好きな映画を想う。

・尺の短い映画が好き。
90分で描き切れないテーマってなんでしょう。2時間半かけてまで伝えたいメッセージとは?
ランボーの1作目(ファーストブラッド)は93分でキッチリと、社会的な重いテーマを描き切っています。すごくえらい。
インフィニティウォーやエンドゲームのような特例は認めますが(あれはテーマとかメッセージ性とかではないですし)、基本的に尺が短めで伝えたいことがハッキリしている映画の方が好きです。

・作り手の言いたいことがハッキリしている。
「自由に解釈してね!」というのも芸術・文芸の在り方として正しいとは思います。全てを説明しきらず、解釈の幅を広く与えることで面白さを発揮する作品もあるでしょう(最近だとジョーカーとか?)
でもジョーカーを観た時に、正直ちょっとピンと来なかったのも事実……いやまぁ、格差社会とか貧困層とか、色々と社会問題を扱ってくれるのは全然いいんです。むしろ好きです。ランボーとかね(ランボー大好き芸人)。
ただ最後の最後に「ぜーんぶ嘘だったかもね!」で放り出されちゃうと……うーん。
世間ではジョーカーについて、評価☆5の人と☆1の人とに大きく別れる映画だと言われてるそうです。どっかでそんなことを言っている人を見ました。
僕の評価は☆3です。3.5くらいかも。ホアキンの演技・表現はすごく良かったので。ただラストで「そこ突き放しちゃうの……?」と、ポカンとしちゃって。
"ピンと来てない"がいちばん適切な表現かと思います。
終盤でバットマンオリジンに繋げるのも強引に思いましたし。
あくまで僕の個人的な好みとして、解釈の幅が広い(自由度の高い)映画よりも、作者の「俺の答えはこれや!!!」という魂の叫びがハッキリと聴こえてくるような、わかりやすい作品の方が好きです。ランボーとかね。

・男性の弱さを描いた物語。

(少し長くなります)

無論、現状の社会的立場に関して言えば、女性よりも男性の方が強いことが多い。映画に限っても、女性が主役のものより男性が主役の映画の方が多いと思う。数えた訳じゃないけど。
近年では、そういった抑圧に立ち向かう女性の強さや、そこから解放されて自由に輝く女性の美しさを描いた作品が、少しずつではあるが増えているように思います。良いことだと思う。どんな価値観であれ、心の選択肢が増えるのは歓迎すべきことだと、僕は思います。選べる道が限られていては、人生が窮屈でしょう。
"女性の強さ"が描かれる一方で、果たして"男性の弱さ"を描く作品は増えているのか、減っているのか。
それこそ80年代のような、筋肉モリモリマッチョマン(の変態)が悪を成敗してスッキリ!みたいな作品は明らかに減っていると思いますが。
昔から作られてはいるでしょうし、最近になって急に増えた訳でもないでしょう。
クリント・イーストウッドは昔からそういう映画ばかり作っているそうです。まだ『グラン・トリノ』と『アメリカン・スナイパー』しか観ていない(2021年8月30日時点)ので、もっと観たい。
最近の作品で僕が観たのだと、『シェイプ・オブ・ウォーター』がとても良かった。最近と言っても4年前ですが。
"男性の弱さ"を描いた作品が好きなのだと、僕自身に気付かせてくれた一作。デルトロはえらい。
何故"それ"が好きなのか。それは僕自身が"あまり強くない男性"であるから、というのが理由の一つ。
ボクチン弱いのぉ〜優しくしてぇ〜と、社会に甘えたいのかも知れない。いわゆる男性性……男性であるが故に社会に提供できるような価値を、僕はあまり持っていないのだ。身長は170ないし、筋肉がないので腕力もない。学校の男子的なノリにもあまり着いて行けなかったし、女の子と話す方が気が楽だったりする。
つまりホモソーシャルと、僕に"男性"を求める社会に、生きづらさを感じていたのだ。
故に"男性の弱さ"と、そこから来る"生きづらさ"を描いた作品に、僕は強い共感を抱く。

