“集中して”って。
『まだまだ〇〇なので、集中して作製をお願いします。』
と、会社で言われた。
20代前半の男性社員に。
俺は「わっかりやしたー」と流したが、妙に“集中して”が引っかかった。いや、年下だからとかで引っかかったのではない。
彼は上司の腰巾着だから、上司の言葉をそのまま言った可能性もあるし、“注力”というニュアンスを表現したかっただけかもしれない。
もしくは、心の中を見透かされていたのかもしれない。
当時は『お腹減ったなぁ〜』と心底思っていたので、実際には集中していなかったのだ。
なので、彼の『集中して〜』という指摘は正しい。
でも、彼が何故に『集中して〜』と発言をしたのかまでは分からなかった。
過去に、こういった経験がある。
・全く集中もせず、頑張ってもいなかったのに、『頑張ってるね〜』と言われた事。
・しっかり授業を受けたのに、理解力が足りずに問題が解けない時に『怠けていたな〜?』と言われた事。
・必死こいて沢山の業務をこなして、ヘトヘトながらも頑張って対応したのに、『ダラダラしないでよね』と客から言われた事。
どれもこれも“第三者の主観”の意見でしかないのに、何故にズケズケとモノを言えるのだろうか。
『外からは見えないから』で答えが出てしまうのだが、そこは人間なのだから妄想や想像で補完したり、状況から推理したり、本人に直接聞けばええじゃないか。
人間は高性能な頭脳とコミュニケーション能力を本来は兼ね備えている。
それを使わないなんて勿体ないじゃん。
そもそもさぁ、最近の奴らって――。
ふつふつと、愚痴の詰まった鍋が煮立ってきたところで、魔法の言葉を心の中で唱えた。
『仕方ないじゃん。人間だもの。』
職場の自販機で買ったココアが、妙に爽やかに感じた。