人が生まれ変わるほどの変身を遂げるとき①(存在承認)
ついこの間まで、”ホントウチの経営陣は何も分かってないよなぁ…”と仲間と居酒屋で愚痴大会を開いていた中間管理職が、突然リーダーシップをとって全社改革に取り組むこと…これは頻繁に起こるわけではないが、何度か目にしました。或いは、”ワタシばっかり大変な仕事押し付けられて不公平!”と自己憐憫に浸っていた若手社員が、突然率先してプロジェクトリーダーを買って出て、しかも業務量を厭わずどんどん業務を進めていく…こんな姿もコンサルタント時代はよく目にしました。
ただ、正直このような大変身は出現する組織はそれなりの頻度で出現し、現れない組織では全く現れない。そこで、出来ればそんな大変身を遂げやすい環境をいつでも作りたい!そのルールを見つけよう!と思い立ったのが今回の原稿を書くきっかけでした。
ルールその1 ”存在承認”を与えられる環境であること
この”存在承認”という言葉、元々はぼくが前職時代に企画したセミナーで、ゲスト講師をして頂いた木下晴弘さんという方の講演で知った言葉でした。簡単に解説すると、人には承認欲求というものが備わっており、存在承認、行動承認、成果承認という3段階から成り立つ。そして、困難に立ち向かい人生を豊かにできるのは自分自身の存在を承認できている人、というような主旨だったように思います。
ぼく自身が体験してきた過去の”生まれ変わり大変身劇”が発生した組織には例外なくこの”存在承認”がメンバーに与えられやすい環境があったのです。
二つほど印象に残っている事例があるのでご紹介します。
1つ目の事例 船井総研のSさんの思い出
プロフィールには書いていませんがぼくは2016年末までは船井総合研究所という会社に在籍して経営コンサルタントをしていました。そしてこの船井総研にはSさんという存在承認の神様みたいな人がいたのです。
話すと温かい気分になる…
褒めてもらうと滅茶苦茶嬉しい…
誕生日にお祝いメールを貰えるなんて…
押しつけじゃなくて、自分の個性を伸ばしてくれる方向でアドバイスを貰える…
等々Sさんと接点を持つコンサルタントたちは、長くても3ヶ月の間に、以前とは別人のような変貌を遂げることが多々あり、当時Sさんの部下だったぼくは、”徹底的に真似してみよう”と完コピを始めたのでした。そこで改めて気づいたのが、2つのルール
①”部下は仕事スキルも社会人マナーも自分より劣るのだから教えてやらねばならない”という考えが、存在承認という考え方の正反対だということ。
②話す内容が本人に厳しければ厳しいほど、話し方を穏やかにゆっくりにすることが存在承認につながる。
2つ目の事例 小澤征爾さんと星野仙一さん
今から多分10年ほど前、たまたま出張先でテレビを見ていた時にくぎ付けになった番組があった。世界的オーケストラ指揮者の小澤征爾さんと野球人星野仙一さんの対談番組。確か夜中のNHK番組だったように憶えていますが、時間を忘れるほどの衝撃だったことを憶えています。中でも今でも鮮明に憶えているのが、以下のようなやりとり(学生たちに小澤さんが音楽について教えているシーンに続いてのやりとりでした)
星野さん:いやぁ、世界のOZAWAから教わるなんて、それだけで学生さんたち嬉しいし、テンション上がりますよね!
小澤さん:ぼくが他人に何か教えるときにいつも注意していることがあるんですよ。それはぼくが100%の全力を超えて教えた時にだけ、伝わるものがある。もっといえば100%を超えた僅か10%とか20%の部分だけが伝わるんです。だからぼくが手を抜いて80%の力で教えたら、たぶんなにも伝わらないんです。
ぼくはこのやりとりを見て、まさに自分が手を抜いて当時のチームメンバーに教えているから何も伝わらないことを実感した瞬間でした。そして、今ぼくはこの全力度そのものが教わる側に存在承認を与えるのだということを強く実感しております。
少し長くなってきたので、一旦この原稿は終わってルール②は次回に譲りたいと思います。
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