男性が作った男性社会は、女性を搾取し苦しめるのは勿論のこと、そこで歯車として生きる男性ひとりひとりにとっても、生きづらい場所となり得る。男性は常に強者としての在り方を求められ続け、それに対抗する為、女性もまた強さを求められる。それでは解決にならない。
遍く誰もが、自分と他者の"弱さ"を認め、受け入れることで、社会はより"生きやすい"場所になるのではないか。"強さ"を求める社会より、"弱さ"を受け入れる社会の方が、僕は好きです。

長くなりましたが、まとめると『僕は"男性(強者)の弱さ"と、そこから来る社会での"生きづらさ"を描いた作品に強く共感するので、そういう映画が好きである』ということです。敗北していく"強者"たちの姿に、僕は強い憐れみを覚える。彼らは時代に負け、死んでいくしかないのか。

・画面が明るい方が好き。
単に視覚的な効果の話です。お話としては全然、陰気で陰惨で陰鬱でも一向に構わんのですが。
画面が真っ暗で何が何だかわからないと、途端に映画を観る熱意が、その闇に吸い込まれて消えてしまいます。
画面が明るいという、この一点のみで僕は『パシフィック・リム アップライジング』を評価しています。前作は面白いけどずっと暗かった。アップライジングは画面が明るくてえらい。お話の内容に関してはノーコメントで……。

・ストーリーだけが映画ではない。
もちろん、お話それ自体が面白ければ言う事無しなのですが。単にストーリーだけを楽しみたいのなら、脚本だけを読んでいればいいのです。映画は脚本だけで出来ている訳ではないのですから、例え脚本がガバガバでも、それを補って余りある圧倒的な映像技術や、俳優の演技の素晴らしさ。美術や音楽も重要です。エンドロールに流れる全てが、映画の構成要素にして感動の源流。映画とは、史上最大の複合芸術なのです。
だから僕は『ドクター・ストレンジ』とか結構すきです。正直ストーリーはいまいち何をメインテーマに置いてるのかよくわからないんですが……。中盤の四次元ニューヨークや、終盤の元祖TENETなど、これぞ映画だッ!!と言わんばかりの特撮技術に、僕は敬意を払いたいのです。ストーリーが駄目ならその映画は全部ダメ!なんてことを言う輩は、一生脚本だけ読んでてください。僕は映画を観ます。

・スローばかり多用するやつは何をやらせてもダメ。
言い過ぎました。でもほんと、最初に語ったように"尺の短い映画が好き"な僕にとっては、何を考えているんだ??と言いたくなるような由々しき事態なのです。
特に、暗い画面とスロー演出を重ねるなんて、監督は映画館のソファをベッドにするつもりなのか??
本人たちは"重厚"な演出をしている気でいるのかも知れませんが、僕にとってそれは"鈍重"な演出です。あくび製造機。誰のこととは言いません。言いませんが、『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』の4時間2分ってのはさすがに……。いや誰の映画とは言いませんがね……。

・リアルではなくリアリティ。
何もみんながみんな『ランボー最後の戦場』みたく、リアル志向の暴力描写をしろとは言いません。そんなことしたら誰も映画を観れなくなる。
僕は"リアル"ではなく"リアリティ"が必要だと言いたいのです。要は、それらしく見えればそれでいい。
例えばトイストーリーなんてのはオモチャが喋るなんてリアルではありません(僕が知らないだけで本当は喋ってるかも?)。でも、そこで描かれる彼らオモチャの感情は極めて現実的です。怒り、悲しみ、喜び……全てにリアリティがあります。故に僕らは彼らに感情移入できる。リアルでなくともリアリティがあれば良いのです。逆にどんなリアル志向の作品でも、そこにある感情が嘘丸出しだと、僕は途端に冷めてしまいます。どうせ作り物じゃん、と。


とりあえずパッと思いついたのは以上。
まとめます。

僕の好きな映画は、

・尺が短い。
・画面が明るい。
・テンポが良い。
・感情移入できる。
・作り手のメッセージがわかりやすく、誠実である。
・男性の弱さを描いている。
・例えストーリーが駄目でも、何か光る一点がある。

そんな映画です。
オススメがありましたら是非。

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