの励ましもあり、ともかく忍野までいってみようということで、北麓公園で50分くらい休憩ののち、進んでみます。しかしもうここから動かない動かない。。。最後は時速2kmくらいか?というくらいの歩みになってしまい精根尽き果て忍野にてリタイアを決めました。

万全ではない状態とはいえ、やるべきことはやれたと信じて挑戦はできました。しかしながら、見事に返り討ちに合いました。それも気持ち良いくらいに。今できる範囲での最大限の準備と当日も限界までやったと思えているので、悔いはないですがショックもあるのも事実です。

次に向けて

まずは身体の状態を回復させたり崩れている部分をしっかり整えたいと思います。まずはしっかり全力スプリントをできるようになるところかなとか。夏に向けて400m全力一本出し切るとかできると良いと思っています、真面目に(今は全力スプリントができる状態にないので)。5,6月にかけて、秋口のレースを何か考えられれば良いですね。

トレーニングデータ振り返り

甲州アルプスオートルートチャレンジとの比較で、今回のMt.FUJIに向けたトレーニングデータをざっくりと振り返ってみたいと思います。

13週移動平均(持久系スポーツの長期的なフィットネスのトレンド把握として、主にトライアスロン系の方などが好んで使っている印象)を使って、以下の項目について比較してみました。いずれも週あたりの累積になります。

  1. 運動時間 

  2. 走行距離

    1. ラン

    2. ラン換算(Zwiftの距離は約25km/hに走行時間をかけたもの。その走行距離に1/4したものをランニングの距離としたもの。 Run + (Bike*1/4) ) 

  3. 累積標高

  4. 累積標高率(累積標高を走行距離で割ったもの)

レース直前週の比較

下記はレース直前週を終えた時点での13週平均の比較の表になります。全体として、運動時間は増やせたものの、肝心の走行距離や累積標高は不足する結果となり(本当は100-120km, 4,000-5,000mUpはしたかった)、この影響が大きくでたのかなと思います。

13週平均比較

Mt.FUJIの方が甲州アルプスを上回ったもの

【運動時間】
運動時間は、Mt.FUJIの方が上回りました。実感としても、スタミナ面には最後まで不安はなく、内蔵も元気でした。

13週平均:運動時間の比較


Mt.FUJIの方が、甲州アルプスを下回ったもの

【走行距離】
走行距離は明らかに下回りました。甲州アルプスは106kmに対して、Mt.FUJIは62km。42%ほど減少してしまっています。1-3月の故障によるクロストレーニング(Zwift)の影響がもろに出てしまっています。

13週平均:走行距離の比較

【累積標高】
累積標高も、走行距離と同様に、明らかに下回りました。甲州アルプスは3175mに対して、Mt.FUJIは1788m。こちらも約44%減少してしまっています。階段をもっと増やしたかったのですが、むしろ一番故障が悪化する可能性があり練習として後回しにせざるを得なかった影響が大きいです。

13週平均:累積標高の比較

Mt.FUJIも甲州アルプスも差があまりなかったもの

【累積標高率】と【走行距離(ラン換算)】
いずれもクロストレーニングをしつつ運動時間全体は増やせたので比例して維持できたと思います。

13週平均:累積標高率の比較
13週平均:走行距離(ラン換算)の比較

【参考】過去180日の心拍ゾーン推移

以下は心拍ゾーンの推移です。Mt.FUJI100に向けて甲州アルプス時よりはゾーン2以上の時間が増えてます。実際、天子の登りまでは心拍145前後で余裕を感じられるような状態でした。このこと自体は前向きに捉えてというか今できる範囲内で一般的なトレーニングによるフィットネスの向上ができたという意味で自信を持っていいのではと思っています。(逆に特異的なトレーニングが足りてなかったとも言えそうです)


過去180日の心拍ゾーン推移

13週移動平均による限界ライン仮説

以下は半分妄想にすぎないので、話し半分以下に聞いてもらえればと思います。

13週移動平均による限界ライン仮説というのを考えてみました。すなわち13週移動平均の運動時間、走行距離、そして累積標高が、レースにおいて潰れるもしくはパフォーマンスが下降に向かう分岐点になるのではないかと。甲州アルプスも距離は問題なかったですが、登りで4000m以降にガクッときたような気がします。今回のMt.FUJIではレポートに記載したように、天子が終わり、麓を出たあたりから早々に打ち上がった感じがあり、あまりにも早すぎる(感覚的には100km超えた北麓公園以降から動かなくなるだろうと思っていた)のですが、13週移動平均の走行距離はたかだか60kmだったので大体一致しています。

このことを考えると、ずっと楽に気持ちよく100マイルを走ろうなんておもったら、、、まぁでもそれって2014年の頃のデータを見ると、、、ありえるかも。。。

とりあえず現在の現実的な解をみつけていこうと思います。

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